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第10回
2019/09/30

夜勤のための上手な睡眠のとり方

2019年度最後のコラムは、「上手な睡眠のとり方」についてです。患者さんに24時間継続した医療・看護を提供するために、夜勤は無くてはならないものです。しかしながら、「夜勤はつらい」と感じている方も多いかと思います。夜勤の身体的負担を軽減するためには、1回の夜勤時間が長すぎないこと、適切な勤務間インターバル(休息)の確保などの「働き方」のポイントがありますが、あわせて「休み方」にもポイントがあります。そこで今回は「休み方」の中でも、「上手な睡眠のとり方」についてご紹介します。

【図】サーカディアンリズム

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そもそも、なぜ夜勤は「つらい」のでしょうか。それには、サーカディアンリズムが大きく影響しています。通常、ヒトの体は夜間になると深部体温が低下し睡眠欲求が高まるなど、疲労回復に適した体内環境になります。一方昼間は体温等が上昇し、活動に適した状態となります。また、睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があり、夜間の睡眠ではこれらが交互に出現し疲労回復に寄与しますが、昼間の睡眠では情動ストレスを解消するレム睡眠が上手にとれないことがわかっています。夜勤をすれば昼間に睡眠をとらざるを得ませんが、昼間の睡眠は疲労回復効果が低いため、疲労感や眠気を感じた状態で勤務をすることになり「つらい」と感じるのです。しかし夜勤・交代制勤務でも、サーカディアンリズムになるべく沿うような睡眠を心がけることで、疲労を軽減させることができるといわれています。そのためには、いかに夜間に睡眠を確保するかがポイントであり、それには正循環の勤務編成がよいとされています(下図参照)。正循環の勤務編成では夜間に睡眠を確保することができるため、それ以外の勤務編成に比べ疲労が軽減されるといわれています。例えば、図の下段の「夜勤睡眠を意識しないシフト」では、3交代制勤務の深夜勤務後と準夜勤務入り前の睡眠が昼間になってしまい、疲労回復しにくい状態になります。一方、図の上段の「夜間睡眠を意識したシフト(正循環)」では、同じ3交代制勤務でも何とか夜間に睡眠がとれます。このように、なるべく夜間に睡眠がとれるようなシフト編成を職場のルールとすると同時に、上手な睡眠のタイミングについても、皆さんに理解しやすいようにお伝えする工夫が望まれます。

【図】夜勤・交代制勤務と睡眠のタイミング

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もう一つのポイントが、勤務中の仮眠です。ヒトの体は22時から6時の間に体温が下がり、特に深夜の3〜6時に最も低い状態となります。この時間に仮眠をとると、サーカディアンリズムを保つことができ、良質な睡眠が取れるといわれています。実際に夜勤中1時間の仮眠は、夜勤前の仮眠3時間とほぼ同じ効果があるという研究結果が出ています。また複数の研究で、仮眠を取ることで明け方の集中力が高まることや、夜勤中だけでなく夜勤後の疲労感も軽減することがわかっており、疲労回復のための睡眠時間を短縮することができるとされています。理想的な仮眠時間は2時間とされており、特に12時間を超える夜勤では交代で仮眠をとれる体制の確保を急ぎましょう。また、3交代制勤務で長い仮眠の設定が困難であっても、例えば10分程度の短い睡眠時間でも眠気を覚ます効果があることがわかっており、導入を検討しましょう。忙しい時こそ、仮眠を取るようにできるといいですね。
また、夜勤明けの睡眠のとり方も重要です。深夜明けの睡眠は2時間程度とし、あまり長く寝すぎるのは避けましょう。そして明るいうちに起きて活動し、夜は早めに就寝し足りない睡眠を補うことで、サーカディアンリズムに沿った睡眠をとることができます。しかしながら忙しい夜勤では疲労感も強く、そのまま夜まで寝てしまうということがよくあると思います。その点でも、夜勤中に仮眠がとれると明け方の疲労軽減に効果があり、夜まで寝てしまうことを避けられます。
夜勤は心身への影響が少なからずあるため、ぜひ今回のコラムを参考に上手な睡眠のとり方についても考えてみてください。