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2021年

10月号

日本看護協会 健康政策部助産師課

2021年国際助産師連盟(ICM)評議会・第32回ICMバーチャル3年毎大会報告・ICM戦略計画2021年〜2023年・世界助産白書2021

今月は、6月に開催されたICM評議会および第32回ICMバーチャル3年毎大会と、ICMの新たな戦略計画、「世界助産白書2021」について紹介する。

2021年ICM評議会

ICM評議会(Council meeting)は年に1度開催され、前年度の年次報告、会計報告、その他事項について審議する。
今年の評議会は6月21〜22日に開かれ、会員協会の代表者・オブザーバー、理事会構成員等、延べ約230人が出席。本会からは、吉川久美子常任理事と、井本寛子常任理事が出席した。
今回、新たにICMが発行する所信声明として「助産師のためのジェンダーの平等と賃金の公平」「助産師主導の継続したケア」「先住民助産師と非先住民助産師」の3文書が提案され、質疑応答が行われた。「説明責任に関する理事会方針」「ガバナンス改革」「ICM地域の強化」の議題では、ICM理事会から、よりよい運営体制に向けた今後の実施計画案が発表され、会員協会と理事会構成員間で活発に意見交換が行われた。協議内容は、本評議会を踏まえ、各国会員協会の投票をもって決議された。
なお、triennial Council meeting(以下:国際評議会)は、2020年に開催されたため、今年は開催されなかった(国際評議会は、3年毎大会と併せて開催され、ICMと会員協会が対面で集い、年次・会計報告の他、理事会構成員の選出、発行文書の新規・改訂案、3年毎大会開催候補地選出等の議題について、協議・投票を行う会議)。

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2021年 第32回ICMバーチャル3年毎大会

3年毎大会は、6月の毎週水曜日(太平洋標準時)にライブ配信され、世界110カ国から約2000人が参加した。世界の助産師がバーチャルでつながって発表や意見交換を行うことができ、貴重な交流の場となった。
セッションテーマには通常の助産関連のほか、新型コロナウイルス感染症対応や「世界助産白書2021」(白書については後述)等があがった。
日本からも132人が参加し、全292題のポスターセッションのうち、日本の発表は75題と全体の4分の1を占めた。テーマは、母子支援の方法、助産師教育、虐待防止等であった。
閉会式では、フランカ・カデー氏(ICM会長)のほか4人の助産師が自身の体験を語り、助産師が母子のために果たす重要な役割、助産師の政策・意思決定の場への参画や、リーダー的地位に就く重要性が示された。また、ICMの新たな取り組みとして「PUSH(プッシュ)」キャンペーンが紹介された(図表1、2①)。
次回(第33回)ICM3年毎大会は2023年6月11〜14日にインドネシア・バリで開催されることが決定し、参加登録が開始された(図表2②参照)。次回も日本から多数参加すること、世界の助産師が対面で一堂に会することを期待する。

ICM戦略計画2021年〜2023年

ICMは戦略計画2021年〜2023年を発表し、今後3年間の目標と計画を紹介した。
助産専門職を世界的に創出・指導し、ICMの持つ影響力を高め、実践を可能にする専門家としてのICMの地位の確立を、全体目標として掲げた。その全体目標達成のための戦略的優先事項は、下記3項目である。

【戦略的優先事項】

その1:助産の未来に向けた革新と持続可能性の推進
その2:新しい助産専門職の枠組みの開発・強化と、その運用の支援
その3:女性の意見を重視した助産のパートナーシップやアドボカシー、コミュニケーションを実現・強化することによる、助産に関するムーブメントの醸成

「その1」では、持続可能なICMであり続けるために、スタッフ・理事会のスキル向上、ガバナンスと内部構造の強化、財務面の安定性の確保、活動で環境に負荷をかけない配慮(不要な出張や印刷資料の制限等)をするよう努める。また、デジタルプラットフォームの評価・更新、次世代の助産師の支援・養成・構築に取り組む。
「その2」では、ICMが「助産専門職の枠組み(professional framework for midwifery)」(以下:枠組み)を改訂する。枠組みは、ICMとパートナー団体※1 が、各国の助産サービスの開発・強化を支援するためにつくられたツールで、ケアに対する明確な理念とアプローチ、助産専門職の実践の基準、コア・コンピテンシー、ケアモデルが示されている。
改訂版は、現行の枠組みの要素を踏まえた上で、中核となる理念を拡大。リーダーシップや助産の理念、実践しやすい環境、助産師主導のケア実践モデルの継続性に関しても取り入れる予定である。
ICMは、助産専門職が看護師等ほかの医療職とは異なる自律した専門職であると認識されることを重要視しており、改訂版を通じてその認知度向上に取り組む。また、枠組みは政府・開発パートナー・市民社会の協力者らに対するアドボカシーのツールとしても利用可能なことから、助産師の意思決定の議論への参加促進をはじめ、あらゆる場面で活用することを支援していく。
「その3」では、ICMは女性と助産師のパートナーシップを構築、助産師同士のパートナーシップを支援、助産師とステークホルダー等のパートナーシップを強化する。また、アドボカシーとコミュニケーションのために人員と予算を拡大して注力し、助産師が女性・新生児・コミュニティの健康とwell-beingの実現のために果たす重要な役割について、認識と政策転換を生み出す強い影響力のあるムーブメントを構築していく。
ICMは、戦略計画全体を通して、ジェンダーの視点を反映し優先させることで、ジェンダー平等を推進し、助産師と女性の現状が改善されるよう、プロセスやアプローチの実行に努めていく。
ICM会員協会(本会、日本助産師会、日本助産学会)が協働して、戦略計画の日本語訳を作成したので、活用いただきたい(図表2③参照)。

「世界助産白書2021」

「世界助産白書2021」は、国連人口基金(UNFPA)が世界保健機関(WHO)・ICMと連携し、33機関の支援を得て、2021年5月に発行された。2011年版・2014年版は低・中所得国※2が対象であったが、今回は全世界を対象に調査が実施され、日本など高所得国※2のデータも含まれている。
同白書の分析によると、現在、世界中で90万人の助産師が不足(特に低所得国とアフリカ地域で不足)しているため、緊急で助産師への投資が必要であり、投資により年間430万人の命を救えると予測されている(全文は図表2④参照)。

  • 1.世界保健機関(WHO)と国連人口基金(UNFPA)
  • 2.世界銀行の、1人当たりGNIで見た所得基準による分類