協会ニュース2024年7月号

能登半島地震から半年 能登地方における看護職確保・支援

1月1日に発生した令和6年能登半島地震から半年が経過した。日本看護協会では石川県看護協会と連携しながら、被災地の復旧・復興に向け、医療提供体制維持に必要な看護職確保の取り組みを継続している。

能登地方における看護職確保に向けて

石川県看護協会・石川県ナースセンターと本会では、発災直後より災害支援ナースの派遣や金沢市と小松市に開設された1.5次避難所の運営に加え、石川県内で被害の大きかった避難所への感染対策支援物資などの手配や、被災した看護職と看護学生を対象とした相談窓口の設置など、切れ目のない支援体制の維持に取り組んでいる。
また、能登地方における中長期的な看護職確保に向けて、2月から「能登プロジェクト 能登半島地震の看護職を支え隊」(以下、能登プロジェクト)を開始した。

能登プロジェクトの取り組み状況

能登プロジェクトは、能登地方で支援にあたる看護職を全国から募集し、現地の病院や診療所、高齢者施設などでの勤務を紹介する取り組みである。全国からの募集に向けては、石川県看護協会のホームページに設置した特設ページから応募ができる仕組みを構築した。また、看護職が安心して応募できるよう、求人情報やマッチングの流れ、よくある質問などを掲載している。周知にあたっては、石川県から都道府県行政、中央ナースセンターから都道府県ナースセンターに連絡して全国からの支援を募った。

全国の看護職からの支援

能登プロジェクトには、6月末時点で全国から多数の看護職の応募があった。求人施設からのニーズが高かった中長期的な勤務が可能な看護職を求人施設に紹介し、20代から70代までの17人が病院や診療所、介護・福祉関係施設で採用された。

現在も続く被災地支援

ky_20240715_1能登地方の復旧・復興に向け、引き続き能登プロジェクトでは全国の看護職を募集している。ナースセンターが運営する無料職業紹介サイト「eナースセンター」でも能登プロジェクトとして募集のある病院や施設を紹介している。能登地方での勤務が可能な看護職は、ぜひホームページで情報を確認してほしい。

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能登プロジェクトによる看護職の人材確保 珠洲市総合病院

ky_20240715_3能登プロジェクトを利用して看護職の確保を行った珠洲市総合病院。同院は、地震発生直後の1月3日からDMATの支援を受けながら、6日からは災害支援ナースの派遣を受け、さらに12日からは国からの広域派遣が開始となった。発災直後は、一時的な入院患者の増加や被災した看護師が出勤できないなどの理由で病棟看護師が不足していたが、病棟を3病棟から2病棟に縮小したことで維持できるようになった。一方、外来はDMATと広域派遣の看護師による支えで維持できていたが3月に全ての派遣が終了となり、中長期的な看護職の確保は能登プロジェクトによって対応した。
求人については、通常のeナースセンターへの求人登録に加え、住居環境や被災の状況などを含めた就業条件を石川県ナースセンター(以下、ナースセンター)と共有した。求職者があった場合は、ナースセンターからメールで連絡が入る。上野有子総看護師長は「求職者との間に必ずナースセンターが入ることで、まだ断水が続いているなど厳しい状況も伝えていただき、また、求職者の細かい情報も教えていただけた」と振り返る。ナースセンターの仲介により、受け入れる病院側の状況や求職者側の要望などの聞き取りがスムーズにできたことで、県外から2人の看護師が採用となった。
採用された看護師の矢板沙緒里さんは、以前の勤務先が各地の災害支援を行っていた経験から、自分にできることはないかと能登プロジェクトに応募。「厳しい被災状況を明確に伝えていただけたので、それでも行こうと決心できた」と語る。もう一人の鈴木洋子さんは、東日本大震災で被災者となった経験から応募を決めた。
地震から半年が経ち、被災者の仮設住宅への入居が始まり住居環境の変化が生じる中で、個人それぞれの暮らしも踏まえた対応が必要となる。矢板さんも鈴木さんも、平時と異なる患者や家族のニーズを把握しながら日々の看護を提供している。今後について鈴木さんは「地域医療に関わりながら、災害に対峙できるようなスキルを身に付けていきたい」と、意欲的に語った。

第55回(2024年度)日本看護学会学術集会事前参加登録
7月16日(火)開始

ky_20240715_4第55回(2024年度)日本看護学会学術集会を「健康危機における看護の真骨頂~経験を糧に、次のステージへ~」の大会テーマの基、9月27日(金)~29日(日)に熊本城ホールにて開催します。
今学会より、会期が年1回、3日間の開催になるとともに、より多くの皆さまにご参加いただけるよう、参加登録費も改定しました。
また、看護職の実践に根差した研究を推進するため、新たに「実践報告」の種別を設けました。
本年度の学術集会は、健康危機における看護の重要性や役割を深く掘り下げ、最新の臨床経験や研究成果を共有する貴重な機会となることを目指しています。各種講演や一般演題の発表を通じて、参加者の皆さまとともに、看護のさらなる発展に向けた議論を展開し、次のステージへの道筋を探ります。
事前参加登録は8月30日(金)まで受け付けています。一部の講演は後日オンデマンド配信を行いますので、オンデマンド視聴を希望する方も参加登録期間内にご登録ください。
多くの皆さまのご参加を心よりお待ちしています(8面に関連記事)。