周産期医療の現状と課題

    周産期を取り巻く環境は、産科医不足による産科閉鎖や混合病棟化、ハイリスク妊産婦やハイリスク新生児の対応など、多くの課題が山積しています。
    日本看護協会は、全ての妊産褥婦と新生児に助産師のケアを提供することを目指し、さまざまな取り組みを行っています。

    課題

    • 周産期医療体制の整備では、ハイリスク妊産婦に重きが置かれ、正常分娩に関する整備状況には課題がある。
    • ハイリスク妊産婦が増えており、助産師の実践能力強化が求められる。

    対策

    • 周産期医療体制としての、助産師の配置数について明確にする。
    • 周産期医療体制として、ハイリスク妊産婦を取り扱う施設について、リスクに応じた体制整備を求める。
    • 周産期医療計画での対応を求める。
    • ハイリスク妊産婦への対応ができるように、助産師の実践能力強化を図る。

    周産期医療の体制(国の動き)

    厚生労働省では2015年8月〜2016年11月に、「周産期医療体制のあり方に関する検討会」を開催しました。日本看護協会からも、役員が構成員として参加し、助産師の活用などについて提言しました。
    また、平成30年(2018年)には第7次医療計画が策定される見通しで、現在、厚生労働省では「医療計画の見直し等に関する検討会」で議論が進められています。

    助産師の就業状況

    量をめぐる問題

    助産師の就業先の偏在

    助産師の就業者数(2015年※)は、3万8,486人。就業場所でみると、病院が全体の61.3%を占め、診療所は26.5%、助産所は4.7%です。これに対し、出生数は2015年に約100万5,677件で、出生場所を見ると病院が53.7%、診療所が45.5%、助産所が0.7%となっています。つまり、出生場所は病院と診療所で約半数であるのにもかかわらず、助産師の数は病院が圧倒的に多く、診療所には助産師が少ないことになります。
    都道府県別の就業助産師数を見ると、東京・大阪・神奈川などの大都市に多く、高知・鳥取・佐賀などが200人未満と少なくなっています。人口10万対比では、新潟・宮城・富山など助産師比率が高く、三重・埼玉・茨城などの比率が低い状況です。
    このように、助産師は就業場所や地域による偏在があり、分娩取り扱い施設であっても、助産師がいないケースが発生しています。また、近年では、産科病棟の休止・閉鎖などにより「助産業務」に携わらずに「看護師」として勤務している「院内潜在助産師」の存在も課題となっています。

    質をめぐる問題

    助産師の役割

    助産師は、「保健師助産師看護師法」で、「助産師の行う業務の範囲について、助産という正常な妊産婦への業務であること」(第37条)、「助産師が異常を発見した時には、医師の診療を受けること」(第38条)と規定されています。つまり、助産師は、正常な妊産婦への業務が法的に認められています。
    この助産師の専門性を発揮する場として、近年では病院の中で行われる「院内助産・助産外来」があります。この取り組みが始まった背景には、産科医の減少に伴い、お産ができる施設数が減少したことも影響しています。
    2008年に厚生労働省が公表した「安心と希望の医療確保ビジョン」では、「助産師については、医師との連携の下で正常産を自ら扱うよう、院内助産所・助産師外来の普及等を図るとともに、専門性の発揮と効率的な医療の提供の観点から、チーム医療による協働を進める。またその際、助産師業務に従事する助産師の数を増やすとともに、資質向上策の充実も図る」と記述されました。

    日本看護協会では、助産師の質、つまり「助産実践能力」を、計画的・意図的に積み重ねられるように、評価ツールとしてCLoCMiP:助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)を開発。その後2015年からは、「CLoCMiPレベル?認証制度」が始まりました。これは、助産実践能力が一定水準に達していることを客観的に評価する仕組みで、CLoCMiPのレベル?に至っていることを審査し認証する制度です。日本の助産関連5団体(日本看護協会、日本助産師会、日本助産学会、全国助産師教育協議会、日本助産評価機構)によって創設されました。

    課題解決に向けた本会の取り組み

    助産師を取り巻く課題と日本看護協会の取り組み

    日本看護協会では、上記のような、量と質の課題を解決するために、さまざまな取り組みや提言を行っています。各ページで詳細をご覧いただけます。