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協会ニュース2025年7月号
厚生労働大臣へ要望 全ての看護職員の労働環境改善のための財政支援を要望
日本看護協会の秋山智弥会長は6月12日、厚生労働省を訪問し福岡資麿厚生労働大臣に「令和8年度予算・政策に関する要望書」を提出した。
全ての地域、あらゆる世代の人々が適切な医療・看護・介護を受けるには、それらを支える提供体制の整備が不可欠であり、特に医療と介護をつなぐ看護がその役割を十分に発揮できる環境整備が求められている。また、賃金上昇を上回る物価高騰が続く中、労働に見合う処遇と、やりがいを持ち、安全かつ健康に働き続けられる労働環境の確保が欠かせない。
秋山会長は、全ての看護職員の処遇改善について、次期診療報酬改定前の期中改定も視野に入れて「賃金上昇につながる財政支援と診療報酬改定の両面からの対応」を求めた。加えて、夜勤交代制勤務従事者の健康確保のために労働基準法を改正し、法定労働時間の短縮、深夜業の割増賃金の増額も要求。また「産業保健に関わる保健師等は働く人々の健康をまもるだけでなく、重症化予防にも寄与している」とし、産業保健体制の強化も訴えた。さらに、2040 年に向けて看護提供体制を確保するため、教育のあり方なども含め、看護提供体制全体を捉えた検討も要望した。
福岡厚労大臣は「全ての医療現場において処遇改善することは、『骨太の方針2025』の検討の際、これまで以上に議論し喫緊の課題として認識している」とした上で、「診療報酬の期中改定も含めて検討したい」と応じた。また「現場の負担を軽くする点で、看護DX の推進、人材の確保が難しい夜勤の問題は成功事例の横展開を含めて、皆さまが無理なく働ける環境整備にしっかり取り組みたい」と述べた。また、要望書に挙げているカスタマーハラスメント対策の強化についても、実効性ある取り組みを進めたいとの意向を示した。
2025年度記者会見 秋山新会長が抱負語る 2040年に向け「医療の質を高める看護の実践を」
日本看護協会は6月24日、2025年度記者会見を日本看護協会JNAホールで開催し、6月11日の通常総会で、新たに会長に就任した秋山智弥会長があいさつを述べた。
あいさつではまず、喫緊の課題となっている物価上昇と賃金の乖離について、本会が実施した「看護職員の賃金に関する実態調査」の結果を交えて説明。看護師の基本給月額は過去12年間で約6,000円増にとどまり、上昇率は2.3%前後に過ぎなかったことを挙げ「看護職が置かれている厳しい現状を直視する必要がある」と述べた。その上で「全ての看護職がやりがいを持って働き続けられるよう、さらなる処遇改善に全力で取り組む」と力を込めた。また、2040年に向けた看護の将来ビジョンについても言及。2040年には団塊ジュニア世代の高齢化や都市部のスポンジ化により医療・介護需要の増大が見込まれるとした上で「いのち・暮らし・尊厳をまもり支える看護を、地域の中で届けていくために、アウトリーチ型の支援体制が必要になる」と、将来ビジョンの方向性を説明した。また、こうした地域包括ケアの中心を担うためには、看護職自身が健康で、安心して、そして充実感を持って働き続けられる“ウェルビーイング”の実現が大前提であると強調。「看護職も一人の生活者であり、心身の健康や生活基盤が整ってこそ、働き続けることができ、専門性を磨き、発揮し続けることができる」と語った。
会長あいさつに続き、副会長、専務理事、常任理事が新任のあいさつを交えながら、それぞれの担当業務や重点政策・重点事業の概要について説明した。
質疑応答では、ナース・プラクティショナー(仮称)制度の創設について、実現に向けた時期や取り組みの具体について質問があった。秋山会長は「遠隔診療の進展により距離や時間の問題を乗り越えられる可能性が見えてきた」と述べ、オンライン診療と包括的指示を活用しつつ、看護職が患者のそばにいることでタイムリーな医療提供が可能になるとした。その上で「それでも十分ではないこともあるため、必要な場面ではナース・プラクティショナー(仮称)が活躍できるよう、関係団体と話し合い、進めたい」との考えを示した。この他、准看護師養成の見直しや、地域における病床削減と療養支援のあり方、離島・へき地での看護職確保、看護小規模多機能型居宅介護の医療保険適用に向けたモデル事業の進捗など、幅広い分野にわたる本会の今後の取り組みを示した。
第56回(2025年度)日本看護学会学術集会 事前参加登録 8月15日(金)まで
日本看護学会学術集会を、最適な看護をマネジメントする~「よい看護」を「どこでも」「ずっと」~のメインテーマのもと、9月12日(金)~14日(日)にポートメッセなごやにて開催します。
マネジメントは「管理職が行うもの」と捉えられがちですが、看護職の行う看護実践では、「よい看護」を「どこでも」「ずっと」提供するためのマネジメントが常に行われています。本学術集会は、さまざまな場で活躍する全ての看護職に求められる、このマネジメントについて、皆さまと改めて考える機会にしたいと考え、企画しました。一部の講演は後日オンデマンド配信します。視聴を希望する方も参加登録期間内にご登録ください。多くの皆さまのご参加を心よりお待ちしています。
トカラ列島近海を震源とする地震 災害災害支援ナースを派遣
※7月10日時点
6月下旬より断続的に発生しているトカラ列島近海を震源とする地震において、鹿児島県十島村では昼夜問わず揺れが続き、7月10日までに悪石島からは計49人、小宝島からは15人がフェリーで島外へ避難するなど、島民の生活に大きな影響が出ている。このような状況を受け、7月3日から、十島村役場保健師が悪石島と小宝島に入り、島民の健康管理を行った。鹿児島県看護協会は発災時より十島村役場保健師と連携し、困りごとなどの相談支援を行っていた。7月4日、村から県へ悪石島への災害支援ナースの派遣要請があり、県からの派遣調整依頼を受けた県協会では、翌日、県内派遣として災害支援ナース2名の調整を行った。7月7日から7日間派遣された災害支援ナースは、診療所看護師の業務支援や島民の健康観察などを行う。この間、現地とのオンラインミーティングなどに県協会も参加し、災害支援ナースの活動を支援していく。