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家で死にたいという意向を持つ一人暮らしの末期がん高齢者
事例紹介
経緯
79歳/女性/末期がん(肺がん、骨転移)で在宅療養中/要介護3
夫とは死別し1人暮らし。長男は新幹線で3時間の距離に家族と暮らす
- 半年前に肺がんと診断され、骨転移が見つかる。抗がん剤治療を行うが、これ以上効果が望めないことから抗がん剤治療を中止し、3か月前から在宅で療養している。
- 最近になって骨転移による腰痛と呼吸苦が増強してきたため、疼痛コントロールと酸素療法を中心とした週3回の訪問看護を導入し、訪問診療を週1回、訪問介護を週5回利用中である。
- 呼吸状態は日増しに悪化しており、医師からは利用者と長男に対して、予後は月単位であること、いつでも急変が予想されることが説明された。
- 利用者はこのまま最期まで自宅で暮らしたいと希望した。しかし、キーパーソンである長男は、遠方のため介護には関われない状況で、入院したほうが安心だと言っている。
- 利用者のもとへは、近隣の友人や洋品店を営んでいた時の顧客が不定期に顔を出し、話し相手になったり、ちょっとした用事に対応してくれている。看護師又は介護職の訪問が1日1回はある状況だが、24時間の全てに対応していくことは難しい。
当事者の思い
利用者 |
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家族(長男) |
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医師 |
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訪問看護師 |
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人生の最終段階にある高齢一人暮らしの利用者が、在宅療養継続と自宅での最期を希望している。しかし、遠方に住む家族は、利用者の身体状況が悪化していく様子から不安になり、病院への入院を希望している。
現在の治療を継続しても回復する見込みはなく、苦痛除去を優先した必要なケアが行われる必要がある。
看護師は、在宅療養が利用者にとっての最善になるのか、利用者の意向を叶えることとそれを家族が納得するためにはどうしたらよいか悩んでいる。
解決に向けて
利用者にとっての最善を考える視点
- 利用者が希望する在宅療養の継続は、利用者にとっての最善になるのか。
- 今後、身体状況の悪化が予測される中で、在宅療養によって利用者の安全や安楽を保つことができるのか。
- 利用者が望む在宅生活を継続していくには、どのような療養環境の整備が必要か。
- 家族が利用者の意向を受け止め、納得して療養を支援するためには、利用者と家族に対してどのような支援が必要か。
解決に向けた取り組み
利用者の在宅療養という希望が真意であるのか、医学的観点やサポート体制から利用者にとっての最善と言えるのかを検討する必要がある。その上で、利用者と家族には今後予測される身体状況の変化とそれに伴う生活への影響を丁寧に説明し、在宅でも利用者の安楽、安全、安心を叶えるケアは可能であることを具体的に示す必要がある。看護師は、「最期まで在宅で過ごしたい」という利用者の意向が尊重され、家族の理解も得られるよう、情報の提供や連携体制の提案を利用者・家族に繰り返し行い、話し合う機会を持つ。ただし、今後の病状の変化や症状によっては、利用者と家族の意向は変化する可能性もあるため、病状の変化に応じて利用者・家族双方の意向を確認していくことが大切である。状況によっては入院という選択もあるため、いつでも入院できる病床を確保しておくよう在宅の主治医との連携も必要である。
また、サービス担当者会議で利用者の状況と対応について他職種と話し合い、ケア体制の調整を細やかに行っていくことも重要である。望まない治療や救急搬送が行われないように、チームでのコミュニケーションも求められる。
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