協会ニュース2024年4月号

令和6年度 通常総会 
今こそともに、国民への良質な看護提供を

日本看護協会 会長 高橋 弘枝

はじめに

早いもので会長就任から1年がたとうとしています。この間、福井前会長から引き継いだバトンを握りしめ、無我夢中で取り組んでまいりました。国政に対峙し看護の政策を進めていくことは困難な場面も多くありますが、達成できた時に多くの看護職に良い影響を及ぼすことができることは自身の励みとなります。看護職の皆さまが、それぞれの場で看護の力を遺憾なく発揮できるよう、2年目に向け決意を新たにしています。
能登半島地震の被災地では、3カ月経った現在も7,000人を超える方々が避難所で過ごしておられます。被災された皆さまが一日も早く日常生活を取り戻せることを心より祈念申し上げます。またこの4月からは、国による広域派遣や養成・登録の仕組みが開始され、法律の下、より安全に災害支援ナースが活動できる環境が整いました。新興感染症への対応も含め、今後、より一層の活躍が期待されます。そして引き続き、看護が必要なところへ適切な支援を安定的に届けられるよう、取り組みを推進してまいります。
この1年の大きな成果としては「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針(以下、基本指針)」の告示があります。改定後の基本指針は、2040年を見据え、量と質、両面からの看護提供体制の確保と共に、各課題を改善、解決に導くものとして活用が期待されます。特に基本指針の中でも重要なテーマである資質の向上については、主体的な学び、キャリア形成を通したさらなる役割発揮が重要です。本会が昨年6月に公表した「看護職の生涯学習ガイドライン」などもご活用いただきたいと思います。
社会の状況が変化する中、看護職一人ひとりが専門職としてさらに磨きをかけていくことは、人々の健康な生活の実現に貢献します。看護職が最も頼りになる存在として人々を支え、あらゆる場において活躍できるよう、皆さまからの現場の声を大切に、着実に歩みを進めてまいりたいと思います。

看護人材のより一層の活躍に向けて

将来にわたり看護提供体制を量と質の両面から確保するため、令和6年度内にデジタル改革関連法に基づく看護職の人材活用システムが開始されます。免許取得時の登録申請や現行の業務従事者届のオンライン化など、利便性が高まると共に、将来的に人材の確保に資することが期待されます。
本会では、この仕組みを量的な人材の確保にとどめず、看護職一人ひとりの資質向上やキャリア構築に役立つものにしたいと考えています。そこで今後、自分のキャリアに関する情報を一元的に管理・活用できるポータルサイト「NuPS(Nurse Portal Site):ナップス」の開設を予定しています。NuPSは、情報連携の同意の下、自身の職歴や自己研さんの記録を電子情報で便利に管理できるサイトです。研修履歴を含む経歴の蓄積は、転職・復職時やスキルアップに役立ち、専門職としてのキャリアを豊かなものにすることにもつながります。ご自身のキャリア形成のツールとしてぜひご活用いただきたいと思います。
また、かねてより本会が要望してきた看護職員の処遇改善については、令和6年度の診療報酬改定において、全ての看護職員への賃金ベースアップ加算が創設されました。一昨年の看護職員処遇改善評価料の新設は、対象が限定されていただけに(全就業看護職員の約3分の1)、今回の加算創設において、その対象を全ての看護職員に拡大できたことは一歩前進といえます。十分とは言い難いものの、国の厳しい財政状況の中、手当がなされたことは、国民からの看護への評価と期待が高いことの表れでもあるといえます。現場においてはこれら賃金引上げ策の活用に向けた積極的な行動と共に、本会が公表し推奨する「看護職のキャリアと連動した賃金モデル」も参考に、多様な働き方をしながらやりがいを持って仕事ができる環境づくりを進めていただきたいと考えます。

重点政策・重点事業

令和6年度は3年スパンの最終年として、昨年度の4つの重点政策(本紙3面)を踏襲するとともに、進捗状況の評価結果や社会状況の変化への対応を盛り込んだ重点事業に取り組みます。医療機関から在宅へと、療養の場がシフトしていることを踏まえ、それぞれの場にふさわしい看護の機能や職員配置、施設や職能を超えた看護の連携など、2040年に向けた看護提供体制のあり方の全体像の策定に取り組みます。また看護補助者の確保・定着の推進、資格3制度における資格認定者の増加に向けた方針の明確化についても力を注ぎます。そして看護の現場で看護職が最善のケアを実践するために大きな役割を担っている看護管理者については、基本指針でも資質の向上が明記されました。看護管理者には、看護職一人ひとりのスキルアップやキャリア継続を支援する要として、また自組織の改善のみならず地域における連携の要として、その役割を発揮することが求められています。組織を超えて、看護を必要とする人々の健康と QOLの向上に大きく関与するという責務を果たせるよう、看護管理者の育成に関し、その取り組みの充実を図ってまいります 。

おわりに

令和6年度は、2040年を見据えた「看護の将来ビジョン」を策定する年となります。2015年からのこの10年間、日本の医療・看護はいくつもの大きな変革を遂げてきました。病院完結型から地域完結型へという医療の流れは今や当然のものとなりつつあり、その中で看護の役割は大きくなる一方です。新型コロナウイルス感染症のパンデミックなど想定外の事態の中でも進んでこられたのは、現ビジョンの示す方向性が変化に耐えうる確固たるものであったからでしょう。次なるビジョンも、看護の根幹となる部分を見失わず、看護職一人ひとりが今以上に輝き、自信と誇りを持って国民に看護を提供できるよう、皆さまと共に作ってまいりたいと思います。引き続きのご協力をよろしくお願い申し上げます。

本紙(4月号)の送付部数

本紙(4月号)は、各会員所属施設の前年度の会員数に基づいた部数をご送付いたします。

2024年「看護の日」イベント「かんごちゃんねる」

これから看護の道を目指す若い皆さんに、看護の魅力を伝えるトークイベントを開催します。「忘れられない看護エピソード」表彰式や、最優秀賞を基に制作したアニメーションを公開します。
【日時】5月12日(日曜日)14~16時
【会場】WITH HARAJUKUホール
【参加/視聴方法】会場参加/①LINEからの申し込み②メールでの申し込み
オンライン視聴/事前申し込みはありません。当日、本会HPまたはYouTubeチャンネルでご視聴いただけます。
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