会長の手帳(日本看護協会 会長 秋山 智弥)

機関誌「看護」2025年10月号より

第50回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式に参列して

7月31日、日本赤十字社名誉総裁である皇后陛下ならびに名誉副総裁である秋篠宮皇嗣妃殿下、常陸宮妃華子殿下、寛仁親王妃信子殿下、高円宮妃久子殿下のご臨席のもと執り行われた第50回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式に参列しました。今回は17の国と地域から35名が受章され、日本からの受章者は、春山典子さん、紙屋克子さん、河野順子さんの3名でした(※1)。誠に、おめでとうございます。

看護職に与えられる世界最高の名誉であるこの記章は、傷病者の看護の向上に献身し、人道博愛精神を求めたナイチンゲールの偉大な功績を永遠に記念し、看護活動に顕著な功労のある方を顕彰する目的で授与されるもので、平時または戦時にあって、傷病者、障がい者、または紛争や災害の犠牲者に対して、偉大な勇気を持って献身的な活動をした方や、公衆衛生や看護教育の分野で顕著な実績、あるいは創造的・先駆的貢献を果たした看護職に与えられるとされています(※2)。ナイチンゲール生誕100周年に当たる1920年の第1回記章授与から2年ごとに執り行われ、第50回までに総勢1,615名、そのうち日本からは118名が受章され、世界最多となっているようです。

今回受章された春山典子さんは、1985年に群馬県御巣鷹山で発生した航空機墜落事故の過酷な現場で、生存者の救命措置とともに、1,000名にのぼる看護師を指揮し、ご遺体の捜索・検案活動を統率されました。想像を絶する状況の下ご遺体の整復を行い、ご遺族の深い悲しみに寄り添い、故人と家族の尊厳をまもる看護を実践されました。

紙屋克子さんは、遷延性意識障害患者に対して、「あきらめない看護」の信念の下、長期にわたり意識や身体機能の改善と回復に取り組み、実践に根差した看護方法を確立されました。「看護を行う私たちは、人間とは何か、人はいかに生きるかをいつも問いただし、研鑽を積んでいく必要がある」というナイチンゲールの言葉の通り、看護の専門性と自律した看護実践を示した先駆者であられます。

河野順子さんは、退院後の患者を支えるため、多職種・地域連携や在宅医療推進に向けた地域の連携体制の構築に功績を残されました。実践された退院計画の取り組みは、地域包括ケアの基盤となるものであり、地域完結型医療への転換を迎えた今日において、まさに先見性を持った看護実践でした。

それぞれの分野で、人々のいのち・暮らし・尊厳をまもり支える看護実践に果敢かつ献身的に取り組まれ、卓越した行動力によって看護の発展に尽力された受章者のそのご功績に深く敬意を表するとともに、看護という尊い職業に就いた誇りを胸に、私たちも後に続きたいと思います。

※1 本号グラフ(p.1~3)参照
※2 「第50回フローレンス・ナイチンゲール記章」受章者発表 (日本赤十字社ホームページ)

よりよいウェブサイトにするために
みなさまのご意見をお聞かせください