個人での対応(セルフケア)

ストレスへの気付きと対処

「セルフケア」は、「労働者の心の健康保持増進のための指針」(厚生労働省、2006年発行)の4つのメンタルヘルスケアの1つに挙げられています。心の健康づくりにおいて、労働者自身がストレスに気付き、これに対処するための知識・方法を身に付け、それを実施することが重要です。ストレスに気付くためには、ストレス要因に対するストレス反応や心の健康について理解するとともに、自らのストレスや心の健康状態について正しく認識できるようにしておきましょう。

【ストレスによる心身の反応】

ストレスによる反応は、おおまかに心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。心理面でのストレス反応には、不安や抑うつ(気分の落ち込み,興味・関心の低下)、イライラ、意欲の低下、集中力の低下などがあります。身体面でのストレス反応には、入眠障害(寝付きが悪い)や中途覚醒(夜中に目が覚める)などの不眠、易疲労感、頭痛や肩こり、腰痛、目の疲れ、めまいや動悸、腹痛、食欲低下、便秘や下痢などさまざまな症状があります。また、行動面でのストレス反応には、飲酒量や喫煙量の増加、食欲亢進(ドカ喰い)、ひきこもり、欠勤や遅刻の増加、仕事でのミスやヒヤリハットの増加などがあります。

適切にストレスへの対処がなされている場合には、これらのストレス反応はしだいに低下・改善していきます。 しかし、長く続く場合には、過剰なストレス状態に陥っているサインかもしれません。普段の生活を振り返り、ストレスと上手に付き合うための方法(コーピング)を工夫してみることをおすすめします(下掲「ストレスへの対処方法」を参照)。また、これらの症状の程度が重かったり長期間続くような場合には、専門医(精神科、心療内科)に相談することをおすすめします。

【ストレスのセルフチェックリスト】

ストレスをためてはいませんか。チェックしてみましょう。

57項目の質問項目から、職業性のストレス因子とそれによるストレス反応(抑うつ、活気などの気分プロフィールや、身体愁訴(しゅうそ)など)、およびそれらの関係に影響を与える因子(家族や同僚の支援)を同時に測定し、ストレスを総合的に評価することが可能です。

調査票チェック後の評価は、「職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスの現状把握のためのマニュアル」 (平成14〜16年度 厚生労働科学研究費補助金労働安全衛生総合研究、平成21年更新版)の4〜5ページおよび10ページの「資料1. 簡易採点法」を用いて行うことができます。

このストレス簡易調査表に基づいたストレスチェックが、厚生労働省が運営する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」で行えます。

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【ストレスへの対処法】

ストレスというとネガティブなイメージをもたれがちですが、ストレスそのものが悪いわけではありません。ストレスとは、簡単に言えば緊張と弛緩でいうところの緊張です。同じような状況に対しても緊張(ストレス)を負担に思うか、個人的な挑戦の機会と見なし成長や達成感、自信に結びつけるのか、捉え方は人により異なります。また、同じ人でも年齢や仕事の経験年数、周囲の環境などによって捉え方は変化します※1。例えば、若いころには平気だった夜勤が、年齢とともに負担になったという方も多いのではないでしょうか。物事の捉え方、感じ方は、ストレスへの効果的な対処法にも影響します。

ストレスに対処する行動をストレスコーピングといいますが、ストレスに悩まない人たちは「コーピングがうまくいっている=ストレスにうまく対処している」といえるでしょう。コーピングは対処行動によって、次のように分類できます※2

また、看護職の場合、日頃から自己学習や技術訓練を行うことで、自信を持って患者ケアや診療の介助を行えるようになり、業務に伴うストレスの軽減につながります。コミュニケーションの工夫をすることも、対人関係でのストレスを減らすために効果的ではないでしょうか。十分な睡眠やバランスの良い食事は、ストレスに対する抵抗力を高めるために重要です。そのほか、ストレスによって生じる身体的な症状を避けるためには、自律訓練法などのストレスに対する生理的な反応を意識的にコントロールするための訓練があります※3。 また、日頃からストレスが発散できるよう、趣味や生きがいとなるものを持つことも必要です。

