会長の手帳(日本看護協会 会長 秋山 智弥)
機関誌「看護」2026年7月号より
看護の心をみんなの心に
「看護の日」イベント・「忘れられない看護エピソード」を振り返って
ナイチンゲールの誕生日、5月12日は「看護の日」。「看護の日」は、市民と有識者による「看護の日の制定を願う会」(※1)がきっかけとなり、1990年、旧厚生省によって制定されました。呼びかけ人は、ご自身の体験とご家族へのエンドオブライフケアを通して看護の重要性を認識された中島みちさん。看護職への感謝の念から、「看護と看護婦が大切にされ、看護婦が日々生き甲斐に満ちて働けるような社会を作ることに微力を捧げたい」との願いに、日野原重明さん、柳田邦男さん、橋田壽賀子さんら多くの有識者が賛同され、実現に至りました。「看護の心が社会に根づけば、おのずから、看護婦の社会的地位も向上し、看護の場が魅力ある職場となりましょう。男女ともに、誇り高い職業としてナースをライフワークとする人々も増えるのではないでしょうか」と。
そして現在。2026年5月10日、連続テレビ小説『風、薫る』(NHK)で一ノ瀬りんを演じる見上愛さんをスペシャルサポーターとしてお迎えし、「看護の日」イベント『KANGO部』を開催しました(※2)。見上愛さんとのトークセッションの様子は、『風、薫る』最終週までYouTube「5月12日は看護の日」チャンネル(※3)で視聴できます。見逃した方は、ぜひご覧ください。
今年度「忘れられない看護エピソード」(※4)で優秀賞に輝いたのは、若杉英典さんの作品『靴を履かせる看護』。長年建設現場で働き、死ぬ前にもう1度靴を履きたいと願う90歳の患者さん。じん肺末期で呼吸困難が進行し、起き上がるのがやっとだったのに、気合いを入れて靴を履いた瞬間、背筋がピンと。人生の最期に、誇りに満ちた「自分らしい姿」を見せて旅立たれた患者さんの感動の物語。同じく優秀賞に輝いたのは、齋藤芳理子さんの作品『看護師としての財産』。脳梗塞で倒れ、嚥下機能が著しく低下していた患者さん。「口から、食べたい」という患者さんの執念にあきらめず伴走し続けた看護師の格闘の日々。自らスプーンを持ち、口に運び、嚥下できるまでに至った奇跡の物語。そして最優秀賞に輝いたのは、岡部卓也さんの『その言葉は、誰のため?』。白血病を患い、骨髄穿刺、髄液検査、繰り返される採血……と、つらい処置に泣き叫ぶ5歳の男の子。「大丈夫だからね」という看護師の声掛けに、「大丈夫って、何が?」と応える患児。この日を境に、患児への対応と説明の仕方を見直した真摯な看護師の気づきの物語。治療を無事に乗り越えたとき、看護師を待っていたのは患児の一言とその笑顔、「もう、だいじょうぶだよね」と。
看護という仕事の魅力は、一人ひとり異なる患者さんの人生に向き合い、伴走する中で得られる数多くの気づきにあると思います。その一つひとつの気づきが新たに巡り合う患者さんの人生をよりよく支える看護のヒントになっていきます。学びのない看護はありません。そしてその物語にははかりしれないケアのパワーが秘められています。看護を語り合う場が続き、看護の心がみんなの心となりますように。
※1 看護の日の制定を願う会
※2 「看護の日・看護週間」イベント JNA NEWS(p.42~43)参照
※3 YouTube「5月12日は看護の日」チャンネル
※4 「忘れられない看護エピソード」
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