看護職の働き方改革の推進

化学的・物理的な有害要因への対応

放射線診療(業務)従事者の指定に関するガイドライン—看護職者—

2020年3月、日本放射線看護学会から「放射線診療(業務)従事者の指定に関するガイドライン—看護職者—」が示されました。

放射線管理区域で放射線診療業務に従事する医療従事者については事業主は法定の健康障害防止措置を講じなくてはなりません。当該の部署(一般撮影室、CT、IVR、放射線治療など)に所属する看護職員だけでなく、患者の検査・治療の介助等のために放射線管理区域に一時的に立ち入る看護職員についても、その頻度によっては放射線診療業務従事者として扱う必要があります。
「ガイドライン」では、一時立ち入りを行う看護職員を放射線診療業務従事者として指定するか否かの判断基準が示されています。

放射線業務に従事する看護職員の被ばく管理状況を点検してください

厚生労働省労働基準局は2019年11月1日付で本会を含む医療関係団体に「放射線業務従事者等に対する線量測定等の徹底及び眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策の再周知について(基安発1101第1号、同第2号)」を通知しました。

今後眼の水晶体の被ばく限度の大幅な引下げが予定されており、これに先立ち労働安全衛生法電離放射線管理規則に定められた従事者の被ばく量測定等を法令に沿って正しく行うよう求めるものです。医療施設の一部で放射線業務に従事する医師等の被ばく線量測定が正しく行われていない例があることが把握されています。
この機会に、各施設での被ばく管理状況を点検し、正しく行われていることを確認してください。

1. 厚生労働省労働基準局通知

2. 参考資料(厚生労働省パンフレット、関係通知)

保健医療施設での有害要因

看護職が取り扱う機器や薬品、衛生材料は多岐にわたっています。それらは有用である一方、一部は職員の健康に影響を及ぼす有害物質でもあるということはご存知でしょうか。医療施設で使用される有害物質の中でよく知られているものには、ホルムアルデヒド(病理検査室で使用)やエチレンオキシドガス(衛生器具の滅菌消毒に使用)、グルタルアルデヒド(衛生器具の殺菌消毒に使用)などがあります。また、医療機器に関するものには電離放射線や滅菌用紫外線被ばくによる影響、医療材料に関するものには手袋やカテーテルなどに使用されているラテックス製品へのアレルギーなどが含まれます。患者さんに使用する一部の抗がん剤も、労働者の健康に影響するため取り扱いには注意が必要です。

有害要因の管理

職員の健康への影響を最小限に抑えるためには、有害要因を適切に管理することが重要です。ホルムアルデヒドやエチレンオキシドは特定化学物質として指定されているため、労働安全衛生法、特定化学物質障害予防規則等に準拠した作業環境管理対策が必要です※1。そのほかの有害要因も次のような手順を例として、作業管理を行うことができるでしょう。

  • 関係する現場での作業環境や取り扱う物質の危険性や有害性などについて、最新の情報を把握する。
  • 有害物質へのばく露を予防するために作業の手順や方法を定める。有害物質によっては作業環境測定を必要とし、その結果の評価に基づいた措置を講じなければならない。
  • ばく露を最小限にするために、取り扱う物質に応じて安全キャビネットや保護具を適正に使用する。
【引用文献】

1. 愛知県臨床検査標準化協議会:医療従事者の健康管理と環境管理、2013

職員への教育と健康管理

全ての労働安全衛生管理に共通することですが、有害要因への対応として作業管理に加え、職員の健康管理と安全衛生教育が重要になります。

<健康管理>

雇い入れ時の健康診断においては、職員の就業場所での業務に応じて、アレルギー症状、呼吸器疾患、皮膚疾患などの把握が必要です。職員に既往歴がある場合は作業方法などに十分配慮し、異常が見られた場合には、産業医などの意見に基づき就業場所を変更するなどの対応を行わなければなりません。また、事業者は、職員に対して1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を行うことが義務付けられています。放射線業務や特定化学物質を取り扱う業務など、労働安全衛生法施行令第22条で定められている有害な業務に就いている職員に対しては、定められた項目について6カ月以内ごとに1回、健康診断を行う必要があります。

<安全衛生教育>

事業者は職員に対して、職員が関係する作業環境や取り扱い物質の危険性や有害性、取り扱い方法、作業手順、点検方法などについての教育を行うことは労働安全衛生法で義務付けられています。また、有害物質にばく露したことによって生じる症状や傷害と応急処置についても、知らせておかなければなりません。このような安全衛生教育は雇い入れ時や作業内容変更時、有害な業務に就かせる際などに行う必要があります。

核医学検査(アイソトープ・RI)の影響

核医学検査では、放射性医薬品を使用しますが、看護スタッフは検査を受けた患者さんのケアで放射線を受けるのでしょうか。答えはイエスです。といっても、ごく微量のため、たとえ妊娠していたとしても心配はありません。患者さんがトイレで排泄する際の下水など環境への汚染は全く問題なく、看護スタッフが最も患者さんと接するオムツ交換でも被ばく線量はごくわずかです。放射性医薬品で汚染された廃棄物は放射性廃棄物として、医療廃棄物とは別に取り扱う必要があります。検査を受けた患者さんのオムツなどの廃棄物でも放射線が検出されることがありますので、取り扱いについては施設ごとに放射線管理責任者の指示に従ってください。

【参考】

  • 日本核医学会・日本核医学技術学会:看護スタッフのための核医学Q&A
  • 日本核医学会・日本核医学技術会・日本診療放射線技師会・日本病院薬剤師会:放射性医薬品取り扱いガイドライン 第2版、2012年

医療現場でのタルク吸入で労災認定

アスベスト(石綿)による健康被害は、多くの労働者や市民の間でも知られていますが、医療現場でも2006年に使用が禁止されるまでは、手術室などで滅菌したゴム手袋等の再利用のために、石綿が含まれる粉(タルク)を利用することが一般的に行われていました。2012年7月24日、山口県の准看護師が中皮腫を発症したのは、1981〜86年に医療用ゴム手袋を再利用するため、石綿を含むタルクを使った作業をしたのが原因として、山口労働基準監督署が労災認定しました。

石綿を吸ってから中皮腫を発症するまでの期間はとても長く、平均して40年ほど経ってから発症するとされています。仕事を通して石綿を扱っていた人全てが中皮腫を発症するわけではなく、また扱っていた期間や量などが発生にどのように関係しているかも分かっていません。しかし、石綿の吸入は肺線維症(じん肺)や肺がんの発生にも影響しているともいわれていますので、石綿を扱う作業に従事していた人または扱っていた可能性のある人は、定期的に健康診断を受けることをお勧めします。また、皆さまの職場でも、タルクが原因となった中皮腫の発症とその労災認定について情報共有を行ってください。