会長の手帳(日本看護協会 会長 秋山 智弥)
機関誌「看護」2026年8月号より
まっすぐな言葉と教育のやり方改革
令和8年度通常総会を終え、会長2年目に当たって
6月10日、会長に就任後初めての通常総会を開催しました。昨年の総会で公表した「看護の将来ビジョン2040」の実現に向け、2026年度から3カ年にわたって実行する新たな重点政策・重点事業についての説明を行いました。議長団の皆さまの円滑な議事運営の下、代議員ならびに会員の皆さまから数多くの示唆に富んだご意見やご指摘、また心温まるエールをいただき、無事に終えることができました。今後も国への積極的な働きかけや事業推進を通して着実に成果を上げ、会員の皆さまの期待に応えてまいりたいと思います。また、改善すべきところはさらなる意見収集を通して真摯に検討し、会員の皆さまとの双方向の対話を大切にし、あるべき姿の着実な実現に向けて力を尽くしてまいります。2年目もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、連続テレビ小説『風、薫る』(NHK)もいよいよ佳境に入ってまいりました。皆さんはどんな場面、どんな言葉に心打たれているでしょうか。私は、受け持ち患者さん(小野田さん)が亡くなって実習に行けなくなったゆきさんに、トメさんが贈った津軽弁のエールがとても胸に刺さりました。「小野田さん死んで泣いでるゆきさんは、看護婦としてはダメかもしんねーが、おらは好きだ」―まっすぐな言葉はまっすぐ心に届きます。何より津軽弁が最高です。工藤トメさんを演じる女優の原嶋凛さんは、津軽ネイティブかと思いきや、なんと三重県出身と聞いてさらに驚きました。方言は温かい。方言で看護されることがいかに地域で暮らす人々の心に届くことかと強く思います。だからこそ、生まれ育った地域の看護師がいつか地元に帰って地元の医療を担う大きな力の中心になってほしいと願うばかりです。その上で、いろいろな地域の文化もよいものはどんどん取り入れ、新しい文化、新しい言葉が生まれてくればさらによいと思います。
「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」も6月22日に第3回が終わりました。いまだ議論の本丸に達していないことにもどかしさも感じますが、これまでにない社会課題にはこれまでにない発想、これまでにない対策が不可欠だと思っています。例えば、「最初に統合実習からはじめて、最後に基礎実習を行う」「糖尿病のメカニズムからではなく、Aさんにとっての糖尿病の意味から学ぶ」「就職した初日から夜勤に入る」など、いまこそ、抜本的な教育のやり方改革に取り組まなければならないと痛感します。「部分」をたくさん学んでも「全体」を学ぶことはできません。「全体」を先に学ぶことで「部分」は面白いくらいわかるようになります。正解を学ぶのではなく、正解の探し方、見つけ方、近づき方を学ばなければなりません。看護は特にそうです。看護師になるには持ち前のセンス(素養)も必要です。看護には向き・不向きがあります。「悩める人こそ看護に向いている」
―AIは決して悩みません。悩まない人、悩みたくない人には看護師の仕事は難しいのではないでしょうか。素養のある人を一人でも多く看護の道へと導き、看護のエキスパートに育てることができたらと願ってやみません。
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