特定行為研修を修了した認定看護師の活動

特定行為研修を受講し、活躍している認定看護師の活動と管理者の声を紹介しています。
実践事例をまとめたパンフレットは下記からご覧いただけます。

2019年2月の認定看護師制度の改正に伴い、従来の認定看護師資格を取得している場合は、特定行為研修を修了し必要な手続きを行うことで、B課程認定看護師になることができます。これを、「特定認定看護師への移行」と呼びます。

「特定認定看護師への移行」については、下記をご覧ください。

分野別の活動紹介

皮膚・排泄ケア認定看護師

基本情報

所属
社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会吹田病院(大阪府)
実践者

間宮 直子さん(副看護部長)

【修了した特定行為区分】

  • 創傷管理関連
  • 創部ドレーン管理関連
  • ろう孔管理関連
  • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連

【受講理由】

超高齢者社会を迎え、増加していく在宅療養を支えるために、患者の状態に応じたタイムリーな創傷ケアの提供がしたいと考え受講した。

看護管理者
池田 惠津子さん(副院長 兼 看護部長)

<実践例>在宅療養の場でのタイムリーな褥瘡処置による治癒促進とQOL向上

訪問看護師と同行し、多発する重症褥瘡への適切なタイミングによる処置で在宅継続

左:訪問看護師、中央:特定行為研修修了者、
右:病院看護師(師長)

患者は、多発する重症褥瘡を保有したまま在宅療養を強く希望していた。円背が強く体動が困難であることから頻回な外来受診は難しく、また訪問医だけでは重症褥瘡のタイムリーな処置が困難な状態であった。そのため、訪問看護師に同行して根拠を説明しながらケアを行い、手順書に基づいてデブリードマンを実施した。さらに、安楽な体位を療養者とともに考え、家族の不安にも耳を傾け、看護師として解決できるよう支援した。その結果、多発する重症褥瘡のうち、一つは治癒し、残りは改善した。

このように適切なタイミングでの処置の実施は、重症化予防や治癒促進につながり、在宅療養を継続する一助になっていると思われる。また、訪問看護師との協働が、地域医療における知識や技術の幅を広げ、対象者のQOLの向上につながっているように感じている。

今後の展望

患者や家族が、住み慣れた環境で「その人らしく」生活が営めるように、この医療機関で培ってきた技術と知識を今度は地域に提供していきたいと考えている。

看護管理者の声

介護施設、在宅へ活動の場を広げ、ますます訪問看護師や介護士から頼られる存在へ

認定看護師の資格取得後、院内外で幅広い活動展開する中、特定行為研修を受講し、さらに活動を拡大してきた。
これまでの専門性をベースに、臨床病態生理学・臨床推論・フィジカルアセスメント等、医学的判断の視点で観る力が加わり、多角的・多面的に捉え分析するようになったと思う。
主な行為はデブリードマンと陰圧閉鎖療法になるがタイムリーに実施できることで、ケアの質向上につながり患者にとっては大きなメリットとなっている。
地域での活動は高齢者施設・特別養護老人ホーム・在宅と幅広く訪問し、タイムリーに処置を実施している。在宅で褥瘡が治癒できるようになり、重症化予防にもつながっている。また、訪問看護師や地域で働く看護師・介護士の相談にも従来以上に応えることができるようになっている。

認定看護師と同行訪問することで、主任・師長の在宅支援力をアップ!

看護部方針として看護師は、急性期医療の現場に留まることなく、将来を見据えて在宅医療を視野に入れた、地域でも活躍できる人材育成が必要と考えている。そこに特定行為研修修了認定看護師は講師として、褥瘡対策をはじめこの領域で、積極的に後進の育成に取り組んでいる。
また師長・主任は、退院後の現状を把握し、管理者として何を整えることがスムーズな在宅での生活につながるかを理解し推進していくために、間宮とともに施設や在宅に同行訪問している。
今後在宅医療のニーズがますます高まるなか、地域包括ケアの質の底上げをしていくことが重要課題であると言える。そこに大きな役割があると考える。在宅で医療ニーズの高い人々への適切な処置やケア、指導が実施されるようになれば、在宅療養の場でのケアの改善につながり、重症化予防が可能となる。さらには、地域のあらゆる職種と協働し、チーム医療を確立して地域包括ケアが推進されることを期待し、ともに実践していきたいと考えている。



集中ケア認定看護師

基本情報

所属
川崎医科大学総合医療センター(岡山県)
実践者

富阪 幸子さん(看護主任)

