会長の手帳(日本看護協会 会長 秋山 智弥)
機関誌「看護」2026年11月号より
第57回(2026年度)日本看護学会学術集会を終えて
自律した判断と実践、そしてAIと人間の違いとは
9月18日~20日の3日間、岡山コンベンションセンター・岡山県医師会館他(岡山県岡山市)にて第57回(2026年度)日本看護学会学術集会を開催しました。隣接するNHK岡山放送局では、全国最大規模の「連続テレビ小説『風、薫る』展in岡山」が同時開催され、また、文字通り晴れの国の恩恵にもあずかり、4,500人を超える多くの看護職の皆さまに全国からご参加いただきました。加えて、学術集会に協賛・共催いただいた71の企業・団体の皆さま、そしてNHK首都圏局・岡山放送局の皆さまの多大なるご支援、ご協力の下、盛会裏に終えることができました。
本学術集会のメインテーマは、「新たな未来を拓く看護の挑戦~専門職としての自律した判断と実践~」でした。専門職としての“自律”とは、「外部のコントロールを受けることなく行為を選択し、規範に従った職業上の意思決定を自らが行うこと」(※1)を意味します。
基調講演では、看護職の意思決定の拠りどころとなる3つの規範(法令、業務基準、倫理綱領)について解説した後、自律した看護実践のモデルとして、私自身が1993年に米国ボストン・ベス・イスラエル病院(現ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター)で学んだプライマリ・ナーシング(※2)を紹介しました。また、帰国後に自ら実践したプライマリ・ナーシングの事例(※3)を通して、専門職としての看護師の3つの役割モデル(患者/家族の擁護者、医療/ケアの提供者、チーム/場の調整者)(※4)についても解説を加えました。
この3つの役割モデルは、2011年に京大病院の看護部長に着任した際に「プロフェッショナルとしての看護師の3つの責任(護る・届ける・繋ぐ)」として明示したものでしたが、その起源は2007年に本会が公表した『看護業務基準(2006年度改訂版)』(※5)の5つの実践の責務のうちの3つであり、『看護の将来ビジョン2040』(※6)がめざす3つの目標へと通じています。さらに、“点”と“点”で行われる診療の間を切れ目なく連続的に“線”で看護る(みまもる)ことの意義にも触れ、病院完結型から地域完結型医療へのパラダイムシフトの中で、一人の患者を軸に、受け持つ前後の看護職同士が互いに「のりしろ」をつくり合い、医療機能や施設の垣根を越えて切れ目なくその“線”をつないでいくことの大切さを解説しました。どのように“線”をつなぐかは、一人ひとりの看護職自らの判断と実践に委ねられています。
看護職の判断には、その看護職自身が積み重ねてきた経験と、相対する患者の反応とが少なからず反映されており、そこから導かれる実践には二つとして同じものはありません。そこには、看護職自身の専門職としての意図とプライド、そして一人の人間としての思いやりと祈りが込められています。それこそが、守るべき命(脳幹)もそれを包む思いやり(大脳辺縁系)も持たないAIと人間(大脳新皮質)との決定的な違いではないでしょうか。
※1 日本看護協会: 改訂版 看護にかかわる主要な用語の解説, p.9, 2023.
※2 秋山智弥: My patient,my nurse -プライマリ・ナーシングを支えているもの, 看護管理, 7(8), p.567-570, 1997.
※3 秋山智弥: プライマリ・ナーシングの展開-継続を支えるコミュニケーション, 看護管理, 7(10), p.736-744, 1997.
※4 秋山智弥: 看護のルネサンス~より自由に, より人間らしく, 看護を描き出す~, 日本看護管理学会誌,28(1), p.225-233, 2024.
※5 日本看護協会編: 日本看護協会看護業務基準集2007年改訂版, 日本看護協会出版会, 2007.
※6 日本看護協会: 看護の将来ビジョン2040~いのち・暮らし・尊厳を まもり支える看護~, 2025. [2026.9.30確認]
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