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協会ニュース2025年5月号
令和8年度 診療報酬改定要望書を提出
~看護職員の処遇改善と看護管理体制の強化を!~
令和8年度診療報酬改定は、2040年ごろの社会を見据えて取りまとめられた「新たな地域医療構想」の考え方に沿うものとなる。医療従事者の確保が厳しくなる中で、医療機関・訪問看護事業所がそれぞれの機能を発揮することで、入院医療から外来・在宅医療、介護との連携を推進し、地域で質の高い医療提供体制を維持することが強く求められる。あらゆる場において看護機能を発揮できる体制構築とその評価が不可欠であり、5月13日に厚生労働省の鹿沼均保険局長宛に診療報酬改定に関する以下の要望書を提出した。
すべての看護職員の処遇改善
物価高騰・賃金上昇に対応するための診療報酬における財源確保を強く要望し、すべての看護職員に対し、他産業並みの賃金引き上
げを求めた。併せて、夜勤体制の確保として、看護職員・看護補助者の夜勤手当の増額につながる対応も要望した。
医療・看護の質向上や連携強化に向けた看護管理体制の強化
医療と介護の連携や多職種連携、タスク・シフト/シェア、ICT活用、サービスの質向上などへの取り組みの強化が求められており、
看護管理者への期待は非常に大きい。地域全体を見渡しながら、これらの取り組みを円滑に推進するため、看護管理機能の強化に対す
る評価を要望した。
密度の高い診療における状態悪化の予防と生活機能回復に向けた支援強化
複数の疾患を抱える高齢者が手術や高度な治療を受ける際には、頻繁な観察とアセスメントのもと、状態悪化を防ぐとともに、手術や治療によって低下したADLや機能の回復に向けて、起居動作、移動、食事など生活行動の中での自立支援が重要になる。入院診療計画と生
活機能回復に向けた支援計画を含む看護計画との全体を俯ふ瞰かんしながら、多職種連携の推進と調整を行う、病棟管理機能の強化を要望した。
外来における在宅療養支援、オンライン診療(D to P with N)の推進
前回改定で、日本看護協会が実施した多施設共同研究の成果をもとに、外来における慢性心不全患者に対する支援について在宅療養指導料の算定が可能となった。しかし、退院後1月以内の外来受診や、過去1年以内の入院歴に関する要件が現状に合致せず、算定できない実態があるため、算定要件の見直しを要望した。また、2040年に向けて通院困難な患者が増えると想定されることから、オンライン診療の推進が重視されており、D to P with Nにおける看護の役割・機能が適切に評価されるよう要望した。
訪問看護、看多機の機能強化と、医療・介護連携の推進
24時間体制で在宅医療を地域で支えるためには、複数の訪問看護事業所による連携・協力の推進が重要になる。また、退院直後の時期を集中的に支え、円滑な在宅療養への移行を支援するために、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の「泊まり」利用の推進に向けた要望を行った。さらに今後は、医療と看護の連携強化が強く求められるため、医療機関などから専門性の高い看護師が介護施設や自宅などに訪問し、相談・支援を実施している実態について、診療報酬上の評価を要望した。※要望事項の詳細はこちら
DiNQLデータが検討プロセスに大きく貢献!
看護に対する評価を求める際にはエビデンスデータが必要になる。診療報酬改定の議論では、新たな評価を求めるだけではなく、看護
職員配置や重症度、医療・看護必要度など、現状を「守る」ことも重要になる。DiNQLは看護職員配置と看護実践、アウトカムを示すこ
とのできるデータベースであり、周術期管理や療養病棟における夜間看護提供体制、外来看護職員配置などの改定要望ではさまざまな角
度からDiNQLデータを分析し、議論を深めた。多くの病院が参加し、大規模なデータベースになることで、エビデンスデータとしてより大きな力を発揮できるため、ぜひDiNQL事業へ参加いただきたい。
さらなる評価の拡大に向けて! 慢性心不全患者に対する多施設共同研究の結果を日本循環器学会で発表
本会では2年間にわたり、65施設との共同研究を実施し、慢性心不全患者に対する外来における在宅療養支援のエビデンスを構築してきた。その成果をもって診療報酬での評価を実現したが、患者のセルフケア能力の維持・向上を図り、地域でその人らしく暮らし続けるための支援強化は引き続き重要であり、さらなる評価拡大を目指している。そこで、看護への理解を深め、効果的なチーム医療が実現できるよう、多くの医療職が一堂に集った第89回日本循環器学会のLate Breaking(Clinical Trials)において、多施設共同研究の成果を神戸大学大学院保健学研究科看護学領域の宮脇郁子教授が代表して発表した。質疑応答では、心不全と診断された初回入院患者に対する退院後の支援も重要であるとの発言があり、今回の改定で本会が要望した算定要件の見直しと同じ認識であることが共有された。引き続き、政策実現に向けた取り組みを行っていく。
医療・介護・福祉の現場を守る緊急集会
医療従事者の賃金上昇につながる財政支援を
4月18日、参議院の有志議員と医療関係団体は「医療・介護・福祉の現場を守る緊急集会」を開催し、700人以上が参加した。この緊急集会では、物価・賃金上昇に診療報酬・介護報酬等の改定が追いついておらず、医療・介護・福祉の提供体制の維持等が危ぶまれる状況を訴え、対応を求める提言を決議した。
医療・介護・福祉関係団体の代表9人による決意表明で、本会の高橋弘枝会長は「国民のいのちをまもるには、まずは人材確保、十分な賃上げが絶対に必要。職責に見合った処遇のもと、やりがいを持ち、現場で働く一人ひとりが、安全に、健康に働き続けられるよう、共に声を上げよう」と訴えた。決意表明の後、石田昌宏参議院議員が、国民の命と現場を守るための提言の決議を採り「これからさらに強く活動し、何がなんでも医療・介護・福祉の現場を守る」と述べ、熱気あふれる緊急集会となった。
同日、有志議員と高橋会長を含む医療関係団体の代表10人は、首相官邸を訪問。石破茂首相と面会し、緊急集会で決議した提言により申し入れを行った。石破首相は、現場の厳しい状況に理解を示すとともに「提言を踏まえて、政府としても可能な限り対応をしたい」と応じた。