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協会ニュース 2021年1月号
全ての看護職に敬意 新型コロナは、看護の力を社会が再認識する機会に
【年頭所感】
日本看護協会会長 福井トシ子

2021年の年頭にあたり、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
新型コロナウイルス感染症との闘いの中での年明けとなりました。何にも増して、現場の最前線で尽力されている全ての会員、看護職の皆さまに心より敬意を表します。また看護職のご家族の皆さまにお礼申し上げます。新型コロナウイルス感染が拡大・長期化していることで、医療現場では、極めて緊迫した状況が続いています。看護職をはじめとする現場の医療従事者には、業務の負担だけでなく精神的なストレスが重積しています。疲弊する看護職の過酷な労働環境を少しでも改善すると共に、人員を確保し、医療提供の継続性を担保することが必要です。日本看護協会では引き続き、国や都道府県看護協会と連携し、医療の現場、介護の現場、地域のさまざまな場所で新型コロナウイルス感染症と対峙する皆さまが、安全が確保された中で安心して力を発揮できるよう、また、国民の皆さまに必要な医療・介護が途切れることなく提供できるよう、取り組んでまいります。
今般の経験からさまざまな政策課題が明らかとなりました。本会の調査では第1波の時点でも、看護職の離職が病院全体で15.4%、感染症指定医療機関などでは20%を超えていました。最前線の看護職が辞めずに働き続けられることが重要です。医療現場によっては、ボーナスカットや、清掃・洗濯を看護職が対応する例もあるため、医療体制の整備、医療人材や物資の確保などへの対応を強化しております。
看護職の確保では、都道府県看護協会が都道府県から要請を受け、本会を通じ、県外から看護職の応援派遣を行う仕組みを整備しました。また約5万人の潜在看護職に復職を呼び掛け、2,100人を超える皆さまが復職し活躍しております。しかし、看護の有資格者全員の所在や職歴などを把握できる仕組みがあれば、もっと広い範囲で復職のお願いもできたはずです。国にはこのような仕組みの制度化を要望してまいります。
さらに、調査結果では、感染領域の認定看護師と専門看護師のみならず、専門性の高い看護師が全ての領域で活躍していました。新型コロナウイルス感染症対応だけではなく、今後の医療機能の強化に向け、認定看護師、専門看護師の養成を推進してまいります。
さて、昨年は、感染管理の礎を築いたフローレンス・ナイチンゲール生誕200周年にあたり、看護師・助産師の国際年でもありました。現在、世界中でNursing Nowキャンペーンが展開されています。本会は、「看護の力で健康な社会を!」をテーマに掲げ、日本看護連盟をはじめとする30の看護関係団体の参画と13の医療関係団体等の後援を受け、SDGs(持続可能な開発目標)とひも付けた獲得目標を掲げてこのキャンペーンを行っています。新型コロナウイルス感染症の拡大は、図らずも、看護の力・価値を看護職自身が、また社会が再認識する機会になりました。看護の価値を全ての人々に理解してもらい、看護が持つ力を最大限に発揮することを目的とする本キャンペーンを力に、国民の皆さまの健康に貢献してまいります。
新型コロナウイルス感染が収束しても、地球環境の変化や気候変動などは、私たちにさらなる試練を与えるかもしれません。看護職の持つ力をいかんなく発揮し、いかなる状況でも、ともに乗り越えられるように、皆さまと共にあることをお約束し、新年のごあいさつとさせていただきます。