会長の手帳(日本看護協会 会長 秋山 智弥)

機関誌「看護」2026年5月号より

看護職と他職種の協働と連携
令和8年度診療報酬改定 「看護・多職種協働加算」新設に当たって

米国医学研究所の報告書『患者の安全を守る』では、看護師がいつでも要請に応じられる存在であるがゆえに、搬送業務など本来業務ではないさまざまな患者ケア業務を行うことを余儀なくされているとする一方で、その間接的な業務を通して、医療提供システムを構成するすべての領域で、すべての医療従事者と重要な接触を持つことにより、患者を守るために、「ケアの割れ目を見つけては埋めていく」ことができていると指摘しています。さらに、著名な医師で著述家でもあるトーマス・ルイス氏が看護という仕事の大切さを巧みに表現した次のような文章も紹介しています(※1)。

「ナースが行う仕事の1つは、場をまとめることである。患者の誰しもが、自分のベッドという見晴らしのきく地点から、大規模で複雑な病院の業務を観察していて感じることは、病院という施設の機能がバラバラにならないことへのおどろきである。病院というものは、さまざまな方向に互いをひっぱり合う強い力の絶え間ない相互作用によって機能している。それらの力は、必要な物事を成し遂げるためにどれも必要不可欠なものなのだが、常に不安定である。1人の患者として私が発見したことは、『病院という施設をとりまとめ、1つのものに貼り合わせ、有機的組織体として機能させているのはナースにほかならない』ということである。

病院の中には、誰にでもできる仕事もあれば、誰にも割り当てられていない仕事もあります。「これは私の仕事(専門)」「これは私の仕事(専門)ではない」などと、仕事をとりあったり押し付け合ったりしていると、そこには必ず時間のロスと人間関係の軋あつれき轢が生じ、その不利益を被るのはいつも患者さんです。看護師はそれを知っているからこそ、率先してそうした仕事を行っています。結果を得るために早く検体を届け、症状を和らげるために早く薬剤を調製し、筋力を落とさないために休日も患者さんを遠方のトイレまで歩かせようとします。看護師はそうした仕事の最中でさえ、専門職としての視点を失うことはなく、新たな気づきを得ています。

令和8年度診療報酬改定では、「看護・多職種協働加算(25対1)」が新設されました(※2)。「多職種が協働する」とは、患者がケアの割れ目に落ちないように、互いに声を掛け合い、誰にでもできる仕事を手の空いている者が率先して行うことです。そして、一見、専門的でないように見える仕事の中にさえ、専門的視点からの気づきを得ることができるのがプロであり、その気づきを共有することが「専門職間の連携」にほかなりません。看護職と他職種の協働と連携が「患者さんの利益」として実を結びますように。

※1  米国ナースの労働環境と患者安全委員会/医学研究所:患者の安全を守る 医療・看護の労働環境の変革, 日本評論社, p.44, 2006.
※2  本号 p.27 参照

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