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第17回
2021/10/15

組織で取り組むハラスメント対策

■最近のハラスメントの動向

2019年「女性の職業生活における活躍の推進に関する一部を改正する法律」が成立し、これにより「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主に義務付けられました。併せて、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法においても、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに係る規定が一部改正され、防止対策の強化が図られました1.
職場における暴力・ハラスメント等を理由とした精神障害等の労災保険の支給は、近年、増加しており、社会的な問題となっています。令和2年度「過労死等の労災補償状況2.」によると、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害に関する事案について、支給決定件数の出来事として「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」の順に多く、暴力・ハラスメントが上位を占めていることが分かりました。

■看護の現場で起きている暴力・ハラスメント

看護の現場においても、さまざまな暴力やハラスメントが起きており、労災の請求件数、支給決定件数ともに最も多くなっています。看護の現場における暴力・ハラスメントの相手は同じ勤務先の職員間だけではありません。患者(利用者)やその家族からも多発するなど、看護職員に対するハラスメントは深刻化しており、看護職員一人一人が安心して働く上での基盤が危うくなってきています。
本会が実施した「2019年 病院および有床診療所における看護実態調査(以下、2019年調査という)」3.によると、患者・患者の家族等や、同じ勤務先の職員から受けた暴力・ハラスメントの内容は、「精神的な攻撃」24.9%が最も多く、次いで「身体的な攻撃」17.9%、「人間関係からの切り離し」14.0%、「意に反する性的な言動」11.5%という結果でした(図1)。そのうち、「身体的な攻撃」92.1%、「意に反する性的な言動」71.0%については、患者から受けたことが多く、「人間関係からの切り離し」85.4%、「精神的な攻撃」53.7%については、同じ勤務先の職員から受けたことが多かったことが分かりました(図2)。

■組織で取り組む暴力・ハラスメント対策の重要性

暴力・ハラスメントは受けた側、そして、それを目撃した側もストレスを感じ、暴力・ハラスメントがない職場よりも離職意向が高まる傾向があります。しかし、2019年調査によると、暴力・ハラスメントを受けた場合、上司や同僚と気軽に話しができる、個人的な相談ができるなど、日ごろから上司や同僚からサポートが得られる状態にある看護職員は、サポートが得られない看護職員と比べて離職意向が低下する傾向が見られました(図3)。そのため、看護職員が、安心して安全に働けるよう勤務環境を整えていくことは、看護職員の離職防止の上でも大変重要であることが分かります。
組織の対策として、平常時から暴力・ハラスメントに対する方針を明確化し、職員、患者(利用者)、家族へ啓発・周知するとともに、暴力・ハラスメントの防止対策や発生時の対応に関するマニュアルの作成と職員全員への教育、相談窓口の設置、上司・同僚から日頃のサポートを受けられるよう体制の整備や職員への教育等を行い、看護職員が健康に安全に働ける職場環境を整えていきましょう。
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図1 受けたことがある暴力・ハラスメントの内容(複数回答)

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図2 ハラスメントを受けた相手(複数回答)

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図3 職場の支援(サポート)と就業継続意向