会長の手帳(日本看護協会 会長 高橋 弘枝)

機関誌「看護」2025年7月号より

看護職になってよかったと実感できる毎日を

日本看護協会会長に選出していただいて以降、国内最大の看護職能団体としての役割を果たすべく、私がいつも念頭に置いていたのは、国民の健康と暮らしを支えるため、今、このときも、さまざまな場所で看護を提供している看護職のあるべき姿です。24時間365日、昼夜を問わず、人々の命を守る看護職が、自身の仕事に愛情とやりがいと誇りを持って、生き生きと働き続けられる環境をつくり、看護の力で命輝く未来、健康で幸せな社会をつくることをめざして精一杯取り組んでまいりました。激動、怒涛の2年間でした。

特に印象に残っている業務のほんの一部をご紹介します。就任直後、厚生労働省の検討部会に参画して携わった「看護師等基本指針」(※1) の改定では、看護以外のさまざまな関係団体の意見も踏まえながら、国民や関係者の総意としてつくりあげるプロセスを通して、社会における看護の果たす役割の大きさ、これからの看護に対する国民の期待を再認識する機会となりました。また、ベースアップ評価料(※2) の実現には、厚生労働省の記者クラブでチーム医療の関係者とともに記者会見を行い、医療従事者の処遇改善を求めたことも大きく寄与したと思います。本会の使命は看護職個人やその現場では解決できないことに、組織として取り組んでいくことです。そして政策推進においてその使命を果たすには、組織力と政治とのタイムリーな連携が不可欠であることも、あらためて強く感じたことの一つです。

何よりうれしかったことは、このたび、本会が2015年に公表し、2025年に向けて取り組んできた「看護の将来ビジョン」の総括とともに、次なる節目となる2040年に向けて「看護の将来ビジョン2040」を公表できたことです。新ビジョン策定の過程では、現場の皆さま、都道府県看護協会、本会および各都道府県の職能委員会委員、そして看護職以外の有識者など、たくさんの方からご意見を頂戴し、そしてパブリックコメントでもさまざまな声をお寄せいただきました。多くの看護関係者の協力があってこその新ビジョンの完成に、あらためて感謝申し上げます。

新ビジョンにもあるように、これからの社会はさらに多様で新たな価値観が広がる可能性を秘めています。その中にあって私たち看護職が果たす役割も広がっていくでしょう。しかしそれらは自然に広がっていくものではありません。自ら考え、研鑽し、行動していく中でこそ、その可能性は現実のものへと変化していきます。未来をつくるのは、今現在の積み重ねです。看護職一人ひとりが日々の自身のウェルビーイングを大切にして、看護職になってよかったと実感できる毎日が送れることを何よりも願っています。大きく広がる看護への期待に応え、その役割を果たすため、今日からは新ビジョンの下、「人々のいのち・暮らし・尊厳を まもり支える看護」の実践をめざしてまいりましょう。

※1 看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針
※2 2024年度診療報酬改定における賃上げ

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