コラム コラム
Column

キャンペーンコラム

第9回
2019/09/24

「医療メディエーション」を知っていますか?

皆さん、「医療メディエーション」を知っていますか。「医療メディエーション」とは、患者と医療者、異なる職種間、同一職種間などで発生する様々なコンフリクトを、当事者間で協働的に対応していくためのモデルで、紛争調停のみならず対人関係や医療の安全・質の改善にも応用できるモデルとされています。そして、「医療メディエーション」のモデルを活用し、コンフリクトの両当事者が向き合える場を設け対話を促進し、関係性を築けるよう支援していく人のことを、「医療メディエーター」と呼んでいます。患者サポート充実体制が求められる中、最近では「医療メディエーター」を組織に配置し、患者とのトラブル防止や対応をしている病院も増えてきているようです。
このような「医療メディエーション」のモデルを活用した、患者と医療者間における対話の促進は、患者の思いに寄り添うことでより良い関係形成につながります。患者・医療者間、職員間のトラブルに対する早期介入が可能となると同時に、ハラスメントがおきにくい職場風土づくりの一助ともなります。そのため、カスタマーハラスメント防止対策の一環として、職員に対し「医療メディエーション」モデルの研修を行っている例もあります。
カスタマーハラスメントとは、顧客から受けるハラスメントを意味します。現在医療の現場において、患者や利用者、その家族から看護職が受けるカスタマーハラスメントは、大きな問題となっています。平成30年版過労死等対策白書(厚生労働省)によると、看護職が労災認定を受けた事案のうち、「精神障害」の割合が多くなっています。労災認定の要因は「事故や災害の体験・目撃をした」(76.9%)が特に多く、うち「暴言・暴力の体験」が44.2%となっており、多くの看護職が被害を受けていることがうかがえます。第7回コラムで紹介したとおり、職場内(職員間)のハラスメント対策が事業主に義務付けられることになりましたが、カスタマーハラスメントから職員を守る対策の義務付けは見送られました。しかし、様々な業種でカスタマーハラスメントが問題となっており、今後厚生労働省が対策を指針で示すことになっています。
患者の人権を守ると同時に医療者の人権も守られることは、よりよい医療・看護を提供していく上で非常に大切なことです。「暴力・ハラスメント」に対しては、看護職が「しかたがない」と我慢する事ではない、という意識を持つことも必要です。また、患者・利用者や家族と医療者の対話を促進し、相互理解を深めていくことも重要です。対話を通して、ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)の実現につなげていきましょう。
■参考資料:
  1. 渡邊輝子:ハラスメントが起こりにくい組織風土,看護,71(2),39-41,2019.
  2. 栗原慎太郎:ペイハラ納得対応 ペイシェントハラスメントと医療メディエーション,糖尿病ケア, 15(8), 749, 2018.