ここでは、ストレスに対処する方法について、いくつか紹介します。

他者への相談
まずは1人で抱え込まずに、身近な家族や同僚、友人に不安や悩み、ストレスを感じていることを話してみましょう。専門家でなくても誰かに話すだけで、気持ちに整理がついたり、ストレスを発散したりできます。特にアドバイスを受けていなくても、「うん、うん」と聞いてもらうだけで、ずいぶんと気が楽になります。また話すことで、頭の中が整理され、自分で解決の方向性に気付くこともあるでしょう。
仕事のことで行き詰まった時や悩みがある時には同僚や上司に相談できればいいのですが、難しい場合もあるかと思います。相談窓口を設けている職場もありますので、あなたの職場の相談窓口を確認してみましょう。公的な機関でも無料の相談窓口を設けており、専門家からアドバイスを受けることができますので、利用してみてください。心身の異常が続くようであれば、医療の専門家への相談が必要となってきます。
ストレス対処の「3つのR」
ストレスは、気付かない間にも蓄積していきます。心身が疲れ切ってしまってからでは、なかなか回復は難しいものです。日頃から「3つのR」を取り入れ、適度に休みを取って早めに対処しておくことが、ストレスが引き起こす病気の予防にもつながります。
  • レスト(Rest):休息、休養、睡眠。
    オンとオフを切り替え、休息をしっかり取ることが重要です。 また、仕事中でも席を立って歩く、コーヒーを飲むなど、疲労が蓄積する前に意識して短い休憩を取ることも効果があります。
  • レクリエーション(Recreation):運動や旅行、ガーデニングのような趣味・娯楽や気晴らし。
    ストレスを発散させる趣味を持つことは大事です。1週間に1時間程度でもレクリエーションの時間を取り入れ、好きなことに打ち込むことで日々のストレスから意識をそらせるように心掛けましょう。
  • リラックス(Relax):ストレッチ、瞑想や音楽、アロマセラピーなどのリラクゼーション。
    呼吸を落ち着かせたり、筋肉の緊張を解くなどの精神を安定させるリラクゼーション方法を取り入れましょう。また、家族や親しい友人との団らんなど、緊張を解きほぐす時間を持つことも大切です。
健康的な生活習慣
うつ病や抑うつ状態の発症には、生活習慣も影響するといわれています。米国・カリフォルニア大学のブレスロー教授は、生活習慣と身体的健康度(疾病や症状など)との関係を調査した結果に基づいて、以下の「7つの健康習慣」を提唱しました。健康的なライフスタイルはセルフケアの基本となります。自分のライフスタイルを見つめてみてください。

<ブレスローの7つの健康習慣>※4

  • 7〜8時間の睡眠を取る
  • 朝食を必ず食べる
  • 間食はあまり食べない
  • 標準体重を保つ
  • 適度に運動を行う
  • タバコは吸わない
  • 適正飲酒を心掛ける

ストレスとその予防方法について分かりやすくまとめたパンフレット「Selfcare心の健康 気づきのヒント集」(厚生労働省(独)労働者健康福祉機構、平成25年発行)をご活用ください。

【引用文献】

1. 鈴木安名:スタッフナースの離職を防ぐメンタルヘルスサポート術、日本看護協会出版会、2009

2. 坪井康次:ストレスコーピング-自分で出来るストレスマネジメント、心身健康科学 6(2)、2010

3. 小林優子:看護職のストレス特性とその対応、看護、看護53(10)、46-49、2001.

4. Belloc NB, Breslow L: Relationship of physical health status and health practices, Prev Med, 1(3): 409-21, 1972.

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お役立ち情報

ここでは公的な相談機関と民間の相談機関の一部を紹介します。(2016年1月8日現在)

名称 概要
こころの耳 厚生労働省が運営する働く人のポータルサイトです。厚生労働省等からの新着情報や法令の他、事業場の取組み事例なども紹介されています。eラーニングやメール相談窓口も利用できます。
電話相談「こころほっとライン」 厚生労働省が提供する働く人のメンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する電話相談。
日本いのちの電話連盟 日本いのちの電話連盟に加盟する都道府県ごとのセンターがあります。
日本産業カウンセラー協会 働く人向けの無料電話相談を開設しています。
みんなのメンタルヘルス 厚生労働省が運営する心の健康や病気、支援やサービスに関するウェブサイトです。治療や生活に役立つ情報を分かりやすく提供しています。
都道府県精神保健福祉センター 全国都道府県に設置されています。こころの病気全般に対応した相談やサービスを提供しています。

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