【修了した特定行為区分】

  • 呼吸器(気道確保に係るもの)関連
  • 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連
  • 動脈血液ガス分析関連
  • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
  • 循環作動薬に係る薬剤投与関連

【受講理由】

主治医不在時の治療の停滞や、変化する患者の状態へ、タイムリーに対応できていないジレンマを感じる中で、特定行為の必要性を認識し受講を目指すきっかけとなった。

看護管理者
新 美保恵さん(看護部長)

<実践例>緊急手術患者の全身状態にあわせた人工呼吸器離脱

手術後、夜間ICU入室患者の不安に対応しつつ、朝までに抜管準備完了

図1:特定行為実践:人工呼吸器からの離脱

50代男性で急性大動脈解離のため、上行大動脈置換術を施行し、夜間にICU入室となった。循環動態が安定した段階で、医師より「人工呼吸器からの離脱」の指示があり、手順書を基に介入を開始した。鎮静薬の減量に伴い、創部痛の自覚と不安な表情と共に、呼吸回数の増加を認めた。術後の病態生理学的な経過と現在の状況、治療方針について丁寧な説明を行った事で、患者は挿管中であるという事を認識でき、安堵し呼吸回数の安定を認めた。創部痛に対して手順書による迅速な薬剤調整を行い、疼痛緩和後、深呼吸を促し排痰を促進した。患者の呼吸機能をアセスメントし人工呼吸器の設定を段階的に変更した事で、翌朝の医師の回診時には最終設定まで完了し、その後抜管できた。
特定行為の実施による「患者の状態に応じたタイムリーな対応」と「人工呼吸器装着時間の短縮」によって、人員が充実した時間帯での抜管やその後の状態観察の時間を十分に確保できるなど、安全な医療の提供にも貢献することができた。

今後の展望

特定行為研修修了者が、最大限活用される為の院内の基盤作りを行い、成果を可視化していきたい。
更に、当院からの退院となる患者から在宅訪問を行う等、地域へ活動を拡大させたい。

看護管理者の声

特定行為を磨き、チーム医療の要に!

研修受講後、自施設で十分に実践できる環境づくりとシステムを構築し、特定行為実践数は、侵襲的人工呼吸器設定変更8件/年、人工呼吸器からの離脱16件/年、Aライン確保30件/年であった。あくまでも看護の視点を基盤にした実践であり、患者に対してタイムリーかつ十分な説明と患者自身のセルフケアを尊重した行為であり、医師と看護師間のコミュニケーションの促進にもつながっている。

更に、他領域の認定看護師と協働で行っている重症者ラウンドにおいては、急変の兆候をいち早く捉え、重症化回避となった事例が2年間で117件であった。チーム医療においても、フィジカルアセスメントや臨床推論を活かして積極的に発言している。

委員会で手順書作成・共有、実践件数と評価を

図1:特定行為研修修了後の実践プロセス

受講後は当学校法人で実施している特定行為研修教育機関の指導者として講義や演習・実習を支援している。また特定行為実践看護師(当院での呼称)のリーダーとして、後輩育成や活動範囲の拡大に向けた体制づくりを行っている。

研修修了者の活動支援のため「看護師特定行為実践委員会」を病院の委員会として設立し、行為ごとの手順書の作成と共有、実践件数と実践評価のフィードバック等をしている。

今後は、活動を在宅療養の場に拡大していく方策と地域内の看護師特定行為修了者とのネットワークづくりを進めていきたい。



救急看護認定看護師

基本情報

所属
岐阜大学医学部附属病院(岐阜県)
実践者

辻 俊行さん(副看護師長)

【修了した特定行為区分】

  • 呼吸器(気道確保に係るもの)関連
  • 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連
  • 動脈血液ガス分析関連
  • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
  • 循環動態に係る薬剤投与関連

【受講理由】

当院は、岐阜県の基幹病院として特定行為研修の指定研修機関や協力機関としての役割が求められている。看護部長から特定行為研修の指導者となることを期待され、受講の推薦を受けた。自身も指導者としてだけではなく、院内の看護の質を向上するために、役割拡大を図りたいと考え受講した。

看護管理者
廣瀬 泰子さん(副病院長・看護部長)

