医療提供体制の概要

    現在の医療提供体制

    医療法においては、医業を行うための場所として、病院は20床以上の病床を有するもの、診療所は病床を有さないものまたは19床以下の病床を有するものと区分しています。日本の医療提供体制の特徴の1つとして、病院と診療所ともに開設者の7割以上が個人または医療法人であり、民間中心であることがあげられます(下図)。

    厚生労働省ホームページ「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」より引用(一部改変)の表
    厚生労働省ホームページ「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」より引用(一部改変)

    医療計画について

    医療計画とは、医療法(第30条)に基づき、都道府県が、厚生労働大臣の定める基本方針(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図るための基本的な方針)に即して、地域の実情に応じた医療提供体制を確保するために策定する計画です。

    医療計画は、昭和60年の医療法改正により導入され、医療資源の地域的偏在の是正と医療施設の連携推進を目的に、二次医療圏(一般の入院に係る医療を提供することが相当である単位)ごとの基準病床数を記載事項とすることとされました。医療計画は5年ごと(現在は6年ごと)に再検討することとされ、平成20年の第5次医療計画では疾病構造の変化に対応した医療体制を確保するため、4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)・5事業に関する具体的な医療連携体制の構築に関する記載が追加されました。平成25年の第6次医療計画からは精神疾患および在宅医療が追加され、現在は5疾病5事業および在宅医療に関する記載が必須となっています。また、令和3年の医療法改正により、第8次医療計画からは「新興感染症等の感染拡大時における医療」が追加され、5疾病6事業および在宅医療に関する記載が必須となりました。

    5疾病・6事業および在宅医療に関する事項については、国が現状把握のための指標や数値目標を例示し、都道府県はそれらを参考にして医療計画に記載しています。例えば、がんの医療提供体制構築に係る現状把握のための看護に関する指標として、「認定看護師が配置されている拠点病院の割合」「がん患者指導の実施件数」等が例示されています。さらに平成26年の医療介護総合確保推進法の制定により、医療法において地域医療構想の策定が定められました。

    また、上記以外にも医師の確保に関する事項や看護職員等の医療従事者の確保に関する事項についても定めることとされています。各都道府県における看護職員の需給見通しおよび確保策等については、国の検討会で推計された看護職員需給見通し等を参考に、都道府県が個別の対策を記載しています。

    現在は第7次医療計画(平成30年度〜令和5年度)に沿って、地域の実情に応じた医療提供体制の確保が進められています。第7次医療計画において記載されている主な事項は下図の通りです。


    第1回 第8次医療計画等に関する検討会 資料2より引用


    • 第7次医療計画からは、都道府県介護保険事業支援計画および市町村介護保険事業計画との整合性を確保するために、6年ごと(在宅医療その他必要な事項については3年ごと)に見直しを行うこととされました。

    参考

    看護職員需給見通しについて

    急速な高齢化の進展および保健医療を取り巻く環境の変化等に伴い、看護職員の確保の重要性が著しく増大しており、必要となる看護職員を確保することを目的に、「看護師等の人材確保の促進に関する法律(人確法)」が平成4年に制定されました。人確法に基づく「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」では、看護職員の養成について、需給見通しに沿った就業者数の確保に努めるべきと記載されています。看護職員の需給見通しは、昭和49年の第1次看護師需給計画から平成22年の第7次看護職員需給見通しまでおおむね5年ごとに策定されています。

    令和元年11月に「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ」が公表されました。「中間とりまとめ」では、2025年の全国における看護職員供給数の約175〜182万人に対して、需要数は約188〜202万人という推計結果が示されました。(下図)。

    医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(概要版)より引用の図表
    医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(概要版)より引用

    従来の看護職員確保対策では看護職員の総数不足への対応策が議論されてきましたが、「中間とりまとめ」では、都道府県や二次医療圏単位での看護職員の地域別偏在や、療養の場の多様化と地域包括ケアの推進に伴う在宅医療等のさまざまな場面での看護ニーズ拡大による看護職員の領域別(就業場所別)偏在が課題とされ、これまでの「新規養成」「復職支援」「定着促進」の3本柱に「領域・地域別偏在の調整」を追加した取り組みが記載されています。

    「新規養成」では、インターンシップ等の支援や、多様なキャリアパスについての理解促進。「復職支援」では、ナースセンターの相談員や職員が相談対応等について必要なアドバイスを受けられる体制づくりの検討、看護師等免許保持者の届出制度の普及啓発の強化等。「定着促進」では、交代制勤務の看護職員に適した勤務間インターバル制度など労働時間・勤務環境改善に関する研究、看護補助者との協働のあり方、活用、夜勤への対応などに関する看護管理者、看護職員への研修の推進等が記載されました。

    「領域・地域別偏在の調整」では、在宅領域における看護職員の確保として、新卒看護師対象の訪問看護人材養成の教育実施状況の把握、訪問看護事業所と地域の病院等と連携した教育研修体制構築のための支援の検討等が記載されました。

    「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ」(厚生労働省ホームページ内)

    参考:看護職員確保対策に関する本会の取り組み

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