看護職員の処遇改善に関する過去のメッセージ・見解

人事院が俸給表改正に着手したことに関する本会の見解

2022年8月31日

8月30日、公的価格評価検討委員会の場において、人事院が国家公務員医療職俸給表(三)の級別標準職務表を改正する検討を進めていることが明らかにされた。これまで日本看護協会が求めてきた看護職員の職責、能力に応じた処遇改善の実現に資する改正となるようお願いしたい。

国家公務員医療職俸給表(三)が適用される看護職員数は1,800人程度に過ぎないが、看護職員の場合、公的・民間を問わず、同表を参考とする医療機関が多いことから、看護職員の賃金の「公定価格」としての性格を持っている。

日本看護協会は、厳しい医療現場で働く看護職員の賃金は、国家資格を有する専門職としての職責や職務に見合っていないと訴え、特に管理的立場にある看護職員及び高度な専門性を有する看護職員を適切に処遇できる賃金体系の導入を求めてきた。

委員会の増田座長が「人事院において、看護師に係る国家公務員俸給表の標準職務表が改正されたら、厚生労働省から医療関係団体に対して、国家公務員における見直し内容を踏まえつつ、看護師のキャリアアップに伴う処遇改善の推進を検討していただくよう、要請を行っていただきたい」旨の発言をされたとのことであり、これを機に、看護の専門性と役割の重要性に見合った賃金体系が広く普及することを期待する。

看護職員の賃金引上げが実現

看護職員の皆さまへ
看護職員の賃金引き上げが実現

岸田総理の下で進められていた看護職員の収入増に向けた議論が当面の山を越え、既に決定されていた2022年2〜9月の措置に続き、10月からの賃金引き上げの内容が明らかになりました。全国の看護職員の皆さまにこのあらましをご報告するとともに、このたびの措置が確実に皆さまの収入増につながるよう、引き続き取り組みを進めていきます。

12月22日に総理に提出された公的価格評価検討委員会の「中間整理」においては、「今般の経済対策を踏まえ、まずは、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員について、収入を3%程度引き上げていくべきである。」と記載されました。既に令和3年度補正予算において2022年2〜9月の1%程度の引き上げは国からの補助金として措置されていますが、10月以降は3%程度の引き上げを行うべきということです。同時に「中間整理」では、「看護師の処遇改善に関して、今回の処遇改善の取組が確実に賃上げにつながることを担保することを、令和4年度診療報酬改定の中で検討すべき」とされました。

これを受け、同日、政府は、令和4年度の診療報酬本体の改定率をプラス0.43%、うち、「看護の処遇改善のための特例的な対応」としてプラス0.20%とすることを決定しました。その内容は、救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げる処遇改善の仕組みを創設し、確実に賃金に反映されるよう適切な担保措置を講じるというものです。

また、「中間整理」においては、本会が主張してきた「管理的立場にある看護師の賃金が相対的に低いこと、民間の医療機関であっても、国家公務員の医療職の俸給表を参考にしている場合が多いこと」にも触れ、「すべての職場における看護師のキャリアアップに伴う処遇改善のあり方について検討すべきである」と明記されました。

さらに、「看護師のキャリアアップの観点からは、ライフステージに対応した働き方により継続的に就労できることが重要である」とされ、仮眠室の拡張等による働きやすい職場づくり、看護補助者の配置やICTシステムの導入等による業務負担の軽減、院内保育所の整備、短時間正規雇用など多様な勤務形態の導入による就業しやすい環境の整備など、具体例を挙げ、「勤務環境の改善に積極的に取り組むべきである」とされています。

本会は、看護職員の賃金水準、賃金体系を改善し、段階的であっても、すべての看護職員を対象に十分な収入増を実現する恒久的な措置の導入に向けて引き続き取り組んでいくとともに、本会の目的の一つでもある「看護職員が安心して働き続けられる環境づくり」を推進していきます。

看護職員の皆さまご自身も、それぞれの職場で処遇や、勤務環境を見直し、その改善に取り組むことで、看護職員の処遇改善に向けた大きな潮流となることを期待します。

2021年12月23日
公益社団法人日本看護協会会長 福井トシ子

公的価格評価検討委員会に「看護職員の収入増の必要性に関する意見書」を提出

2021年12月1日

日本看護協会は、政府の公的価格評価検討委員会に看護職員の収入増を訴える意見書を11月25日に提出しました。本会は、現在の看護職員の処遇は業務内容に見合っていないと考えています。全ての看護職員の抜本的な処遇改善に向けて、意見書で以下2点の実現を求めました。

看護職員の賃金の構造を改革し、賃金増を実現させるため、看護職員の賃金の実態や賃金体系の見直しの必要性について、意見書全文に詳細に記載しているため、是非ご覧ください。

意見書の全文はこちらからご覧ください。
看護職員の収入増の必要性に関する意見書(全文)

  1. 40代前半での看護職員と一般労働者の賃金格差月額7万円を解消するため、①及び②の措置を実施し、併せて医療職俸給表(三)の級別標準職務内容を改善する。
    • 各年齢層にわたる基本給引上げによるベースアップの実現
    • 管理的立場にある看護職員及び高度な専門性を有する看護職員を適切に処遇できる賃金体系の導入
      • 副看護師長、主任看護師を3級に、看護師長を4級に位置付ける
      • 認定看護師等高度な専門性を有する看護職員を3級以上に位置付ける
  2. 看護職員の処遇改善に必要な原資を確保するため、診療報酬、介護報酬等において加算等の措置を実施する。その際には、加算分が確実に看護職員に賃金として支払われる仕組みとし、看護職員のキャリア構築に資する、職責と能力に応じた給与表の適用を含む算定要件を設定する。