<実践例>院内急変患者に対する迅速かつ的確な判断と特定行為実践による重症化予防

急変にかけつけ、動脈血液ガス採血、人工呼吸器設定変更。急性肺障害改善

脳腫瘍術後の呼吸管理のために人工呼吸器を装着していたが、突然、呼吸状態が悪化し、院内急変システムが発動された。
ただちに、病棟に駆けつけ、患者の呼吸状態についてフィジカルイグザミネーション、及び診療記録や主治医・看護師から情報収集を実施した。その結果、気管チューブの位置が浅いと判断し、手順書を基にチューブの位置調整を医師とともに実施した。
その後も呼吸状態は改善しなかったため、急性肺障害に伴う肺胞低換気を引き起こしている可能性があると判断し、手順書を基に動脈血液ガス採血を実施した。採血結果を踏まえて人工呼吸器設定を変更したことで、呼吸状態は改善した。
その後、病棟看護師に、本事例の病態判断と実践内容について説明し、今後予測される変化と観察項目、その対応策について伝えた。
特定行為研修での学びを活かして、患者の重症化予防を図ることができただけではなく、病棟看護師とのやりとりを通じて、急変後の患者管理に伴う看護師の不安を解消し、安全な医療・看護の提供に貢献することができた。

今後の展望

今後は、特定行為研修の実習生を受け入れる場合の教育・調整能力の向上を図るとともに、自身の臨床における臨床推論力・病態判断力を更に磨いて、現任の看護師教育に活かしていきたい。

看護管理者の声

修了後、経験を積み、特定行為研修の実習指導者へ

当院では平成28年3月に1人目となる特定行為研修修了者を得た。
その後、特定行為を修了した認定看護師には、引き続き研修期間を設けて配属部署である高度救命救急センターで経験を積ませている。
特定行為研修修了者の活用方針は、現在、検討段階ではあるが、臨床で特定行為研修を修了した認定看護師が挙げる成果は、確実に部署教育における質の向上につながっている。
また、平成29年1月には、日本看護協会が実施する特定行為研修の実習協力施設として研修生1名を受け入れた。その際には、実習指導者として、実習計画・指導医師との調整・実習の評価等の役割を果たしている。
実習中は、看護管理者として、実習指導に専念できるように勤務体制を配慮したことで、常に実習生の傍で指導にあたり、実習生の不安軽減も図れた。

特定行為研修準備委員会で開設準備を

現時点における特定行為研修修了者の活用は、院内の看護の質向上と、看護の専門性を踏まえたうえでの医行為実施の範囲である。今後は、組織横断的な活動へと活動範囲を拡大させたい。患者にとって、タイムリーに安全な患者の意思を尊重したケアを提供できることは、非常に有益なことである。

更にその先には、在宅医療の場においても役割拡大できる看護人材を育成し、地域に貢献できる活用方法を検討していきたい。当院では、特定行為研修準備委員会を組織して、開設準備等検討を重ねてきたが、未だ様々な課題がある。今後は、更に院内外における特定行為研修を修了した認定看護師の活用について、他施設の報告も参考にしつつ、医師や地域の医療機関関係者、さらには県行政担当者等と踏み込んだ話し合いをしていく必要がある。特定行為を活用する認定看護師が安心・安全に、役割拡大できる環境を整えていきたい。



糖尿病看護認定看護師

基本情報

所属
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷佐倉市民病院(千葉県)
実践者

髙橋弥生さん(専門・認定看護室 課長)

【修了した特定行為区分】

  • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
  • 血糖コントロールに係る薬剤の投与関連

【受講理由】

当院は、数年前に糖尿病診療の常勤医師が退職して以降、非常勤医師のみによる診療体制となった。そのため、糖尿病が専門外の医師から患者の血糖コントロールに関して相談を受けることが徐々に増えていき、医学的根拠をもって十分に応えられるよう、また患者の病状の変化にタイムリーに介入できるよう受講を決めた。

看護管理者
髙木智美さん(総看護部長)

<実践例>複雑な病態を有する患者へのタイムリーなインスリン投与量の調整による重症化予防

複雑な状態を的確にアセスメントし、安定した在宅生活へ

患者は夫婦二人暮らしの70代の男性で、2型糖尿病と診断されたが血糖コントロールは良好だった。
診断から6年後、肝臓と骨に転移のある膵臓がんと診断され化学療法目的で入院した。この時、HbA1c 8.6%、随時血糖値312mg/dl と高血糖状態であった。悪性腫瘍による内因性インスリン分泌および糖の取り込み機能の低下、疼痛や倦怠感、食事量の変化による高血糖と病態を判断した。
主治医(消化器内科医)に病態や化学療法、食事量に応じて調整がしやすいインスリン強化療法の提案をし、手順書にもとづき患者の日々変化する病状、疼痛や食事量に応じてインスリン投与量の調整を行い、高血糖を防ぎ化学療法を終了した。
病状の悪化のため入退院を繰り返しているがインスリン投与量の調整をタイムリーに行い重症化を予防できた。
自宅で過ごしたいという患者の希望に応じて内服薬への変更を主治医へ提案し、自宅では内服薬に切り替えているが安定した状態を保持できている。

