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キャンペーンコラム

第6回
2019/09/02

医療現場におけるさまざまなハラスメント

まだまだ残暑が厳しい季節ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。本会では昨年度に引き続き、今年度も9月2日〜10月7日まで、「ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)」キャンペーンを行います。キャンペーンを通して、「ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)」実現のための取り組みにつなげていきたいと考えています。そしてコラムでは、「ハラスメント」を中心とした看護職の労働安全衛生に関する情報を週1回お届けします。どうぞよろしくお願いします。
さて今年度最初のコラムは、医療現場におけるハラスメントについてです。「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2019」(日本労働組合総連合会)によると、職場でハラスメントをうけたことがある人の割合は全体の37.5%であり、職場のハラスメントが少なくないことがわかります。また昨年度の第2回コラムで紹介したとおり、日本看護協会の「2017年看護職員実態調査」によれば、看護職は2人に1人(52.8%)が過去1年間に何らかの暴力・ハラスメントを受けた経験があると回答しており、看護職のハラスメント経験率がむしろ高くなっています。なぜ、医療現場ではハラスメントが多いのでしょうか。
それには、医療現場の特性が影響していると考えられます(表)。その一つが、職種間のヒエラルキー構造です。例えば、医療現場には医師の指示を受けて看護職やほかの医療専門職が業務を行うといった、法的に位置づけられた業務上の指示関係があります。その関係が職場内の立場の上下や優位性に置き換えられてしまい、対等なコミュニケーションが妨げられることがハラスメントの土壌となります。また、緊急性・切迫性の高さも影響しています。医療現場では一つ一つの判断や業務が患者の生命に関わることから、緊急性や切迫性が高く失敗に対する許容度も低くなるため、社会的に不適切な態度や発言も問題視されにくい風潮があるといえます。パワーハラスメントに関する相談があった職場に当てはまる特徴として、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い(22.0%)」(「平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査」厚生労働省)があるとされ、医療現場もこれに該当するのです。
その他に、サービスの受け手である患者やその家族の期待、要求水準の高さがあります。医療サービスは人の生命や健康、生活の維持・向上に関わるため、他のサービスに比べ、より厳しい見方をされる傾向があり、これが患者・家族から医療者への過大な要求やクレームにつながるとされます。そして、看護提供は身体的な接触が伴い、またそれが反復される関係であることから、患者側にこれを性的な言動が許容される場・関係であると都合よく解釈されてしまうことも考えられます。また私たち看護職も専門職としての自負から、患者の言動に受容的な態度で接することが多く、その中でハラスメントを許容してきたことも関係しているのではないでしょうか。
「医療現場」でのハラスメントの背景にあるもの
■職種間のヒエラルキー構造
■緊急性・切迫性の高い場面
■期待や要求水準が高く、厳しい見方をされがち
■性的な言動が許容される場・関係であると都合よく解釈される
■患者の言動に受容的な態度で接する
このような医療現場におけるハラスメントは日本に限った問題ではなく、国外でも問題視され様々な取り組みが行われています。看護職自身も心身ともに健康でなければ、質の高い看護を将来にわたって持続的に提供することはできません。患者(利用者)やその家族にもその事を理解してもらい、「組織・施設」「看護管理者」「看護師一人ひとり」「地域・社会・患者(利用者)」で協働し、ハラスメント対策を含め「ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)」の実現に取り組むことが必要です。