- ホーム
- 看護職の皆さまへ
- 労働と看護の質向上のためのデータベース(DiNQL)事業
- 参加病院の取り組み事例紹介
- DiNQLデータを活用した身体的拘束最小化の取り組み~身体的拘束平均実施日数の減少を目指して~(福井県立病院)
DiNQLデータを活用した身体的拘束最小化の取り組み~身体的拘束平均実施日数の減少を目指して~(福井県立病院)
病院概要
【所在地】福井県福井市
【病床数】744床
【DiNQL参加開始年】2016年
【参加病棟数】22病棟
参加した動機・きっかけ
看護実践を経験や感覚のみに依存するのではなく、データとして可視化し、分析を通して根拠ある実践および看護の質向上につなげたいと考え、毎年DiNQLデータを活用しています。精神科救急急性期病棟における身体的拘束は、患者の生命を保護し、重大な身体損傷を防ぐことを目的として実施される一方で、患者の尊厳や人権への影響、さらには身体的・心理的・社会的な弊害を生じさせるリスクも抱えています。こうした弊害は、身体的拘束の早期解除により最小限に抑えられる可能性があり、患者との関係構築や治療への受け入れにも良い影響を及ぼすと考えました。そこで、身体的拘束に関する看護実践を客観的に振り返り、データに基づいた改善を図ることを目的に、DiNQLに参加し実践に取り組むこととしました。
運用・活用について
精神科救急急性期病棟では精神保健福祉法に基づき精神保健指定医の指示のもと、隔離や身体的拘束を行っています。身体的拘束が必要な患者は、精神症状の急激な変化を来しやすく、解除の判断が難しいという現状があります。実際に、身体的拘束解除は医師の指示のもとに行われますが、看護師個々のアセスメント力が、患者の身体的拘束解除に向けたプロセスに影響するケースが少なくありません。DiNQLデータでは、2023年度の「患者1人あたりの身体的拘束平均実施日数」は10.4日と、全国の同機能病棟と比べると約2日短いものの、依然として長期化していました。そこで、「DiNQLデータを用いて、身体的拘束平均実施日数の減少に効果的な取り組みの示唆を得る」ことを目的とし、2024年度の病棟目標を「身体的拘束平均実施日数を8日以内」と設定しました。
具体的な実践内容
1)データの可視化と目標の共有
DiNQLデータの分析では、75歳以上の患者割合が同機能の中央値より約10%高く、高齢・認知症患者へのケアや転倒防止対策が課題であることが示唆されました。一方で、身体的拘束患者割合や患者1人あたりの身体的拘束平均実施日数は中央値より低く、病棟スタッフには「拘束日数を減らそう」という意識を持って取り組んでいることが伺えました。
これらの結果を踏まえ、身体的拘束に関するDiNQLデータと病棟の行動目標を掲示して可視化しました(図1)。さらに、朝の申し送り時間に医師を含めた多職種で読み合わせ、常にスタッフ全員が共通認識を持てるように工夫をしました。
図1:身体的拘束に関するDiNQLデータと病棟の行動目標
2)身体的拘束の最小化に向けた教育と意識づけ
スタッフ同士で身体的拘束に対する考えや思いを共有し、意識の変化を促すことを目的に、身体的拘束の最小化に関する抄読会を開催しました。また、75歳以上の入院患者の割合が高いことから、高齢者や認知症患者に対して「身体的拘束に頼らないケア」を実践できるよう、認知症看護認定看護師によるパーソン・センタード・ケアに関する勉強会を実施しました。
取り組みの効果
身体的拘束平均実施日数は2023年度10.4日から2024年度6.2日に低下しました。また、身体拘束患者割合は14.4%から8.5%まで低下し(図2)、病棟目標であった「平均実施日数8日以内」は達成されました。
今回の成功の要因は、「可視化」「共通認識」「教育」の三つの柱で進めたことと考えています。DiNQLデータや病棟目標、行動目標の掲示は客観的評価を可能にし、スタッフのモチベーション維持につながりました。医師を含めた多職種による行動目標の読み合わせは、日々のケア目標を統一し、身体的拘束の短期化や回避に向けた共通の意識づけを促しました。抄読会や勉強会による教育は、知識や視点の共有を促し、看護の質向上に寄与しました。これらの取り組みを通じて、達成可能な目標を設定することが看護師の成功体験となり、自己効力感の向上や自信の強化につながりました。
身体拘束平均実施日数は、10.4日から6.2日に減少
身体拘束患者割合は、14.4%から8.5%に減少
図2:身体的拘束に関するDiNQLデータの時系列推移
今後に向けて
可視化や共通認識、教育といった取り組みは、身体拘束平均実施日数の減少に一定の効果が期待できると考えられます。今後は、今回の取り組み(可視化・チームでの共通認識・教育)を継続し、さらに発展させることで、身体的拘束に頼らないケアを職場の風土として根づかせていく必要があります。
(2026年2月9日掲載)

