会長の手帳(日本看護協会 会長 秋山 智弥)

機関誌「看護」2026年6月号より

『風、薫る』と『ナースコール』
「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」キックオフにあたって

明治を舞台にした2人のトレインドナースの物語、NHKの朝ドラ(連続テレビ小説)『風、薫る』(※1)がいよいよスタートしました。相手の正しさを尊重するあまり自分の正しさを引っ込めてしまったことを「間違えた」と後悔する一ノ瀬りんの高潔さ、「正しいことは難しい」と諭す父信右衛門の優しさ、いい場面でした。主題歌(※2)もいいですね。特に、「苦手なものが平気になってさ、ちょっぴり寂しさを知る」「私は奇跡の愛で生まれて」のくだりが胸に染みます。

ところで、映画『ナースコール』(※3)はご覧になりましたか? 多重業務をこなしながらも一人ひとりの患者に個別に対応し、緊急コールにも対応する看護師のリアルな姿が見事に描かれていて、現場の大変さや過酷さと、でもそのもう一方にある、やりがいや誇りの両方を感じさせられるような、素晴らしい作品です。多くの看護師がこの映画を見て、看護師としての誇りを再認識してもらいたいと思いますし、多くの一般の方々にも見ていただいて、看護師不足の解消につながるような処遇改善、労働環境改善に向け、看護師への投資とエールを贈っていただければと願うばかりです。

さて、4月10日、「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」がキックオフしました。看護職に求められる資質の議論から開始し、養成・確保のあり方、需給推計へと進んでいきます。現在、看護学校は軒並み定員割れで閉校が続き、受験者の減少から入学者の質も落ちてきています。18歳人口が激減していく中で、一定の受験者数を確保するためには、看護師が魅力的な仕事に見られなければなりません。教育も実習ベースの教育を充実させなければ、経験によって培われる看護の能力は向上できず、根本的な見直しが求められます。

看護師の臨床判断能力には、①生まれ持った素養(人に関心があることや、相手の気持ちがわかることなど)、②身につけた専門的知識・技術、③分析・統合する力、④臨床経験、⑤新しい情報の5つが影響します。これは、OODA(Observe/Orient/Decide/Act)ループのOrient(腑に落ちる)というフェーズ(※4)と同じです。①では、アドミッションポリシーを明確にして学生を選抜する必要がありますし、②と③では、ディプロマ/カリキュラムポリシーを明確にして卒業時までに一定の能力を身につけさせる必要があります。そして、④と⑤は免許取得後の継続教育の義務化の必要性に関する内容です。

正しいことは難しい。ですが、今こそ量から質への転換をはかり、トレインドナースがやりがいと誇りを持って活躍できる看護の未来に向け、風を吹かせたいと思います。力強く、でも爽やかに。

※1 NHK朝ドラ(連続テレビ小説)『風、薫る』公式ホームページ
※2 Mrs. GREEN APPLE『風と町』(作詞・作曲:大森元貴)
※3 映画『ナースコール』公式ホームページ
※4 秋山智弥:VUCAの時代の問題解決にOODAループの活用を!, 看護, 77(2), p.54-57, 2025.

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