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第12回
2020/10/12

看護職がテレワーク!?~緊張からの解放~

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、社会全体で大きな混乱と不安が広がりました。未知のウイルスと最前線で闘う医療現場等で働く看護職にとっては、心身ともに大きなストレスを抱えることとなりました。そうした中で、組織はどのように対応していけばよいのか。今回のコラムでは、コロナ禍における看護職のメンタルヘルス問題にいち早く対応した東京都日野市立病院の取り組みを紹介します。
同院は、急性期医療を担う地域の中核病院。新型コロナウイルス感染症の流行に対し、3月上旬、発熱外来の立ち上げと新型コロナウイルス感染症に対応するため1病棟確保することになりました。
看護部では、この有事に対応するには、感染症への体制構築と合わせ、看護職のメンタルヘルスケアへの長期的な労務環境づくりが重要だと考えました。そこで、病院管理者会議でEAP(Employee Assistance Program:病院職員支援プログラム)対応強化を提言。働き方改革担当者を中心に、感染症病棟の看護職が新型コロナウイルス感染症患者に長期間継続し対応することによるストレスの対処と、看護部全体が一丸となって取り組み、連帯感を高めることでストレス回避を図るための対策について検討しました。その結果、新型コロナウイルス感染症病棟(以下、感染症病棟)で勤務する看護職を、一定期間(月単位)で他病棟看護師とローテーションする体制を構築したのです。
まずは、感染症病棟での勤務への不安を丁寧に解決し、配属される職員の気持ちを確認しながらローテーションの時期を決めました。また、先行してローテーションで勤務した職員の成果や達成感をその他のメンバーと共有したことで、後に続く職員も安心して勤務できたのです。
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1カ月の感染症病棟でのローテーション勤務後は、在宅型テレワーク5日間と公休2日間というスケジュール(もしくはシフト)です。在宅型テレワークとは、市の特別措置法に基づき制定されたもので、対象は「市職員」で、「勤務時間中は業務及び業務に関連する学習等に専念する」とされています。そこで、同院でも在宅勤務時間を勤務時間中と定義し、e-ラーニングの視聴や病院・看護部委員会活動における資料の作成などを行いました。
看護部として導入したねらいを堀江看護部長は「一定期間勤務後に在宅型テレワーク勤務を活用することで身体的・精神的休息を取りメンタルヘルスケアにつなげること」と話します。具体的な運用では、「①各病棟の管理者が勤務計画作成時に在宅型テレワークを勤務計画し、在宅型テレワークであることを明確化しておく②在宅型テレワーク勤務日には、病棟管理者に始業と終業の連絡を入れる③在宅型テレワーク終了後の出勤時に報告書を病棟管理者に提出する」としました。
職員からは「自分の身体面・精神面を緊張から解放する時間があり、気持ちの整理ができた」との声があり、管理者からは「テレワークの仕組みが、組織に守られている安心感に繋がった。ローテーション期間中の役割や目標設定が明確だったので終了後の看護師の達成感が高まった」などの意見も聞かれたそうです。
この事例から、高ストレス下に置かれている看護職員にとって、感染症病棟で勤務する期間を限定するとともに、緊張から解放する時間の確保、「組織は自分たちを守ってくれるという安心感」が何より重要であることを示しています。さらに円滑な感染症患者の受け入れが組織貢献に繋がることを組織全体で共有するなど、組織の方針と役割を明確にすることで、組織全体の一体感を高め、ハラスメント防止にもつながるといえそうです。
次回のコラムでは、健康な職場づくりに向け看護職一人ひとりが取り組んでいけることについてご紹介します。