協会ニュース 2022年5月号

タスク・シフト/シェアを看護の専門性の発揮の機会に!!「ガイドライン及び活用ガイド」6月公表予定

日本看護協会は、2022年6月に「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン」を公表する。本ガイドラインの活用により、多くの施設において看護師がより専門性を発揮し、患者のニーズによりタイムリーに応えられる体制が構築されることを期待している。

看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド
目的
医療機関において医師の働き方改革が進められる中でも、看護師のさらなる専門性の発揮により、国民に必要な医療が安全かつより一層タイムリーに提供されるよう、看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアの取り組みを進める上で重要となる基本的な考えを示す
本会の基本的な考え方
  • <医師と看護師の間>
    • 法令等で定める看護師の業務範囲や医師の指示について理解し、看護師の専門性のさらなる発揮に向けて裁量を活用する
    • 包括的指示の活用にあたって、求められる能力に応じた必要な教育を実施する
  • <医師以外の職種と看護師の間>
  • 共に働く他職種の業務範囲や業務を実施する際の指示等の要件を理解・共有し、看護師がその専門性を要する業務に専念できるようタスク・シフト/シェアを推進する

国では、医師の業務量を削減することを目的に、医師から他職種へのタスク・シフト/シェアの検討が進められてきた。しかし、本会では、これまで医師が行っていた業務を、単に他職種にシフトするだけでは、他職種の負担が増えるだけであり、組織全体の業務の効率化が重要だと主張してきた。現場では、医師の指示を待つために、もしくは、ようやく夕方に出された指示に対応するために、看護師の時間外労働が発生している。医師の指示の在り方を整理し、効率的な指示の活用・運用を推進することは、「医師・看護師の業務の効率化」はもちろん「患者へのよりタイムリーな対応」も可能にする。そこで、本会では、患者の最も身近な医療専門職である看護師が、患者の状況やその変化に応じて、対応できるよう、医師の指示の在り方の整理を求めてきた。その結果、指示についての整理がなされ、特定行為研修を修了した看護師に限らず、看護師への包括的指示の活用推進が国から示された(厚労省医政局長通知「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」医政発0930第16号・令和3年9月30日)。

専門性のさらなる発揮に向け“指示”の再確認を!

医師の指示
具体的指示

実施に伴う様々な判断を行う必要がないよう、できるだけ詳細な内容をもって行われる指示(例:5月13日17時に△△さんに◇◇(薬剤名)を5mg静脈注射により投与)

包括的指示

具体的指示以外のすべての指示看護師が患者の状態に応じて柔軟に対応できるよう、医師が患者の病態の変化を予測し、その範囲内で看護師が実施すべき行為を一括して指示すること

医師の「具体的指示」がなければ医療行為を実施できない医療専門職も少なくない中、看護師には「包括的指示」が認められており、患者の状態に応じて対応する裁量が認められている。本会では、包括的指示の活用を推進することで、看護師がこの裁量を存分に活用し、さらに専門性を発揮していくことを期待している。一方で、看護師が判断する範囲が広がれば、看護師に求められる能力や責任も大きくなる。そのため、各施設においては、包括的指示を活用する際に必要な知識・技術・判断の能力を明確にし、教育を行ったり、業務実施体制を構築するなど、医療の質と安全を担保できる体制整備が求められる。

本ガイドラインでは、これらの内容を詳しく解説する他、看護師と医師以外の職種とのタスク・シフト/シェアについての本会見解も示している。また、第2部の活用ガイドで取り組み事例も紹介している。ぜひ活用いただきたい。

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