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B型肝炎の患者のドナー候補者となった妻の決断
事例紹介
経緯
45歳/男性/会社員/B型肝炎
2人兄弟の長男、母は既に他界。妻(40歳)と子ども(12歳)の3人暮らし
- 昨年末、全身倦怠感、悪心・嘔吐が出現、近医を受診しB型肝炎と診断され、治療を受けていたが、患者の病状が急激に悪化し、劇症肝炎を発症、こん睡状態で大学病院に搬送された。医師から移植の適応であり、その他の治療では回復の見込みは難しいことが家族に伝えられた。また、移植をした場合のリスクなどについても説明された。
- 医師からの説明を受けた家族の状況は以下のとおりである。
- 患者の父親は、年齢及び体力面からドナーの適応基準に満たない。
- 患者の弟は、自分の家族からの同意が得られない。
- 患者の妻はドナーになることへの希望もあったが、一方で、ドナーになることで自分に何かあったら子供はどうなるのかという不安もあった。また、妻の両親からは、自分の娘が臓器提供するのは気が進まないものの、妻が決定するのであれば反対はしないと言われている。
- 患者の妻は、「自分が夫の命を助けられるのであれば、頑張って助けたい」という気持ちと、今後の子育てを踏まえ「もし自分に何かあったら…」という強い不安が交錯し、看護師に、「自分は一体どうしたらいいのか」と相談をもちかけた。
- 看護師は、患者の妻の自由な意思決定を支援したいと思いながら、どのように対処すべきか悩んだ。
当事者の思い
患者 |
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家族 |
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医師 |
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看護師 |
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こん睡状態で意思決定が困難な夫の命を救うために、妻は自らが生体移植のドナーになったほうがよいのか、それとも、子どもの将来を考えて、自分の健康な身体を傷つけ、命を危険にさらしてまでドナーにならないほうがいよいのか、迷っている。
どちらを選択しても、望ましくない事態が生じる可能性があり、特に、妻が臓器提供をしないという選択をする場合には、夫は死亡する可能性が極めて高いため、妻にとって生命に直結する選択を迫られている。
看護師は、このような状況にある妻をどう支援すればよいかと悩んでいる。
解決に向けて
患者にとっての最善を考える視点
- 医師からの説明を親族がどのように受け止めたか。
- 患者は治療に対して何らかの意思表示をしていたか。
- 患者の妻は、十分な情報提供を受けた上で、他の誰からもプレッシャー等を受けずに納得できる選択をすることができたか。
解決に向けた取り組み
妻が決断する過程において、患者の妻が周囲の家族からのプレッシャーから解かれ、誰からも強制されずに本人が意思決定できるように支援する。その際、移植コーディネーターや医師など多職種が情報を共有し、連携することが必要である
また、妻の意思が明確になったら、どのような決定であっても妻の置かれた状況とその意思を尊重し、親族間の関係性の変化に着目しながらそれぞれの立場での思いを理解するように努める。
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