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第7回
2019/09/09

「パワハラ」防止対策について

2019年5月29日に「労働施策総合推進法」が改正され、2020年4月からパワーハラスメント防止対策が企業に義務付けられたことはご存知でしょうか。職場でのハラスメントに対する取り組みは世界的な潮流であり、今年の6月に開催された第108回ILO(国際労働機関)年次総会では、仕事の世界における暴力とハラスメントを禁じる初めての条約が採択されました。また、職場でのハラスメントが過労死の一因となっているとの指摘(平成30年版過労死等対策白書)もあります。そこで今回は、パワーハラスメント(「パワハラ」)について考えていきたいと思います。
都道府県労働局等に設置された総合労働相談コーナーに寄せられる、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加しており、平成24年度以降相談内容のトップとなっています。(図)

【図】都道府県労働局等への相談件数

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厚生労働省:明るい職場応援団
http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/files/uploads/img_state01_h27.jpg(2019/06/13閲覧)


また看護職の90%近くが業務に関連したストレスや悩みを抱えており、そのうち41.8%はその理由を「職場の人間関係」としています(平成30年版過労死等防止対策白書)。
「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」(厚生労働省 平成24年3月)ではパワーハラスメントを、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しています。ここでポイントになるのが、「パワハラ」は上司から部下に対するものだけでなく、同僚間や部下から上司なども当てはまることです。また、部下が上司の指導を不満に感じる場合であっても、それが「業務の適正な範囲」で行われている場合にはハラスメントには該当しないとされます。しかし、この「業務の適正な範囲」の判断が難しい点でもあります。
「パワハラ」が起こる要因は、企業間競争の激化による従業員への圧力の高まり、職場内のコミュニケーションの希薄化や問題解決機能の低下、上司のマネジメントスキルの低下、上司の価値観と部下の価値観の相違の拡大など、様々あるとされています。厚生労働省の「平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査」においては、パワーハラスメントに関する相談があった職場の半数近く(45.8%)が「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」を特徴として挙げており、コミュニケーションの希薄化が「パワハラ」の一因になることが伺えます。また、パワーハラスメントの定義で「業務上必要な注意・指導が行われている場合には該当せず」とありましたが、加害者は自身の言動を注意・指導の範囲と考えており、「パワハラ」をしているという自覚がない場合があるといわれています。その理由として、加害者の伝え方(コミュニケーション方法)に問題はあるが、注意・指導として伝えている内容には問題がないため、「自分は正しい」と考えてしまうことがあるそうです。
「パワハラ」は被害者の心身への影響はもちろん、職場の雰囲気が悪くなるなど周囲の人へも影響を与えます。そして企業にとっては、業績悪化や貴重な人材の損失、イメージダウンにつながります。「パワハラ」対策はトップが方針を示し、組織で取り組んでいくことが重要です。「パワハラ」の予防・解決の取り組みを進めた結果、「管理職の意識の変化によって職場環境が変わる」、「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」といった効果が得られたという報告もあります(厚生労働省 平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査:図)。組織でパワハラを許さない、「ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)」の実現に取り組んでいきましょう。

【図】パワーハラスメントの予防・解決以外に得られた結果(対象:取組を実施している企業 n=2394)

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厚生労働省:明るい職場応援団
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■参考資料:
  1. 厚生労働省:パワーハラスメント対策導入マニュアル(第3版),2018.