協会ニュース2024年2月号

令和6年能登半島地震 災害支援ナースを延べ2,510人派遣
いのちと暮らしをまもるための支援を実施

 

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1月1日に発生した令和6年能登半島地震では、最大震度7を観測し、石川県は能登半島を中心に甚大な被害を受けた。本会は、発災直後から被災地域の各県看護協会、厚生労働省などと連絡を取り、1日夜には、高橋弘枝会長を本部長とする危機管理対策本部を設置した。石川県看護協会は5日から、災害支援ナースの県内派遣(災害対応区分レベル1)を開始。14日までに避難所3カ所に延べ58人を派遣し、避難者の支援などにあたった。
本会の危機管理対策本部は6日、被害が広域にわたり支援が長期化するとの判断から、災害支援区分を全国派遣とする最大のレベル3に引き上げ、被害の大きい珠洲市、鳳珠郡穴水町、輪島市の病院に災害支援ナースの派遣を開始した。災害支援ナースは、余震など地震の影響が残る中、悪路に阻まれながら金沢市から現地まで5時間以上を要して夜間に到着。すぐに準夜勤から病棟支援などを開始し、被災地の看護職を支援した。また同日、本会は石川県庁に職員2人、7日からは1人を交代で継続して派遣。県庁の保健医療福祉調整本部において、県担当者、石川県看護協会役員、厚生労働省とともに災害支援ナースの派遣先の調整や派遣対応、本会危機管理対策本部との連携などを実施している。
8日からは、石川県が金沢市、小松市内に開設する3カ所の1.5次避難所の運営支援を行う石川県看護協会に対して、本会からも職員を派遣して対応している。
10日以降は、災害支援ナースの派遣先を避難所、1.5次避難所に拡大し、2月9日までに延べ2,510人の災害支援ナースを派遣。各避難所では、新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染者への対応と感染拡大防止のための活動の他、医療を必要とする避難者の受診支援や医療チームへの橋渡し、車中泊をする方などへのDVT予防、避難所の環境整備などを実施。さらに、今後の生活も見据えながら、関係機関との連携、調整なども行い、各地域の避難者の状況やニーズに応じた、いのちと暮らしをまもるための支援を多岐にわたり実施している(詳細は本会HP「令和6年能登半島地震関連情報」活動報告を参照)。
地震発生から1カ月が経過し、インフラの復旧や2次避難など進められているが、高齢化が進む地域での医療・介護の継続は今後の大きな課題となる。本会は都道府県看護協会と連携し、中長期的な対応を検討しながら被災地を引き続き支援していく。

支援のバトンをつなぐ災害支援ナース

医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 看護師長 大井里美さん

ky_20240216_1_31月12~15日に七尾市の中島小学校、2月2~5日に金沢市のいしかわ総合スポーツセンター(1.5次避難所)で活動した大井里美さん。
中島小学校は、約200人の避難者がおり、そこに2人の災害支援ナースが派遣された。発災後10日以上を経過してもなお、断水が続き、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止が大きな課題となっていた。限られた人数ではあるが、さまざまな医療チームやボランティアと役割を分担し、看護師として優先的に行うことに尽力できるよう留意した。例えば、洗面台の環境整備などは、ボランティアと連携して行った。大井さんは「医療の知識がなくても、目的を明確に伝えればできることはたくさんある。今回、ボランティアの皆さまには本当に助けられた」と話す。
避難所では保健室に常駐し、医療が必要な避難者の対応を行った。また、悩みや不安をため込まずに、気軽に話してほしいという思いから、メンタルケアを行うための「看護師だより」を作成して掲示板で周知した。書いて貼るだけではなく、自ら避難者に声をかけるなど、合わせて働きかけを行うことも大事なことだ。それによって、避難者のニーズを把握することもできたという。
1.5次避難所では、38人の災害支援ナースが派遣され、大井さんは統括リーダーとして活動した。この2カ所の支援活動で共通して重要だったことは「避難所はあくまでも生活の場でもあることを忘れずに支援活動をすることだ」と話す。病院と同じように個々の状態を全て把握して対応しようとすると、避難者の生活に介入しすぎてしまう。統括リーダーとして活動する中では、避難者の健康レベルの維持だけでなく、個々の生活を尊重する視点を持って対応することをチーム内に意識付けた。また大井さんは「4日間という時間でできる支援は限られている。だからこそ、避難者の先々の暮らしを見据えながら、災害支援ナース一人ひとりが、活動をしっかりとつないでいくことが大切である」と語る。現在も石川県内の各避難所では災害支援ナースによる支援のバトンがつながれている。

石川県内の看護職の支援と地域の看護職確保を目指して

ナースセンターの取り組み

石川県看護協会・ナースセンターでは、地震発生後の早期より、災害支援ナースの派遣と合わせて、地域で必要とされる看護職の確保と、石川県内の看護職の支援に動き始めている。
まず、3カ所の1.5次避難所(いしかわ総合スポーツセンター、産業展示館2号館、小松総合体育館)について、石川県看護協会は石川県より開設の依頼を受け、避難所における看護師の役割、医療を継続するための地域の医療機関との連携体制、24時間の看護体制など業務フローの基盤整理を行った。この1.5次避難所で、災害支援ナースが支援に入る前の1月8日から、実際に被災者の支援にあたっているのが、石川県ナースセンターが一人ひとりに声かけして集めた潜在看護職や、定年退職後のプラチナナースである。2月5日までに延べ359人が派遣され、災害支援ナースや他組織の医療職、介護職などと協力しながら交代制のシフトを組んで、支援を継続している。
また、石川県ナースセンターでは、被害が甚大であった奥能登地域と目下、支援の受け皿となっている金沢市、双方の医療機関、訪問看護ステーション、介護施設などから聞き取りを行った。病院側としては、看護職の疲弊や病床マネジメントの困難性などの看護管理上の多くの問題を抱えている。看護職側は、疲弊や被災により奥能登地域を離れざるを得ない、または全壊、半壊した施設の復帰の目途が立たないため職を失うなどの深刻な問題を抱えており、看護職の意向に沿った就業支援が急がれることから、今後、きめ細やかに支援を継続していく。本会も国、県行政と連携しながら、県協会の取り組みを支援していく。

就業について困っている看護職の方、看護職の雇用について相談したい医療機関、施設などの方は石川県ナースセンターにご相談を。
TEL:076-225-7771 FAX:076-225-7788
Eメール:ishikawa@nurse-center.net