国際情報のページ

機関誌「看護」2025年5月号

国際看護師の日

日本看護協会国際部

今年のテーマ

図表1  2025年のINDのテーマ

国際看護師協会(以下:ICN、本部:ジュネーブ)は、近代看護の礎を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなみ、1965年より5月12日を「International Nurses Day(国際看護師の日、以下:IND)」と定め、世界中の看護師の献身的な貢献をたたえる日としている。
2025年のINDのテーマは、“Our Nurses. Our Future. Caring for nurses strengthens economies(和訳:看護師のウェルビーイングの向上が経済を支える)”(図表1)である。2025年は、世界的な保健医療システムに不可欠な看護師の健康とウェルビーイングを支援することの重要性を強調し、看護への戦略的投資が、経済および社会に多大な利益をもたらすことを示すことに焦点を当てた。




看護師の健康とウェルビーイング

図表1  2025年のINDのテーマ

看護師は、身体的、精神的、感情的、倫理的等、数多くの課題に直面しており、看護師の健康とウェルビーイングを促進することを通じて、これらの課題に対処することが、看護労働力の健全性を維持するためには不可欠である。
ICNは、これまでに、看護師のウェルビーイングを2022年INDにおいて政策の重点分野として示し、2024年に公表されたICN戦略計画2024-2028年(※1)にも取り込んできた。背景には、COVID-19パンデミック以降、世界中の看護師に対する基本的権利の軽視が見られ、極めて重要な戦略的優先事項として、個別に十分に配慮すべきだとICNが考えていることにある。2022年INDレポート(※2)では、政策重点分野の一つとして「看護師の健康とウェルビーイングに投資し、配慮する」を掲げ、それにより期待されるアウトカムを記載している(図表2)。
2025年のIND報告書では、離職率や看護師不足のコストを検証し、成功した戦略を事例として挙げることで、看護師のウェルビーイングの向上が経済的に合理的であることを示す、とICNは述べている。また、看護と医療の持続可能な未来のために、すべての組織と政府が看護師を大切にし、保護し、尊重し、看護師に投資を行うことを呼びかける、ICNの「変革のための憲章(Charter for Change)」(※3)の政策アクションの強化につながると、ICNは考えている。
INDレポートは、ICN公式ホームページ(※4)に掲載されている(2025年4月16日に公表予定)。

※1:Strategic Plan 2024-2028

※2:国際看護師の日
※3:Charter for Change
※4:International Nurses Day

世界の若者の「看護師への関心」の低下日本では?

国際看護師協会 Western Pacific/Subarea Asia 理事 手島 恵 

日本の中高生の看護師への関心は?

2025年2月、学研教育総合研究所から、日本の子どもの「将来の職業」に関する調査結果が公表され、中学・高校生の女子学生の将来就きたい職業の1位が看護師でした(※1)。
一方、2024年5月に公表された経済協力開発機構(OECD)のPISA(※2)のデータに基づく報告書によると、加盟国15カ国の15歳年齢の「看護師への関心」は、2022年時点で、コロナ禍前の2018年と比較して少なくとも半数の国で低下しています(図表1)。看護師をめざす若者の割合の減少が特に顕著な国は、米国とカナダ、一部の北欧諸国(ノルウェー、デンマーク)、アイルランド、英国、スイスでした。日本の場合は、この図表1が示すように、世界の中で最も看護師への関心が高まっています。
これについて、報告書では、日本は女子学生の7人に1人が看護師に興味があること、その要因として、看護学部がオープンキャンパス活動を長年にわたって定期的に行ったり、「一日看護体験」を実施したりしていることが挙げられています。また、日本では、看護師が尊敬・評価される職業であり続けていることにも言及しています。
2026年春から放送されるNHKの連続テレビ小説で看護師のストーリーが取り上げられることも、若者の関心を高める追い風になっていくのではないでしょうか。

