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協会ニュース 2022年7月号
新たな「生涯学習支援体制」の姿とは 8月にパブリックコメント募集
日本看護協会は、2020年より、生涯学習支援体制の検討を、看護師に焦点化して進めてきた。今後は、看護師に求められる能力等の策定と共に、看護職全体を対象としたガイドラインの策定にも取り組む。
看護職が学び続ける必要性
人々の医療・看護へのニーズや価値観が多様化すると共に、働く施設や領域を変えつつ年齢を重ねても働き続ける看護職が増えている。社会のさまざまな変化に対応して、人々に質の高い・適切な医療・看護を提供し看護職として活躍し続けるためには、専門職として生涯にわたり学び続けることが求められる。学び続けることは看護職の責務でもあり、保健師助産師看護師法や看護職の倫理綱領に明記されている。
「看護師の生涯学習」の考え方
これまで我が国では、終身雇用等の長期かつ安定した雇用状況を背景に、看護師を雇用する組織(医療機関等)が個人の能力開発を主導することが主流であり、本会も、組織の教育体制の基盤強化を主に行ってきた。
しかし、人生100年時代が到来し、個人が働くことを通じて活躍し続けるためには「『自らのキャリアはどうありたいか、どのように自己実現したいか』を意識し、納得のいくキャリアを築くための行動をとる」という、キャリア・オーナーシップを持ち、自律して学習や能力開発に取り組むことが、これまで以上に重要になっている。つまり、看護師一人一人が、自らの望むキャリアを考え、主体的に必要な学習や経験を選択する必要がある。
そこで、本会は、看護師個人を学習の主体者とし、専門職として学び続ける重要性を強調した「生涯学習」の用語を主に使用して、今後の看護師の生涯学習支援体制構築を図る。看護師の生涯学習の目的は「看護師の能力の開発・維持・向上により、国民の健康に寄与すること」と位置付ける。
同時に、看護師を雇用する組織や、看護師を対象とした研修等を行う組織による、学習支援も引き続き重要であることから、組織等が行う「継続教育」を、看護師の生涯学習を支援するものと位置付け推進する。
看護師の生涯学習支援体制構築の目的
本会が行う看護師の生涯学習支援体制構築の目的は、「看護師が、学習したことを実践に活かし能力を向上させることで、看護提供を通じて国民の健康に寄与するための体制を構築する」ことである。この目的達成に何が求められるかという観点から、さらに具体的な3つの目的を整理の上、方策を検討した。
日本看護協会の行う看護師の生涯学習支援体制の構築の目的
看護師が、学習したことを実践に活かし能力を向上させることで、看護提供を通じて国民の健康に寄与するための体制を構築する
目的① | 指針・指標の明示により、看護師が、自ら必要とする学習内容を選択し、自律的に学ぶことを支援する |
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目的② | 看護師が、働く場や領域、居住する地域等を問わず学習できる機会を提供する |
目的③ | 学びや経験の蓄積を可視化し、看護師個人のキャリア形成を支援する |
目的①必要な学習内容を選択し、自律的に学ぶことを支援する
看護師が自律し、主体的に生涯学習に取り組むためには、看護師として、何を・どのように学ぶ必要があるかという標準的な指標が明確になっている必要がある。
そこで、ガイドラインを新たに作成し、保健師・助産師・看護師・准看護師の全ての看護職を対象に「生涯学習」の方向性や考え方を示す。このガイドラインには、看護職を雇用する組織の看護管理者・教育担当者や、看護職を対象とした研修を行う者等を対象とした内容も掲載し、看護職の自律的な学習とキャリアの支援を行う際の指針を示す。
加えて、看護師については、国際看護師協会(ICN)による看護師のコンピテンシーの枠組みを国際標準として参照、網羅した「看護師に求められる能力」の全体像と、その能力に基づく学習項目と習熟段階(ラダー)を併せて示す。これらを指標として活用し、どんな学習や経験が自分に必要か考え、生涯学習に取り組むことができるようにするためのガイド(仮)も検討する。
目的②働く場や領域、地域等を問わず学習できる機会を提供する
個人の居住地域や働く組織・領域、就業状況等に関わらず、必要に応じて、看護師としての能力の維持や知識のアップデートのために学習しやすい環境が整っていることは、非常に重要である。
そこで、本会は、研修に限らず、多様で質の高い学習機会に全国どこからでもアクセスできるよう、さまざまな関連機関との連携を強化すると共に、日本看護学会や日本看護協会図書館等の生涯学習関連の事業の充実を図る。本会の主催研修についても、内容や範囲等を検討の上、引き続き提供する。
目的③学び等を可視化し、キャリア形成を支援する
生涯学習を効果的に行うためには、自分自身の学習や経験を振り返った上で、次にどのような学習や経験が必要か考え実行に移すと共に、迷ったときには他者に相談することが重要である。そのためには、学習や経験の積み重ねの可視化が必要である。そこで、ポートフォリオのように看護師個人の職歴や研修受講履歴を蓄積・可視化し、主体的な学習や就業の継続を支援するシステムを構築する。また、学習や経験の積み重ねを認証する必要性や、在り方を検討する。
今後の予定 — 8月にパブリックコメント実施!
「看護師に求められる能力/学習項目/習熟段階(ラダー)」と、生涯学習のガイドラインは、2023年度の公表を予定している。
それに先駆けて、本年8月頃に「看護師に求められる能力/学習項目/習熟段階(ラダー)」のパブリックコメントを実施し、暫定版について全国から意見を募集する。寄せられた意見を踏まえ、修正を加えたものを公表する。ガイドラインについては、今秋頃にパブリックコメントの実施を予定。詳細は順次、本会ホームページに掲載する。