日本看護協会とは

会長の手帳(日本看護協会 会長 福井トシ子)

月刊『看護』2021年11月号より

コロナ禍における母子支援のための看護職のネットワーク強化

新型コロナウイルス感染症まん延も第5波がピークアウトしてきましたが、緊急事態下であることは変わらず、保健所や医療現場の業務過多は変わりません。新型コロナウイルス感染症のまん延が収束することを切に願っています。

妊産婦の感染対策が課題になっています。妊産婦は、自身が感染する恐怖をはじめ、生まれてくる子どもへの影響、家族への感染、濃厚接触者としての対応など、不安や苦悩が尽きることはありません。そのような中、新型コロナウイルスに感染した妊産婦が自宅分娩になり、早産児が死亡しました。

コロナ禍で、よりいっそう浮き彫りになった妊産婦の置かれている状況の課題解決には、スピード感をもった、地域資源、行政、医療機関の連携強化が必須であり、それには看護職の力が不可欠です。

医療提供体制が機能分化し役割分担が推進されればされるほど、分化された中で行き来する対象が存在します。行き来している状況を把握しているのも看護職です。看護職は各都道府県の周産期医療協議会をはじめとした母子にかかわるあらゆる会議体で、このような実情を伝え、解決のための意見を述べていく必要があります。

周産期医療や子育て支援における課題を一体的に解決することを目的に、都道府県看護協会等の関係者が集い、母子の置かれている現状をくまなく共有し、支援のあり方について検討が始まっているところです。今ある、周産期医療システムや母子保健サービスの仕組み、地域の資源を活用した妊産婦への支援の再構築や、支援を維持する仕組みの構築が急がれます。痛ましい事例報告があった後、各地域で看護協会等主催によるコロナ陽性妊婦への対応に関する緊急ミーティングや研修会が開催されています。これが今後も定例化して地域における出産・育児環境が整っていくことを期待しています。

看護職は、妊娠・出産のみならず、女性の健康、育児や家族支援など、女性とその家族の一生を支援する役割があります。コロナ禍で、その重要性が再認識された「日常的な健康管理」へのサポートをはじめ、「予防的な視点に立つ保健指導」がすべての看護職に求められています。また、病気や障がいを抱える母子が自立した暮らしができるように、「福祉」へつなげる役割もあります。さらに、医療の介入が必要になる妊産婦の増加に伴って、その状況へ対応できる、さらなる看護実践力も強化されなければなりません。

母子支援に取り組む保健・医療・福祉・教育等すべての関係者のネットワークを強固なものとし、地域の実情に応じた全世代型地域包括ケアシステムの実現に近づけていってほしいと思います。

  • この原稿は2021年9月21日に書きました