国際看護師協会の声明
  • OECDの報告書を受け、国際看護師協会(ICN)は、下記の声明を出しています(※3)。
  • 15歳の学生間で看護師を志望する割合が2018年から2022年の間に8%減少
  • COVID-19パンデミックにより、看護師に対する認識がさまざまになり、ヒーローとして脚光を浴びる一方で、厳しい労働条件や低賃金が露呈し離職率が上昇
  • 看護師に興味を持つ学生の90%以上が女子である:よりよい進路指導と男子学生の獲得に向けた取り組みが必要
  • 多くのOECD諸国は、看護教育プログラムを拡充し、より多くの看護学生を引きつけるために財政的インセンティブを提供しているが、すべてではない
  • 自国での採用が依然として不十分である場合、OECD諸国は国際的な採用にますます頼り、出身国の看護師不足を悪化させることへの倫理的な懸念が高まる可能性がある

※1:学研教育総合研究所調べ
※2:OECDが実施する国際的な学力調査で「OECD生徒の学習到達度調査」とも呼ばれる
※3:ICN responds to new OECD data showing reduced interest in nursing as a career: “We cannot ignore the alarm bells ringing about the lack of action to secure the future of the nursing profession” IND 

国際助産師の日

日本看護協会健康政策部助産師課

今年のテーマ

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国際助産師連盟(ICM:International Confede-ration of Midwives)は、助産師の業務の重要性について意識を高めることを目的に、毎年5月5日を「国際助産師の日」と制定している。ICMは今年の国際助産師の日のテーマを「Midwives:Critical in Every Crisis(※1)(助産師:あらゆる危機で必要とされる存在)」とした。
自然災害や紛争、気候変動など、世界はかつてないほど多くの危機に直面している。これらの危機は、妊娠合併症やジェンダーに基づく暴力などのリスクを高めるだけでなく、ヘルスサービスへのアクセスが制限されるなど、女性や女児、多様なジェンダーの人々に深刻な影響を及ぼす。

ヘルスシステムに必要不可欠な存在

助産師は、地域で信頼されている初期対応者であるだけでなく、危機的状況下でも性と生殖・妊産婦・新生児・思春期の健康(SRMNAH:Sexual,Reproductive,Maternal,Newborn,and Adolescent Health)にかかわるサービスの最大90%を提供できる者だと言われている。さらに、最小限の資源での安全な出産・産前・産後ケアの提供をはじめ、母乳育児の支援によって新生児が安全で清潔に、確実な栄養が得られるケアの提供も可能だ。
このように、助産師は危機的状況下におけるヘルスシステムに必要不可欠な存在であるにもかかわらず、緊急時対応計画の整備や緊急時対応に十分参画できていない状況にある。そのため、ICMは、今こそ助産師を必要不可欠な専門職として位置づけ、危機への備えや対応など、あらゆる段階に助産師を含めるよう声を上げるときである、と掲げている。
国内でも、例えばコロナ禍において、女性とその家族が必要とする健康支援を継続的に受けられるよう助産師が関係者に働きかけ、地域におけるケア提供体制が構築された実績や、2024年1月の能登半島地震の際、妊産婦の相談支援のために、助産師が常駐する避難所が整備された実績などがある。危機的状況下での女性とその家族への助産師による支援の意義は、国内外から関心が高まっている。

本会の取り組み

本会では、地域で助産師による持続可能かつ効率的なSRMNAH関連事業を提供するための仕組みを全国展開できるよう好事例の収集を重ね、その結果を公式ホームページに集約している(※2)。また、周産期領域における危機管理として「改訂版 分娩取扱施設における災害発生時の対応マニュアル作成ガイド」(2024)(※3)、「分娩取扱施設等における新興・再興感染症対応マニュアル作成ガイド」(2025)(※4)を公表している。ぜひ活用いただきたい。
なお、日本のICM会員協会が共同で作成したポスター(図表1)(※5)や、ICMが公表しているSNS用の画像など、「国際助産師の日」を盛り上げるためのツールは、それぞれのホームページからダウンロードできる。5月5日を契機に、助産師の重要性を社会に周知するために、ぜひ活用いただきたい。

※1:International Day of the Midwife 2025 Theme Announcement
※2:女性とその家族への健康支援
※3:改訂版 分娩取扱施設における災害発生時の対応マニュアル作成ガイド
※4:周産期領域における危機管理 
※5:国際助産師の日

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