協会ニュース2025年12月号

厚生労働大臣、老健局長へ要望 介護分野の看護職員の処遇改善を

日本看護協会の秋山智弥会長は11月20日、厚生労働省を訪問し上野賢一郎厚生労働大臣、黒田秀郎老健局長に「介護分野における看護職員の処遇改善に関する要望書」を提出した。
今回の要望の背景には、本会をはじめ全国老人保健施設協会や全国老人福祉施設協議会など、介護関係13団体が共同で実施した「介護現場の幅広い職種の賃上げ実現のための賃上げ状況調査」の結果がある。同調査は、賃金改定の実態を把握するために実施されたものであり、訪問看護、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人保健施設など、幅広い事業所の状況を反映している。
調査結果は本年10月に公表され、介護現場で賃上げが十分に進んでいない実態が明らかになった。加えて、厚生労働省の「令和7年賃金引上げ等の実態調査」によると、医療・福祉分野の賃金改定率は全産業平均を大きく下回っており、介護分野の処遇改善の遅れが改めて裏付けられた。高齢化が進む中、介護の必要性は今後ますます高まると見込まれる。しかし、処遇改善が伴わなければ、人材の確保・定着が困難となり、地域の医療・介護提供体制の維持が危機的な状況になる恐れがある。
このような状況を踏まえ、要望書では2025年の全産業の賃金改定率4.4%に対し、医療・福祉分野は2.3%と差が拡大していることを指摘。医療・福祉分野も他産業並みの賃上げ、労働に見合う処遇改善が実現されなければ、人材流出を招き、地域の医療・介護提供体制の維持が困難になることを明記した。訪問看護や介護施設・事業所では、看護職員の賃金の伸びが低く、離職率も高い状況が続いている。このため、地域で必要な看護を確保するには早急な対策が求められる。
秋山会長は「人々が適切に医療・介護を受けられる社会をまもり抜くためにも、介護分野で働く看護職員の処遇改善は喫緊の課題だ」と述べ、補正予算による財政支援や介護報酬改定による対応を求めた。これに対し、黒田老健局長は「補正予算では一時的な対応にとどまるため、介護報酬改定に向け相談しながら対応していきたい。人材確保のためにはDXなどのテクノロジーも活用し、効率化を進めることも重要」との意向を示した。上野厚労大臣宛の要望書は黒田老健局長を通じて手渡された。

※要望の全文は、本会HP「ニュースリリース」参照

医療・介護提供体制の維持へ 処遇改善と財源確保を求め総決起大会を開催

11月20日、日本看護協会を含む43医療団体から成る国民医療推進協議会が、日本医師会館(東京都文京区)で「国民医療を守るための総決起大会」を開催した。今回は全国のサテライト会場をオンラインで結び、約1万人が参加した。大会では、物価高騰や賃金上昇、医療の高度化などにより厳しい経営環境が続く医療・介護現場を支えるため、2025年度補正予算および次期診療報酬・介護報酬改定における大幅な処遇改善と安定的な財源確保を求める決議を採択した。
決意表明では、同協議会副会長である本会の秋山智弥会長が登壇した。秋山会長は、現場で尽力する医療・介護従事者への感謝を述べるとともに、「公定価格ではコスト上昇分を転嫁できず、すでに個々の施設の努力は限界を超えている」と現状の深刻さを強調した。さらに、社会全体で賃上げが進む中、医療・介護分野の賃金上昇が追いつかず、「人材流出の懸念が高まり、地域の医療・介護インフラが失われかねない」と訴えた。続けて、「誰もがどこに暮らしていても安心してケアを受けられる社会をまもるためには、他産業並みの賃上げと労働に見合う処遇改善が不可欠。今こそ、本当に必要なところへ届く適切な財源の確保に向け、これまで以上に強く声を上げていく」と決意を示した。最後に、看護職として、いのち・暮らし・尊厳をまもり支える現場の声を背負い、関係者と共に困難を乗り越える覚悟を述べ、参加者に連帯を呼びかけた。

令和7年11月18日大分市佐賀関の大規模火災 大分県看護協会が災害支援ナースを派遣調整

大分県大分市佐賀関で11月18日夕方に発生した火災は強風にあおられて延焼し、約4万8,900平方メートルが焼損。住宅など187棟が被災、1人が亡くなる被害となった。県と市は同日23時に災害対策本部を設置し、消火活動や被災者の支援などの対応に当たっている。避難先である佐賀関市民センター内佐賀関公民館には最大121世帯180人が避難しており、持病を持つ高齢者への医療的支援が必要といった医療面の問題が浮上していた。こうした中、大分市保健所から県へ災害支援ナースの県内派遣要請があり、県からの派遣調整依頼を受けた大分県看護協会では、感染症の流行などに備え、感染管理認定看護師の資格を持つ災害支援ナース3人(延べ4人)の調整を行った。21日および25日に派遣された災害支援ナースは、避難所の感染対策支援や評価を行った。その後、インフルエンザ感染者の増加に伴い、夜間の医療的支援や、避難者の健康をまもるために26日から12月5日まで、1泊2日の2人体制で災害支援ナースが継続派遣されることになり、最終的に12日間の派遣期間で計21人(延べ22人)の災害支援ナースが派遣された。(12月5日時点)