今後の展望

現状では、時間的制約があり同行訪問には至っていないが、次年度は、地域に出向くことを検討している。
対象となる人のニーズに応じて院内での介入にとどまらず、生活の場に出向き様々な場で特定行為を活かした医療・看護をタイムリーに提供していくことで、安心で安全な生活に向けたお手伝いができればと考えている。

看護管理者の声

常勤専門医不在のなか、DM のエキスパートとして頼られる存在

特定行為研修受講後の認定看護師が、手順書と個別事前指示書を用いて活動し、1年が経過した。高橋のPHSは以前より良く鳴る。
看護師はもちろんであるが、医師からのインスリン調整に関する相談に加え、医師記録に患者の病態判断や臨床推論を記載することで、薬剤師や栄養士から患者の支援方法についても相談されることが6倍も増えている。
高橋の電話が鳴る度に、こんなにも当院は困っていたのだと感じ、この電話の分、患者の血糖コントロールが迅速に行われているのだと、この特定行為研修修了者の必要性を改めて実感する。
認定看護師としての基盤の上に更に特定行為研修を受講したことで、患者の生活状況や今後の生活を踏まえた上で、患者に合った血糖コントロールへの介入をしていることを事例の報告や相談数の増加等から感じている。

活動の段階的な拡大を支援

図1:当院における段階的な特定行為の実施イメージ

高橋が活動を開始する際に、特定行為研修修了後の段階的な実践イメージを確認した(図1)。
最近は、手術を控えた外来患者の血糖コントロールについて、医師より相談があると聞く。
手術前の目標血糖になるまでのインスリン調整の相談と術前に要する入院日数の相談である。高橋が活動することで、患者にとって有用な活用、活躍の場がこんなところにも広がるのだと教えてもらっている。
時間的制約があり、現状では同行訪問に至っていないが、今年度は訪問看護師と連携した外来での介入、次年度からは地域への介入も可能なように支援をしていきたい。高橋には、当院での後任育成に使える育成モデル、教育プログラムの作成も期待として伝えている。
次々と特定行為研修を修了した認定看護師の活動が広がっていくことを楽しみにしている。



感染管理認定看護師

基本情報

所属
社会福祉法人恩賜財団済生会支部 福井県済生会病院(福井県)
実践者

細田清美さん(看護師長)

【修了した特定行為区分】

  • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
  • 感染に係る薬剤投与関連
  • 栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連
  • 栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理) 関連
  • 創部ドレーン管理関連

【受講理由】

医師・看護師から感染症治療について意見を求められる機会や、ICT内でのディスカッションの場面が増加している。専門知識を深め特定行為実践を活用することで、チーム医療がより機能すると考えた。

看護管理者
脇 和枝さん(看護部長)

<実践例>高齢者施設へのラウンドで抗菌薬適正使用・脱水対策による重症化予防

定期的な訪問により、緊急入院が減少

研修修了後は、これまでの自施設内での活動に加え関連する高齢者施設にも活動の場を拡大している。
高齢者は、典型的な症状が出にくく、感染症や重症化のリスクが高いため、高齢者施設へは定期的に訪問している。
例えば、感染徴候に伴う発熱や脱水傾向のある入所者には、個々の病態に合わせて食事以外の時間に経口補水液の摂取や、輸液による補正を判断している。入所者との対話を通し『ずっとここで過ごしたい』など、個々の意向も聞きながら感染徴候者の病態観察と脱水の評価などを実践している。その結果、重症化予防と早期回復、「患者の希望する生活支援に着目した活動」に繋がり、病院への緊急入院件数も減少傾向となっている。
さらに、活動を通し、薬剤師や介護士等も患者(入所者) の病態に関心を持つようになり、多職種協働実践が行えるようになっている。

今後の展望

看護の視点をもちつつ医学的な知識を得てベッドサイドで身体観察などの情報から臨床推論し、病態を判断することで、的確な症状マネジメントが可能になる。
さらに、ロールモデルの役割を担うことで、チーム医療の活性化や施設全体の看護の質の向上に寄与したいと考えている。

看護管理者の声

特定行為をしない判断を医師とディスカッションすることで、より質の高い医療を

まず大きな成果として挙げられることは、医師と看護師の協働の強化が図られたことである。細田は研修受講後、臨床推論に基づいた適切な判断力が加わりより専門的な知識が身についたことで、医師の指示と現在の患者の状態を照らし合わせ、時には「特定行為をしない判断」をしながら積極的に治療方針について医師とディスカッションを行うようになった。それによって医師主導の治療から看護の視点も含まれたより質の高い医療提供が可能となっている。

次に、関連する高齢者施設のラウンドを通して、入所者の病態を適確に把握し感染症治療の支援や脱水対策を実践することで、重症化予防はもちろん夜間の緊急搬送者数の減少という成果が挙げられる。特定行為研修を修了した細田の活動により入所者は生活の場を維持することが可能となり、心身の負担軽減に繋がっていると同時に、当該施設においても所定疾患施設療養費加算による経営面の保持にも貢献できるという結果をもたらしている。

活動成果を見える化し、さらに地域へ!

