看護政策
患者の身近で働いている看護職の立場から、国民の健康で安心な暮らしの実現を目指して、政策提言を行っています。
その実現に向け、関連する政府の審議会や検討会など政策決定の場に積極的に参画しています。
また、国会議員や厚生労働省などの関係省庁に対する要望も行っています。
これまでに、日本看護協会が行ってきた政策提言活動の一部をご紹介します。
「7対1入院基本料」の創設
長い間、日本の看護配置基準は諸外国に比べて低い水準にとどまっており、入院患者の高齢化・重度化や、医療技術の高度化に対応できる基準の見直しが大きな課題となっていました。
本会は、患者の安全を守るため、看護職員の配置基準を手厚くするよう要望活動を行ってきました。
また、当時の看護職員配置の表記方法は、入院患者の数に対して雇用されている看護職員の数を表したもので、交代制勤務や休日などを考慮しておらず、実際の体制とは異なっていたため、実態に合ったものに変えるよう提案しました。
2006年度の診療報酬改定では、従来より手厚い、患者7人に対して看護職員1人という「7対1」の看護配置基準が設けられ、表記についても実質配置で表すようになりました。さらに、昼間・夕方・夜間に実際に働いている看護職員の数に関する情報を、病棟で掲示することも義務付けられました。
診療報酬で看護が評価されるためには、国民が受ける医療の質を向上させ、安全で納得のいく医療サービスの提供体制に貢献していることを示す必要があります。
医療や看護現場の取組みが適切に診療報酬に反映されるよう、本会は看護職の皆様と協働しながら働きかけを進めてまいります。
看護基礎教育の充実と卒後臨床研修制度の推進
看護職の着実な養成・確保と安全な医療提供を保障するための質の向上を具体化するためには、看護基礎教育の年限延長・充実や卒後臨床研修の制度化が必要と考え、看護基礎教育改革のための活動を続けてきました。
2009年7月、衆議院本会議で改正法案が可決
また、2011年度からは看護系大学における保健師教育選択制が導入され、大学4年間で看護師教育のみを行うことが可能となり、大学院での保健師教育もスタートしました。
本会では、引き続き「看護師教育の大学化の推進」と「保健師・助産師教育の大学院化の推進」に向けて、都道府県看護協会と連携した活動に取り組んでいきます。さらに、すべての新人看護職が研修を受けられるように活動を進めていきます。
訪問看護の拡充、在宅医療の充実へ
これからの在宅療養者は、要介護状態がより重度化するとともに、急性期医療の在院日数の短縮などで医療依存度が高くなると想定されることから、看護と介護の一体的なサービスの提供が求められています。そのため、新たなサービスを盛り込んだ介護保険法などの改正法が成立し、2012年4月から施行されました。
訪問看護は、医療保険と介護保険にまたがるサービスで、仕組みが複雑です。本会は、2012年度の診療報酬・介護報酬改定に向け、利用者にとって分かりやすいものになるよう、齟齬(そご)の解消を訴え、一定の改善がなされました。
また、安定的なサービスの提供に向けて、各事業所が業務に見合う報酬を得られるよう働き掛けてきました。
今後も、新たなサービスの普及・検証や人材の確保、介護職員との役割分担などの課題について、検討を進めます。