常任理事のマンスリー通信
機関誌『看護』2023年6月号より
常任理事 吉川久美子
【急性期病院への介護福祉士配置に関して】
新緑が美しい季節になりました。2024年度は、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定の年となり、本誌が発行されるころ、本会は厚生労働省保健局長へ診療報酬改定に関する要望書の提出を行っていると思います。新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴って、今年度の診療報酬上の対応の見直しが行われました。そのような状況の中、次回改定に向け、医療機関、特に急性期病院への介護福祉士の配置とその評価を求める意見が病院団体や有識者等から出ています。本会は、急性期病院は医療が必要な患者に対応する場で、患者の状態を判断しながらケアに当たる必要があるため、介護福祉士が単独で業務を実施できる環境にないこと、また介護現場での人材不足や今後の需要の高まりを考慮し、介護福祉士は介護の場で活躍すべきと意見しています。5月に開催する看護管理者懇談会では、このことについての看護管理者の皆さまへのご説明と意見交換等を予定しています。
常任理事 鎌田久美子
【2022年「保健師の活動基盤に関する基礎調査」結果】
本会は2022年に5回目となる標記調査※ を実施し、1万9994人にご回答いただきました。新型コロナウイルス感染症まん延以降、初となる本調査では、新型コロナウイルス感染拡大等の影響を受けた保健師の「人材確保・育成、就業継続」に焦点を当てました。調査結果のポイントを報告します。①保健師の8割以上が新型コロナウイルス感染症対応業務に従事し、うち行政領域では約25%が80時間以上の時間外勤務を実施。今後の緊急時に必要な人員の確保・活用の体制づくりの必要性が明らかになった、②人材育成・現任教育体制の充実における統括保健師配置の有効性が示唆された、③約半数が「対応するケースや業務の複雑・困難化」などの課題や、「関係機関・多職種との連携体制の構築・強化」などの必要性を認識していた。コロナ禍での対応はまだ続きますが、この結果を保健師はじめ関係者の皆さまと共有し、保健師がよりいっそう能力を発揮して、活躍できることを願っています。
- ※
- 日本看護協会が保健師活動の実態を明らかにすることを目的に、保健師として就業する全国の保健師を対象とした調査。2009年に開始し、2010年以降は4年に1回、今回が5回目の調査となる
常任理事 井本寛子
【「PMDA 医療安全情報」について新人看護師への解説資料としても活用を】
新人看護職員の入職後、約2カ月が経過しました。各医療機関では、ステップアップのためのOJTを進められていることと思います。さて、皆さまはPMDA※が公表する「PMDA医療安全情報」をご存じでしょうか。これは、これまでに収集されたヒヤリ・ハット事例や副作用・不具合の報告から、同様の事象が繰り返し報告されている事例などについて、医療従事者が安全に使用するために注意すべき点等をわかりやすく解説しているものです。今年3月時点で65件の安全情報がリリースされ、昨年は「二槽バッグ製剤(バッグ型キット製剤)の隔壁未開通事例について」等、今年は「徐放性製剤の取り扱い時の注意について」等が新規掲載されました。具体的な図説もあるため、経験が浅い新人に活用しやすい資料です。「繰り返し起こっている事象」と「安全対策」について、新人看護師教育の機会を活用し、病棟スタッフ全員で抄読すること等により再発防止に努めていただきたいと思います。
- ※
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)
常任理事 森内みね子
【心理的安全性の高い組織、職場をつくる】
新人看護職員の皆さまは、就職されて2カ月ほど経ったころでしょうか。新たな職場に少し慣れ、元気で働いていることを願っております。これから夜勤などの交代制勤務が入り、バランスを崩しやすい時期です。困ったことがあったら1人で抱え込まず、また気分転換を忘れずに焦らず一歩ずつ歩んでください。看護の旅路は始まったばかりですから。
さて、心理的安全性の高い組織づくりに取り組む看護部も増えてきていることと思います。ふと気がつくと慣習に従うことで新たな力が発揮できていない、強い人の意見に左右され自分の意見が言えないなどの状況に陥っていないでしょうか。エイミー・C・エドモンドソンは、心理的安全性の高い組織では、チームのパフォーマンスが高まると述べています。新たな職員を迎えたこの機会に、自分たちがめざす心理的安全性の高い職場とはどのようなものかを考え、言語化し、皆がいきいきと働き続けられる職場づくりに取り組みましょう。
常任理事 木澤晃代
【「看護職の生涯学習ガイドライン」を6 月に公開します】
少子超高齢化の進行や、多様化・複雑化する健康ニーズに対応するためには、看護職が各自のライフイベントや価値観に応じ、仕事と生活の調和をはかりながら自律的に学ぶことが必要です。そのため、生涯学習について看護職が主体的に学ぶための考え方や組織が看護職の学びを支援するポイントを示した「看護職の生涯学習ガイドライン」を策定しました。併せて看護師のオーダーメイドの学びを支援するための「看護師のまなびサポートブック」、組織等が看護職の自律的な学びを支援するための「生涯学習支援ガイドブック」を策定しました。「看護師のまなびサポートブック」では、4つのカテゴリの看護実践能力と、その能力の構成要素、学習項目、習熟段階(ラダー)等を、「生涯学習支援ガイドブック」では、組織等の関係者が対話を通して看護職のキャリア形成を支援するためのポイントについて示しています。「まなび」、「はたらく」ことで、なりたい自分につながります。
常任理事 田母神裕美
【地域共生社会をめざして】
厚生労働省は「地域共生社会」について、「制度・分野ごとの『縦割り』や『支え手』『受け手』という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を目指すもの」※1 としています。3月の全国看護師職能委員長会Ⅱ(介護・福祉関係施設・在宅等領域)では、厚労省担当官の講演で「地域共生社会をめざし、市町村が実施主体となる『重層的支援体制整備事業』※2等で、属性や世代を問わない包括的な支援等が展開されている」と説明がありました。その後のグループワークでは、住民や利用者、患者が持つ課題の複雑化に対して、医療・介護・福祉の各サービスの守備範囲を広げる試みや関係者間の連携状況が共有されました。地域・社会の構築は大きな課題ですが、地域特性を把握している行政の保健師との連携を含め、取り組みが広がっていることを理解しました。
よりよいウェブサイトにするために
みなさまのご意見をお聞かせください