日本看護協会とは

会長の手帳(日本看護協会 会長 福井トシ子)

月刊『看護』2019年3月号より

「妊婦加算」凍結に思う

妊婦加算は、妊婦を診療した際に、初診料、再診料または外来診療料に加算できる診療に対する報酬です。算定点数は、初診料の場合は75点、再診料・外来診療料の場合は38点。

外来受診した妊婦を診療する場合は、①胎児への影響に注意して薬を選択するなど、妊娠の継続や胎児に配慮した診療が必要であること、②妊婦にとって頻度の高い合併症や、診断が困難な疾患を念頭に置いた診療が必要であることなどを理由に、妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価する観点から、2018年度診療報酬改定で新設されました。

ところが、妊婦加算の運用を2019年1月1日から一時的に凍結することを、厚生労働大臣が2018年12月19日、中央社会保険医療協議会総会に諮問し、同日開催された総会で、「妊婦加算についての誤解と不安がある状況では、妊婦加算導入の意図が十分に実現できない」という判断から、「凍結はやむを得ない」と答申されました。これにより、妊婦加算は「厚生労働大臣が定める日」まで凍結されることになりました。

妊婦の外来診療について、通常よりも丁寧な診療を評価したという加算新設の主旨や内容が国民に十分に理解されず、妊婦やその家族に誤解と不安を与えたことから、その結果として算定凍結の措置を講ずると、その理由が答申書に記されています。

妊婦加算に対する情報提供が不足していたことや、医療機関のモラル低下も指摘され、「妊婦の視点が欠けている」という批判もあり、妊婦加算という仕組みが適当であったかどうかを改めて考えることとなりました。2020年4月に予定されている診療報酬改定に向けて、妊婦の診療体制について新たに委員会を開き、枠組みからあらためて検討する方針が示されています。

この一連の経過から学ぶべきことは非常に多いと思います。診療報酬の意図は何か、その意図を踏まえて運用する際にどのような点に留意すべきかを明らかにしておくこと、そして何よりも「当事者の視点」が必要だということです。当事者とは、ここでは費用負担をする妊婦本人ということになるので、妊婦への十分な説明があってしかるべきです。「妊婦への丁寧な診察」が診療報酬の目的でしたが、その説明も不十分でした。

また、診療報酬の仕組みはなかなか理解しにくい状況です。加算の仕組みがわかりづらい上に、報道でも診療報酬全体の理解を促進するような説明は少なかったように思います。

新しい命を応援しようという仕組みづくりはどうあるべきなのか、今後開催される妊婦の診療体制に関する委員会の検討結果が待たれます。