日本看護協会とは

会長の手帳(日本看護協会 会長 福井トシ子)

月刊『看護』2020年7月号より

新型コロナウイルス感染症院内感染報道に思う

新型コロナウイルス感染症に対応している医療職の士気が低下するような発言が気がかりです。「医療職は専門職なのになぜ、院内感染が起きるのか」というものです。医療職が批判されているようにも聞こえます。メディアの関心事も「院内感染がなぜ起きるのか」に遷移してきているように思います。新型コロナウイルス感染症が正しく理解されていないこと、医療環境がどのようになっているのか理解されていないことの表れではないでしょうか。

医療関係者の中でも看護職の感染者数が多いことを指摘されることがあります。これは、大変憂慮される状況ではありますが、看護職が最前線にいる証でもあるでしょう。そして、医療従事者の中で最も多いのが看護職であり、他の医療職とは、規模が異なるということに着目してほしいものです。

看護職は1日24時間365日、患者の受診時から入院中、急変時など、常に最前線で患者に対応するため、そもそも感染リスクが高い職種でもあります。

重症感染患者の場合、個人防護服で対応する必要があり、十分な防護服がない中でも、工夫をしながらやりくりしています。本会が把握している範囲では、このような重症感染患者へのケアを行っている看護職の感染は聞いていません。むしろ、一般病棟の患者対応での感染や、思いもかけないところからの感染のほうが多いことがわかっています。無症状でも感染するというウイルスの特徴から、業務中に避けられない状況があるのではないかということは容易に推察できます。N95マスクやサージカルマスク、防護具が不足しており、十分な感染防御策をとれない状況の中で、「自分自身が感染するのではないか」「他者へ感染させてしまうのではないか」などの不安を抱えながらの過酷な勤務状況もうかがえます。

無症状で感染を疑われていない患者の対応には、マスク不足等もあり、感染防御策が十分にとれない状況ですし、一般病棟では、フェイスシールドや手袋を常時、装着していることはないでしょう。そのようなとき、転倒しそうになった患者を抱きかかえるなどの患者の不意な行動に対応し、感染したのではないかという事例も聞いています。このようなウイルスの特徴から院内感染を防ぐ難しさがあると思います。

無症状の感染があることや、潜伏期間が長く、症状発現前にも伝染力があるなど、感染防御が難しいウイルスに対して、院内感染が発生した医療機関の状況から、今後の感染管理のあり方を検討することは必要でしょう。一方、今、院内感染がなぜ起きているのかを理解していただくことも必要です。院内感染が起きないよう、十分な防護具がない中で、精一杯の対応をしている医療者への偏見や差別をなくすことにつながると思います。