これからは特定行為研修を修了した認定看護師の存在価値の周知や活動の場の拡大、更に実践を重ねることにより研修で学んだ知識や技術、判断力を磨いていくことが必要と考える。その支援として具体的には医師とのカンファレンスの参加や診療回診に同行する等、医師と協働しながら継続的にスキルアップできる環境や学びの場の提供について考えている。
更に活動の評価方法を検討し、データの可視化を目指していきたと思っている。成果が可視化されることで自身の確かな成長を感じ、やりがいと自信をもって活動できること、また成果を伝えていくことで、医師をはじめ看護師や他職種、地域住民からその存在価値が広く周知され、更なる活動の場ができることに繋がると考える。地域から求められる活動をこれからも期待している。



訪問看護認定看護師

基本情報

所属
独立行政法人国立病院機構 西別府病院(大分県)
実践者

山﨑 智子さん(スタッフナース)

【修了した特定行為区分】

  • 呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連
  • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連

【受講理由】

人工呼吸器装着患者を在宅で支援してきたが、フィジカルアセスメントや鑑別診断の視点が不足していた。地域包括ケアにおける自施設が地域で果たす役割は大きく、安心して退院支援を行えるよう受講した。

看護管理者
松山 恭子さん(看護部長)

<実践例>在宅の場で安全を担保した気管カニューレの交換を実践

患者・家族への丁寧な説明。地域の訪問看護師からの信頼も

70代男性で多系統委縮症のため人工呼吸器管理をしており、月に2回の訪問診療で、気管カニューレを交換している。
私も医師同行により、今回、研修で学んだ専門的知識や技術を活用して手順書の病態であることを判断した上で、患者さんと家族には、実施前に身体状況を正確に判断し今後予測されることについて説明すること、安全を担保した上で適切な手技で特定行為を実施することを説明した。
カニューレ交換時も丁寧に説明しながら実施することで安心感を持っていただけた。さらに、同行している訪問看護ステーションの看護師にも協働する意義を感じてもらえた。
また、訪問看護師が状況の判断や対応に困った際は、電話で相談に応じられることや医師への報告・連絡がスムーズに行えることで、地域の訪問看護師からの信頼を得ることに繋がっている。

今後の展望

退院後訪問指導を確実に行い、訪問看護師と同行することで、フィジカルアセスメントや臨床推論に基づく実践をしていきたい。
また、地域の看護師を対象とした研修会や事例検討会を開催し、地域の底上げも図っていきたい。

看護管理者の声

医師の協力により、安全に技術を磨く

訪問看護認定看護師として、特定行為研修を受講し「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」の特定行為を修得した。
現在、在宅で人工呼吸器を装着している神経難病患者の訪問診療に同行し、訪問看護ステーションの看護師とともに連携しながら患者支援している。
神経内科医である主治医の指示のもと、呼吸器関連のカニューレ交換を実施した。医師が側にいる状況で実践しており、その技術は安全に行え、患者・家族にも安心感を与えている。今後は手順書にそって実践できるよう、支援していきたい。

難病医療の拠点として、人工呼吸器装着患者の在宅生活を支える

地域包括ケアシステムが推進される現代において、認定看護師などの専門性の発揮、活動への期待は非常に大きいものとなっている。

当院では、病院機能の特徴から慢性疾患患者が多く、大分県重症難病患者医療ネットワーク拠点病院として、神経難病患者を受け入れていることから人工呼吸器管理患者が約100名、また在宅療養患者のレスパイト入院等、当院における訪問看護認定看護師への期待は大きい。
現在、院内では主治医を中心に行われているが、今後更に、在宅療養患者にむけた支援が必要と考えている。
当院にはまだ訪問看護部門がない中、地域医療連携室に配属し、院内外の関係者と連携しながら専門性を活かして活動している。
今回、特定行為研修を修了したことで、その知識・技術を大いに発揮できるような体制を整備し、難病患者が安心して在宅で療養できるように地域活動にむけて構築していきたい。

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