会長の手帳(日本看護協会 会長 福井トシ子)
機関誌『看護』2023年6月号より
看護の力で健康な社会を
この原稿は、4月3日に書いています。2017年(平成29)年6月に日本看護協会会長に選出していただいてから6回目の、そして最後の通常総会を6月7日に迎えます。3期6年という任期の間、看護職の皆さまに支えていただきながら全力で取り組んでまいりました。この間、後半の3年間は新型コロナウイルス感染症に翻弄される日々でした。未知なるウイルスと対峙する看護の実践の場、新たな看護職を育成する教育の場等、さまざまな現場の支援に奔走する中で、職能団体としての本会のraison d’être / 存在理由を実感することが幾度となくありました。現場の力や個人の力だけでは、解決できないことを代弁し、提案し、解決していく。それが私たちの仕事です。しかし、そのためには、盤石な組織基盤と政治との連携が不可欠です。これからはこの点をもっと強く、1人でも多くの看護職に伝えていかねばならないと考えています。
2019年初頭~2021年6月までは、Nursing Nowキャンペーンを行いました。このキャンペーンは英国の議員連盟の報告書を端緒に看護の価値への理解を深め、看護への投資を喚起するという極めて政策的な意味合いの強い目的を掲げたもので、世界の多くの国が取り組みました。日本では、本会を含め30の看護関係団体がキャンペーンに参加しました。横断的にこれだけの団体が協力して1つのことに取り組んだのはおそらく初めてのことではないかと思います。このようなプラットフォームは政策を推進するためにも有効であり、その点でも意味深いものでした。このキャンペーンでは、「Nursing Now ニッポン宣言」を合意、公表しましたが、その後の本会の活動、特に、エビデンスに基づく政策推進の体制構築への原動力になりました。
そして、2015年に公表した「看護の将来ビジョン」実現に向けても注力しました。2020年には中間評価を行うとともに、2025年以降の社会状況を踏まえた工程の見直しにも取り組みました。ビジョンの目標年となる2025年を目前に退任することになりますが、今年度から始まる最終評価、そして2040年ごろを見すえて策定されるであろう新たなビジョンの公表を楽しみに待ちたいと思います。
ポストコロナの時代、社会状況は大きく変わるでしょう。それでも、人々の健康と暮らしを支える看護の本質や役割は変わりません。健康に対するニーズは高まり、多様化します。これから私たちがすべきことは、これらのニーズに対して、看護の役割をよりいっそう果たすことだと思っています。看護の力で健康な社会を創造し、皆さまのその手で、その目で、国民のいのちをまもりましょう。
人々に最も近い医療専門職として、リーダーシップを発揮する看護集団になりましょう。
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