協会ニュース 2023年5月号

G7広島サミットおよび長崎保健大臣会合への提言
国際的なUHC 実現のための保健医療従事者の支援と 日本および看護の貢献に向けて

日本が議長国となるG7広島サミットの開催に先立ち、長崎保健大臣会合が5月13・14日に開催された。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進が重要議題の一つとされ、本会は、UHCに大きく貢献してきた看護職の職能団体として、提言書の提出、関連行事への参画を行った。

G7広島サミットおよび長崎保健大臣会合

G7サミットとは、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7カ国および欧州連合(EU)の首脳が参加して毎年開催される国際会議だ。その時々の国際社会における重要な課題について自由闊達な意見交換が行われ、その成果は文書にまとめられ公表される。G7保健大臣会合は、関連閣僚会合の一つで、国際保健分野の諸課題について議論する。今回は、新型コロナウイルス感染症からの「より良い回復」を目指して、①公衆衛生危機対応のためのグローバル・ヘルス・アーキテクチャーの構築・強化②保健システムの強化を通じたより強靱、より公平、より持続可能なUHC達成への貢献③さまざまな健康課題に対応するためのヘルス・イノベーションの促進の3点を重要議題として取り上げ、議論がなされた。会議の成果はG7サミットでの議論に供される。

日本看護協会の取り組みと成果

1)G7での議論に向けた提言書の提出

日本において、UHCの下で高齢化に対する課題解決に取り組んできた経験・知見とコロナ禍での課題対応の経験を踏まえ、岸田文雄内閣総理大臣と加藤勝信厚生労働大臣宛の提言書「よりよいUHC実現のためのレジリエンスの高い保健医療提供体制の確立」を提出した(2月21日、福井トシ子会長が厚生労働省富田望大臣官房総括審議官〔国際担当〕に手交)。G7がリーダーシップを示すべき事項として、①UHCの実現・拡充のための保健・医療サービスの支え手の確保②より効果的・効率的な保健・医療システムの確立(イノベーションの推奨)③よりよいシステムに向けた保健・医療への投資の拡充の3点を示した。富田総括審議官らと量と質、両面からの人材確保の必要性について意見交換し、UHCに向けたアクションプランでは医療従事者の確保が柱の一つとなることを確認した。

【ニュースリリース】内閣総理大臣・厚生労働大臣宛て文書を大臣官房総括審議官へ提出

2)国際看護師協会(ICN)と日本看護協会共同声明の発出

5月11日には、ICNとの共同声明を発出した。これは、上述の本会提言書の内容に共鳴するものであり、加えて、平和を支えるという観点からも看護職の役割に言及するものとなった。声明の発出に際し、ICNパメラ・シプリアーノ会長および福井会長は、ビデオによるメッセージを寄せ、UHCの実現に向け両者が一層連帯し、リーダーシップを発揮することを述べた。共同声明の全文とビデオメッセージは以下を参照。

【ニュースリリース】G7首脳・保健大臣に向けICNと共同声明を発出

英語・ビデオメッセージ

3)G7長崎保健大臣会合における付設展示会への出展

長崎県の出島メッセで行われたG7長崎保健大臣会合の付設展示会においてブースを開設し、日本の看護およびUHCの維持・充実に対する本会の主張や取り組みについて、参加者と意見を交わした。ブース展示に当たっては、長崎県看護協会から被ばく看護の記録映像資料などご提供いただいた。当日は、会合出席者(G7各国の保健大臣、政府関係者、欧州連合〔EU〕や東南アジア諸国連合〔ASEAN〕議長国およびG20議長国の代表者など)およびメディア関係者、出展者などが参加した。13日午後には各国大臣や会議出席者が展示会場を訪れた。本会ブースでは、看護職をはじめとする保健医療専門職への支援、投資の必要性をアピールし、参加者と意見を交わした。この中で、カナダ保健大臣らは、保健医療従事者はUHCの要であるとし、自国でも看護職の確保が課題となる状況に対し、日本の潜在看護職の復職支援の取り組みを評価した。英国の大臣らも日本の看護職確保の取り組みに関心を示し、長期的な確保の見通し、潜在看護職の復職数の目標などを確認した上で、人口動態が類似する日英で課題解決の知恵を共有したいと述べた。インドネシア代表とは、コロナ禍での看護職のメンタルヘルスへの影響について意見を交わした。また、多くの国の代表者が政策推進に関わる看護職能団体に対する関心を示した。

2023年5月号1面1展示物の画像

2023年5月号1面2アテンドの様子

加藤厚生労働大臣もブースを訪れ、保健医療従事者支援は重要な議論の一つである旨を述べた。会合終了時には「G7長崎保健大臣宣言」および「G7UHCグローバルプラン」が採択された。これらには、既知の課題も含め、保健医療全般にわたり今後必要な取り組みが記載された。G7が主要7カ国による世界全体を見据えた議論の枠組みであることから、他国支援のリーダーシップがその主軸となるが、前提としてのG7各国における課題解決についてもしっかりと言及されている。保健医療従事者の確保と支援、保健医療への投資、保健医療システムのイノベーションという本会提言とも合致する内容にG7各国が合意したものであり、今後、本会が看護政策を推進していく際のよりどころになり得る。全文にわたって、プライマリ・ヘルス・ケアの優先性に言及されている点についても看護の本質との親和性が高く、一方で新規性の高い領域としては、国際的な枠組みでデジタル技術を活用した個々の健康情報の集積を進め、保健医療の実践の場での活用のみならず、エビデンスに基づく政策的な意思決定を推進するとされており、今後の動向を注視していく。

2023年「看護の日」イベント

看護学生が看護師に密着取材
看護の専門性や魅力、プロとしてのやりがいを語る

2023年の看護週間の初日に当たる5月7日に、将来に向けさまざまな選択肢を持つ若年層を中心に、看護職が地域や医療現場で活躍する姿を知ってもらうため、“いのちをまもるプロとして。”をテーマに、2023年「看護の日」イベント「かんごちゃんねる」を開催した。

ことしのイベントは、MCを昨年に続きハリー杉山さんが務め、第1部では、イベントのスペシャルサポーターとして俳優の窪塚愛流さんが登場。看護職を目指す学生にエールを送ったほか、「看護の日」キャラクター・かんごちゃんと一緒に「47都道府県かんごちゃん」を披露しながらトークセッションを行った。また「忘れられない看護エピソード」表彰式では、受賞作品が発表され、優秀賞、内館牧子賞作品の朗読、最優秀賞作品を基に作成されたアニメーションが初公開された。

第2部では、看護学生が医療機関や在宅・施設で働く看護職の活動現場を訪問した取材VTRを上映。その後のトークセッションでは、実際の仕事の内容やプロとしてのやりがい、看護の専門性や魅力を語り、最後に看護職を目指す学生に応援メッセージも送られた。

イベントのアーカイブ映像と「忘れられない看護エピソード」最優秀賞作品のアニメーションは、下記でご覧いただけます。ぜひご覧ください。

「看護の日・看護週間」イベント