常任理事のマンスリー通信

    機関誌「看護」2025年5月号より

    常任理事 吉川 久美子

    常任理事 吉川久美子

    地域の看護師の育成が特定機能病院の承認要件(案)に

    2024年度に私が参加してきた検討会に、「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」があります。現在、特定機能病院は88病院あり、高度な医療提供等の役割があります。社会保障審議会医療分科会の承認要件の見直しに関する意見を受け、2024年度は特定機能病院の中の大学附属病院の承認要件について検討を進めてきました。特定機能病院の承認要件の中で、看護については、「看護師と准看護師の配置数」しか要件に入っていません。高度な医療への対応、地域医療への対応のためには、看護職の育成や確保などの役割を持つ必要性を意見してきました。その結果、評価方法として、「基礎的基準」と「発展的(上乗せ)基準」に分けて評価すること、基礎的基準の中に、医師の教育のみならず、地域の医療機関への学習機会の提供や、看護師・薬剤師などの医療従事者の実習受け入れや育成が案として含まれました。最終取りまとめは、2025年度に持ち越しとなっています。

    常任理事 井本 寛子

    常任理事 井本寛子

    助産師による看護職員への健康支援 全国職能委員長会開催

    去る3月7日に、2024年度第2回全国助産師職能委員長会を開催しました。今回のテーマは「女性とその家族への健康支援」でした。委員長として、国が策定を進めている「プレコンセプションケア5か年パッケージ(仮)」や、補正予算で新たに設けられた「プレコンセプションケアに関する相談支援加算」について情報提供後、2名の助産師から、女性とその家族への健康支援事例をご紹介いただきました。その1例に、「院内で取り組む看護職員への健康支援」がありました。私たち看護職の9割が女性です。国が課題視している女性の健康課題を、少なからず内在しながら看護に当たっています。事例は新人研修で月経前症候群(PMS)に関する健康教育を実施し、セルフコントロールの理解を進めることで、仕事のパフォーマンス低下などの影響を最小限にできるというものです。皆さまの施設でも看護職のウェルビーイングへの取り組みとしてご検討いただきたいと思います。

    常任理事 木澤 晃代

    常任理事 木澤晃代

    看護管理研修(案)、新たな認定看護管理者教育(案)のパブリックコメントを実施

    認定看護管理者制度は、1998年の制度発足以来、27年が経過し、認定看護管理者数は5,488人(2024年12月末時点)となっています。その間、わが国の医療は「地域包括ケアシステム」構築の推進による、地域完結型の体制へと変換がはかられました。看護管理者の活躍の場や活動の内容は広がりを見せており、今後さらに組織・地域において能力発揮が求められています。これを踏まえ、現行の認定看護管理者教育の見直しに留まらず、看護管理に関する研修および看護管理者育成のための教育の体系化について検討し、このたび認定看護管理者教育(ファースト・セカンド・サード)に代わる「看護管理研修プログラム(案)」および「新たな認定看護管理者カリキュラム基準(案)」を作成しました。つきましては、4月中旬より、広く皆さまからのご意見を募集いたします。詳しくは、本会公式ホームページをご確認ください。

    常任理事 田母神 裕美

    常任理事 田母神裕美

    医療と介護の連携強化 あらゆる機会を捉えて

    2024年度介護報酬と診療報酬改定では、「医療と介護の連携の推進」の視点から、高齢者施設等と医療機関の連携強化に関する改定が行われました。その一つとして、介護報酬改定では、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院について一定の要件を満たす協力医療機関を定めることが義務づけられました(経過措置3年)(※)。協力医療機関の要件には、入所者の病状の急変時等に医師または看護職員が相談対応を行う体制を常時確保することなどがあります。診療報酬では、協力対象施設入所者入院加算が新設され、介護保険施設等と平時から連携体制を構築している協力医療機関での入院の評価が行われました(施設基準あり)。医療ニーズを有する要介護高齢者が増加する中、医療機関、介護保険施設、居住系施設、在宅を問わず安心の療養を支えるには、各施設等の対応力強化と、円滑な連携が重要です。医療・介護の各機関の看護職があらゆる機会に連携し、切れ目ないケア体制を深化させていきましょう。

    ※特定施設入居者生活介護、認知症グループホームはこれに準じる対応が努力義務化された

    常任理事 松本 珠実

    常任理事 松本 珠実

    精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける医療提供体制について

    いわゆる「にも包括」における、かかりつけ精神科医療機関に求められる役割には、ケースマネジメント、急性憎悪時等の対応、訪問診療や訪問看護の提供、他科連携、地域における連携拠点機能、協議の場への参画などが示されています。一方、精神科外来への新患診察には数カ月の待ち時間を要する地域もあり、実効性ある取り組みには、多くの課題が存在しています。「第5回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」では、保健師が早期から予防的にかかわり関係性を築いて医療に結び付けている市町村の事例、精神科外来が医療提供機能に集中できるよう、多職種による訪問やオンライン等を活用した相談事業を充実させている保健所の事例などが報告されました。私自身は保健と医療との垣根が低くなっていることを実感するとともに、関係者の対話によって地域のリソースに応じた仕組みづくりが展開される様に、あらためて公衆衛生看護活動の醍醐味を感じました。

    常任理事 橋本 美穂

    常任理事 橋本 美穂

    治療と仕事の両立支援

    「治療と仕事の両立」とは、治療が必要な疾病を抱えながらも働く意欲や能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また治療の必要性を理由として職業生活の継続を妨げられることなく、適切な治療を受けながら生き生きと就労を続けられることです。厚生労働省では「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」や「企業・医療機関連携マニュアル」などを作成しています。2024年からより簡便に勤務先に医療機関から必要な情報提供ができる「治療と仕事の両立支援カード」が始まりました。職場と必要な支援について話し合う第一歩にすることができます。治療と仕事の両立支援ナビサイト(※1)では、「ちりょう」と「しごと」の両耳を持つウサギさん「ちりょうさ」(※2)が、両立支援に必要な情報や書式、コラムなどを案内しています。自分や家族、同僚、患者、職場の従業員などが必要とされているときにぜひ活用してください。

    ※1 治療と仕事の両立支援ナビサイト(厚生労働省)
    ※2 治療と仕事の両立支援ナビサイト(厚生労働省)イメージキャラクター

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