組織での取り組み

    メンタルヘルスケアに関する国内の動き

    労働者の受けるストレスは拡大傾向にあり、職場においてより積極的に心の健康の保持増進を図ることが、重要な課題となっています。厚生労働省は2006年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針(2015年改正)」(以下、指針)を策定しましたが、この指針を基に、さまざまなメンタルヘルス対策が進められています。また、「第12次労働災害防止計画(2013年(平成25年)発行:平成25〜29年度が対象)」では、重点対策の1つにメンタルヘルス対策が挙げられ、対策に取り組んでいる事業場 の割合を80%以上にすることを目標としています。

    【参考】

    本会が2014年に行った「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」の普及等に関する実態調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる病院の割合は、回答が得られた3,213病院のうち63.3%でした。
    「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」の普及等に関する実態調査

    労働者の心の健康の保持増進のための指針

    ストレスチェック制度の開始

    2015年12月1日より、改正労働安全法に基づくストレスチェック制度が開始となりました。この制度は、定期的に労働者のストレスの状況について検査し、本人にその結果を通知することで自らのストレスの状況について気付きを促し、メンタルヘルス不調のリスクを低減されることを目的としています。この制度の開始により、常時使用する労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施することが、事業者に義務付けられました。
    ストレスチェック制度に関する情報はこちら(厚生労働省ホームページ)

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    事業者の役割

    職場では、メンタルヘルス不調の看護職への対応(早期発見、早期治療勧奨、復帰時の対応など)のみならず、メンタルヘルス不調を発生させないための取り組みが不可欠です。事業主は事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明し、組織的、かつ計画的な対策を実施することが必要です。また、労働者が労働時間、配置、業務量などによる過剰なストレスを受けないように、適切な雇用管理を行うことが重要になってきます。2009年(平成21年)3月に厚生労働省労働基準局長より、指針に沿った具体的推進についての通達が都道府県労働局長宛に発出されました。この中で事業場におけるメンタルヘルス対策の具体的推進事項として、メンタルヘルス不調者の早期発見と適切な対応のために相談体制を整備することも求められています。
    「当面のメンタルヘルス対策の具体的推進について」(基発第0326002号) 
    指針からメンタルヘルスケアの基本を学び、職場の体制づくりについて考えてみましょう。(※指針の内容は、労働者を「看護職員」、事業場は「病院・施設」、事業者を「病院・施設の経営者、または病院管理者」と読み替えると理解しやすくなります。)

    メンタルヘルスケアの計画と実施

    各事業所においては、衛生員会等を設置し、十分に調査審議した上で、指針に基づいた心の健康づくり計画を策定して取り組みを進めることが有効です。

      • 指針を参考にした計画の4ステップ
        ステップ1
        衛生委員会または安全衛生委員会において十分調査審議を行い、メンタルヘルスケアに関する事業場の現状とその問題点を明確にする。その際、ストレスチェック制度に関する調査審議を関連付けて行うことが望ましい。【指針3】
        ステップ2
        その問題点を解決する具体的な実施事項などについての基本的な計画(以下「心の健康づくり計画」)を策定し、実施する。【指針4】
        ステップ3
        心の健康づくり計画に基づき、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の4つのメンタルヘルス ケアを継続的かつ計画的に実施する。【指針5】
        ステップ4
        4つのメンタルヘルスケアの継続的かつ計画的実施のための教育研修・情報提供、職場環境等把握および改善、メンタルヘルス不調への気付きと対応、職場復帰のための支援、計画の実施結果の評価などを行う。【指針6】

    4つメンタルヘルスケア

    以下の4つのケアが継続的、かつ計画的に行われることが、心の健康づくり計画を実施する上で重要です。これらは、相互に関連をもたせて推進していくことが効果的です。

    • 「セルフケア」 労働者によるストレスへの気付き、ストレスへの対処
    • 「ラインによるケア」 管理監督者による勤務環境の把握と改善、個別の指導・相談対応等
    • 「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」 産業医、衛生管理者によるケア実施の企画立案、個人健康情報の取り扱い、事業場外資源とのネットワーク形成、職場復帰の支援
    • 「事業場外資源によるケア」 事業場外資源による情報提供やアドバイスを受けるなど、サービスの活用、ネットワーク形成、職場復帰の支援

    個人のプライバシーへの配慮と個人情報の保護

    メンタルヘルスケアを進める上では、健康情報を含む個人情報の保護に配慮することが極めて重要です。しかし一方で、メンタルヘルス不調者への対応に当たっては、労働者の上司や同僚の理解と協力が不可欠であり、当外情報の適切な活用が必要となることもあります。ストレスチェックによる健康情報を含め労働者個人から情報を取得する際や、得た情報を医療機関等の第三者に提供する場合には、原則として本人の同意を行っておくことが望まれます。【指針7】

