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子どもへの病状や治療の説明をめぐる家族と医療職との意見の違い
事例紹介
経緯
10歳(小学4年生)/男児/白血病と初めて診断
両親と3人家族
- 出生以後の健康状態は良かったが、継続する感冒症状を主訴に受診した。外来で採血の結果、白血病を疑われるが、両親の希望で子どもには「風邪の検査」という説明をし、骨髄検査を行い、白血病の診断が確定された。
- 病状や今後の治療方針については、外来でまず両親に説明がなされ、医師は、「どのように子どもに説明をするか考えておいてください」と言った。
- 両親は「本当のことを言って、子どもに辛い思いをさせたくないので病気や治療についての詳しい説明を子どもにする必要はない」と考え、両親から子どもへの説明がないまま、翌日より化学療法開始となった。
- 入院後、子どもは笑顔を見せず、ゲームをして過ごしていた。学校のことが気になるようで、両親に友達の様子やいつ元の生活に戻れるかなどについて質問するが、両親は「検査を頑張ったら、またすぐみんなに会えるからね」と言うだけで、治療や今後の見通しなど具体的なことは伝えていない。また、外来での骨髄検査時の辛い経験から、入院しても採血時は、「もう嫌だ」「やめて、やめて」と泣きながら訴えて強い拒否を示していた。
当事者の思い
子ども |
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---|---|
両親 |
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医師 |
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看護師 |
|
医師は、治療をすれば寛解の可能性が高い白血病の子どもに対して、子どもにも副作用について理解し、治療に協力してもらう必要があると考えている。しかし、子どもに病気や治療のことを話すとかわいそう、という両親の思いがあり、子どもに十分な説明がないまま、検査・治療が進められ、子どもは不安に感じている。
看護師は、子どもを心配する両親の気持ちを理解しながらも、子どもへの十分な説明がないまま治療が進められることが、子どもにとって良いことなのか、と悩んでいる。
解決に向けて
患者にとっての最善を考える視点
- 子どもは、自分の身体の状況についてどのように受け止めているか。
- 治療を進めていく過程で、身体的、心理的、社会的に子どもにどのような影響があるか。
- 子どもに病気や治療、副作用について、十分な説明をした場合としなかった場合、それぞれどのような影響があるか。
- 子どもの成長、子どもの病気について両親はどのように受け止めているか。
解決に向けた取り組み
子どもであっても、「1人の権利を持った主体」としてその意思を尊重され、自分自身のことについて自分なりの意思を持つ存在として扱われるよう関わる。まずは、子どもが感じている不安やストレス、今大事にしたいこと(学校や友人)など気持ちが表出できるように関わる。
また、子どもへの説明はしない、と考えている両親と医療職が話し合う時間を作り、事実を伝えないで治療を進めていくことの子どもへの影響について共有をする。疾患について子どもに伝えないことは子どもに辛い思いをさせずにすむ可能性がある一方で、化学療法による副作用の出現や骨髄抑制時の療養環境の制限等が発生する状況において、不安やストレスが増強しないか、子どもの協力なしで効果的な治療ができるかという点で、子どもにとっての最善は何か十分に話し合うことが重要である。
子どもへの説明にあたっては、どのような言葉を使って説明をするか両親と十分に話し合った上で、子どもにその治療を行ったらどのような効果があり、また、どのような副作用が出るか、治療に要する期間や学校生活への影響等とともに、子どもの不安に沿いながら説明をしていく。その際、子どもだけでなく、子どもがショックを受けていないかと心配している両親の気持ちに寄り添うことも必要である。
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