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パーキンソン病の運動障害の進行により自室に引きこもった利用者への自己決定支援
事例紹介
経緯
60歳/男性/3年前、パーキンソン病と診断された。
妻と一緒に暮らしている。息子、娘は独立して同県に在住。
- 利用者の趣味は庭木剪定で、パーキンソン病発症後も手入れを行っていた。2カ月前、誤嚥性肺炎のため呼吸状態が悪化して入院。病院では立位・歩行訓練を行って退院。
- 自宅では、家族(妻)の付き添いでトイレまで歩こうとした際に、ふらついた利用者を支えた妻が腰を痛めてしまってから、ベッドから動きたがらないことが増えた。
- 看護師は週2回、理学療法士は週2回、ヘルパーは週5日(1日2回)訪問しており、さらに訪問入浴を週1回利用している。訪問リハ時、呼吸筋訓練は行うものの、離床や立位・歩行訓練は行わないことが増えた。ヘルパーが日中トイレまで歩行を促しても、やんわり断られてしまうようになった。
当事者の思い
利用者 |
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---|---|
家族(妻) |
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医師 |
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訪問看護師 |
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理学療法士 |
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ヘルパー |
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利用者は、上・下肢の機能は維持されており、リハビリを継続すれば、トイレまで歩行可能となることが期待できる。しかし、歩行時に転倒しそうになって恐怖を感じ、また、転倒しそうになった自分を支えて腰を痛めてしまった妻に声を荒げてしまったことへの申し訳なさ、家族に迷惑や負担をかけたくないという思いから、立位・歩行訓練やトイレ歩行を拒否している。
看護師は、利用者の思いを理解しつつも、呼吸不全症状が改善され、上・下肢の機能が維持されているこの時期にリハビリを拒否し、閉じこもってしまっていることが、本当に本人にとってよい状況なのかと悩んでいる。
解決に向けて
利用者にとっての最善を考える視点
- パーキンソン病の全経過、利用者の現在の全身状態と予後等から、治療・ケアにどのような選択肢があるか。
- 利用者と家族の関係性や、服薬管理、食事支援等の介護負担等から、長期療養となる暮らしの場として自宅以外にもどのような選択肢があるか(地域の介護施設の利用等)。
- 利用者及び家族の精神的サポートのあり方について、クリニック、訪問看護ステーション、訪問リハビリ・介護事業所のスタッフ間(医師、看護職、理学療法士、ヘルパー)で共有し、統一できているか。
- 中立の立場で、利用者の思いを傾聴する機会や、利用者と妻が互いに真意を理解するための時間をつくれているか。
解決に向けた取り組み
パーキンソン病の進行度をふまえた支援のあり方について、利用者、家族、クリニック、訪問看護ステーション、訪問リハビリ・介護事業所のスタッフ間(医師、看護職、理学療法士、ヘルパー)で十分話し合い、QOL維持・向上につながる最善の方針を選択することが必要である。
利用者の気持ちに寄り添い、タイミングを見計らって利用者の思いを傾聴する機会や、利用者と妻が互いの思いを知るきっかけをつくる。
利用者の現在の全身状態と予後、今後の治療・ケア、暮らしの場について、利用者と家族が理解し、納得できるまで丁寧に説明する場を設け、利用者の意思決定を支える。そのうえで、在宅での生活を支えるクリニック、訪問看護ステーション、訪問リハビリ、介護事業所のスタッフ(医師・看護職、理学療法士、ヘルパー)の役割について、利用者、家族、スタッフ間で再確認する必要がある。
動きたがらない理由が「家族に迷惑をかけたくない」というものだったので、利用者が安心して安全に動けるよう環境整備を行うことも必要である。ベッドからトイレ等屋内の動線を確保し、ベッド周囲の物の配置を工夫したり、手すりや滑り止めマットなどを活用して転倒予防に努める。
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