常任理事のマンスリー通信

    機関誌「看護」2025年6月号より

    常任理事 吉川 久美子

    常任理事 吉川久美子

    DiNQL事業参加病院を募集 看護職の働く環境整備と看護実践の評価のために

    現在、2025年度のDiNQL事業参加病院を募集しています。本事業は、看護職が健康で安心して働き続けられる環境整備と看護の質向上をめざし、看護に関するデータ収集と病院の看護職のデータマネジメントを支援する事業です。2026年度の診療報酬改定に向け、2024年度には、療養病棟入院料1を算定しているDiNQL参加病棟の皆さまにご協力いただき、「夜勤帯の看護実態調査」を実施しました。有効回答率60%と、多くの皆さまにご協力いただきありがとうございました。この調査では、病棟の看護職員配置数、特に夜勤帯の看護職員配置数、患者の状態、夜勤帯に看護職員が実施した医療ケア内容等を明らかにしました(※)。蓄積されたDiNQLデータに加え、この調査結果を基に、重症度が高くなっている療養病棟の夜間の看護職員配置に関する評価要望を行う予定です。このように、DiNQLデータは、看護職の働く環境整備と看護実践の評価を得るために活用しますので、多くの病院の事業へのご参加をお待ちしています。

    ※調査結果はキャリナースおよびDiNQL参加病院専用サイトで公表

    常任理事 井本 寛子

    常任理事 井本寛子

    インスリンバイアル製剤の取り扱いに注意を!

    皆さまはPMDA(※1)医療安全情報(※2)をご存じでしょうか。これは、これまでに収集されたヒヤリ・ハット事例や副作用・不具合報告の中から、同様の事象が繰り返し報告されている事例などについて、PMDAが医療従事者に対して安全に使用するために注意すべき点等をわかりやすく解説したものです。繰り返し報告される事例として取り上げられているものの一つに「インスリンバイアル製剤の過量投与」があります。日本で承認されているインスリンバイアル製剤は、1mL当たり100 単位に濃度が統一されており、1単位は0.01mL となっています。インスリンをインスリンバイアル製剤から正確に量り取るためには、一般の注射器ではなく、「単位/UNITS」と表示されている、インスリン専用注射器を使用する必要がありますが、過量投与事例では専用注射器を「使用しなかった」という報告が多くなされています。インスリンに関連した事故を未然に防止するために、皆さまの施設でも同様のことが起こっていないか確認をお願いします。

    ※1 独立行政法人医薬品医療機器総合機構
    ※2 PMDA医療安全情報

    常任理事 木澤 晃代

    常任理事 木澤晃代

    特定認定看護師(B課程認定看護師)教育の見直しの検討に着手

    特定行為研修を含んだB課程認定看護師(CN)教育は、2020年度から開始されました。制度改正の評価のため、2024年度に中間評価を行ったところ、特定行為研修を含んだことが効果的である一方、研修時間の延長、教育機関が遠方であることによる受講のしづらさ・させづらさ、教員の確保困難、教科目の統合による認定分野の専門性の担保、が課題として抽出されました。これを受け、2040年に向けて、あらゆる場であらゆる世代の患者・療養者の多様なニーズに応え、役割発揮できる特定認定看護師(B課程CN)を養成していくためには、B課程CN教育における各分野の教育基準カリキュラムの見直しが必要だと考えました。2025年度は特別委員会を設置し、B課程CN教育の課題解決に向けて、A課程CN教育からB課程CN教育への移行推進や、B課程CN教育基準カリキュラム改正の方向性に関する検討・提案を行います。進捗等については、順次公表する予定です。

    常任理事 田母神 裕美

    常任理事 田母神裕美

    看護師職能委員会Ⅱ( 介護•福祉関係施設•在宅等領域)での検討  交流の機会の重要性

    2024年度の本会の看護師職能委員会Ⅱでは、2つのテーマ「1.看Ⅱ領域で活躍する看護人材の確保に向けた情報収集・課題発見」「2.働き続けられる環境の整備に向けた情報収集・課題発見」について検討を行い、課題と取り組み例を7つの視点からまとめました。多くの示唆をいただいた、委員会委員、関係の皆さまに感謝申し上げます。1点目の看護人材確保に向けた取り組みは、「看Ⅱ領域の看護の魅力の周知」「地域で連携し、人材を確保する仕組みの構築」です。
    2点目の人材の定着への取り組みについては、「ライフスタイルや希望に応じ柔軟に働くことができる環境の整備」「学び続けられる環境の整備」「業務負担の軽減」「経験や能力の適切な評価」、そして「相談体制・交流の機会の確保」です。他施設の優れた取り組みを知る機会を得る、地域で顔の見える関係をつくり課題解決につなげることが求められます。職能団体としての看護協会の研修や事業等のあらゆる場が、交流の機会となり、推進の力になると考えます。

    常任理事 松本 珠実

    常任理事 松本 珠実

    保健師の実践能力(案)の作成

    日本看護協会では2023年にすべての看護職を対象とした「看護職の生涯学習ガイドライン」を公表しました。すでに、看護師は「看護実践能力」、助産師は「助産実践能力」として求められる能力が示され、それぞれに習熟段階と学習項目または教育内容が明示されています。しかしながら、すべての保健師に必要な実践能力を示したものはありませんでした。そこで、2023年度に保健師関連団体(全国保健師長会、全国保健師教育機関協議会、日本公衆衛生看護学会)が開発したコアコンピテンシー等を参考とし、有識者を交え、「保健師の実践能力(案)」を作成しました。2025年度、保健師職能委員会や保健師関連団体からもご意見をうかがい、精錬し、習熟段階・学習項目とともにパブリックコメントをいただける段階まで進める予定です。新規採用保健師は既卒者も増えており、継続して生涯学習に取り組めるよう、基盤づくりに努めます。

    常任理事 橋本 美穂

    常任理事 橋本 美穂

    勤務間インターバル制度導入に向けて

    「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)」が改正されたことを受け、2019年より「勤務間インターバル」制度導入が企業の努力義務となっています。「勤務間インターバル」制度とは、勤務と勤務の間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く人の生活時間や睡眠時間を確保するものです。看護の現場は、夜勤・交代制勤務やオンコール、当直体制を実施しているところも多く、一般の企業に比べて、不規則な勤務や緊急対応が多いなど、制度の導入が難しい実情があります。このたび、厚生労働省から「医療業版 勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」が公表されました(※)。勤務間インターバル確保に向けた医療業特有の課題等がまとめられており、導入手順や導入事例が紹介されています。現在、厚生労働省労働政策審議会では、勤務間インターバル制度の義務化についても議論されています。ぜひ、本マニュアルを活用して制度導入に向けてご検討ください。

    ※ 医療業版 勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル(厚生労働省)

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