    心の健康に関する情報を理由とした不利益な取り扱いの防止

    労働者の心の健康に関する情報は、その労働者の健康を確保するために適正に利用されるべきものです。事業主が把握した情報を理由に、解雇・雇い止め、退職勧告、不当な配置転換や降格など、その労働者に対して不利益な取り扱いを行うことがあってはなりません。【指針8】

    職場のメンタルヘルスへの取り組みをチェックし、判定表で評価してみてください。

    職場復帰への支援

    メンタルヘルス上の理由により休業した労働者の職場復帰への支援や対応は、多くの事業場にとって大きな課題となっています。休業していた労働者が円滑に職場復帰するためには、職場復帰プログラムの策定や関連規定の整等により、休業から復職までの流れをあらかじめ明確にしておくことが必要です。
    職場復帰が可能と判断された場合には、職場復帰日や就業上の配慮、人事労務管理上の対応などについて検討し、職場復帰支援プランを作成します。職場復帰後には、管理監督者による支援のほか、事業場内産業保健スタッフ等によるフォローアップの実施、支援プランの評価や見直しを行います。

        • 職場復帰支援の流れ
          ステップ1
          病気休業開始及び休業中のケア
          ステップ2
          主治医による職場復帰可能の判断
          ステップ3
          職場復帰の可否の判断、及び職場復帰支援プランの作成
          ステップ4
          最終的な職場復帰の決定
          ステップ5
          職場復帰後のフォローアップ

    職場復帰支援の例:試し出勤制度や復帰後の就業上の配慮

    正式な職場復帰決定の前に、社内制度として試し出勤制度を設けると、より早い段階で職場復帰の試みを開始することができ、休業していた労働者の不安を和らげ、復帰の準備を行うことができます。
    例)通勤訓練:自宅から職場の近くまで通勤経路で移動し、一定時間過ごした後に帰宅する。

    また、復帰後は緩和勤務により労働負担を軽減するなどの配慮が重要です。
    例)業務内容・業務量の軽減、短時間勤務、時間外勤務の免除など

    職場復帰支援について、分かりやすく説明したパンフレット「Return 改訂.心の健康問題により休業した労働者の職場復帰の手引(厚生労働省、独立行政法人労働者健康福祉機構 2010年発行)をご活用ください。

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    事業者の方へお役立ち情報

    事業場が抱える問題や求めるサービスに応じて、専門的な知識を有する各種の事業場資源を活用することが有効です。専門的な診断・治療や事業場内産業保健スタッフとの連携が行える医療機関のほか、民間や公的な相談機関があります。ここでは、メンタルヘルス対策に取り組む事業者を支援している相談機関と、ストレスチェックやメンタルヘルスケア活動に関するセミナー等を開催している機関の一部をご紹介します。(2016年1月8日現在)

    【相談機関】

    名称 概要
    独立行政法人労働者健康福祉機構が、地域における職場のメンタルヘルス対策の中核的機関として全国47都道府県に設置しています。電話相談、訪問支援等、メンタルヘルス不調の予防から復職支援まで、事業者の取り組む職場のメンタルヘルス対策を無料で総合的に支援しています。
    一般社団法人いのちの電話連盟が、自殺をはじめとする精神的危機にあって援助を求めている人たちのために、電話やインターネット上での相談事業などを行っています。
    登録相談機関(有料)
    • 国の登録基準を満たしていることが確認された機関で、事業者と契約を結び、有料で、面接による、労働者の心の健康に関する相談を行う専門機関です。
      厚生労働省が運営する、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」から検索できます。

    【管理者や担当者向けの研修を行っている機関】

    名称 概要
    事業場における健康づくり・メンタルヘルス活動に関する 各種セミナー 、社内研修会の 講師派遣 、 ストレスチェック など、様々なサービスの提供をしています。
    産業現場の労働について実証的な調査研究を行い、作業方法、職場環境や労働生活の改善に役立てることを目的とした活動をしています。メンタルヘルスケアに関するセミナーなどの開催もしています。「セミナー・イベント」の情報をご確認ください。
    看護管理者向けに、ストレスマネジメントの研修を実施しています。

    【厚生労働省が提供しているサービス】

    名称 概要
    厚生労働省が運営する働く人のポータルサイトです。厚生労働省等からの新着情報や法令のほか、事業場の取り組み事例なども紹介されています。eラーニングやメール相談窓口も利用できます。
    厚生労働省が提供する働く人のメンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する電話相談。

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