「看護職の生涯学習支援ガイドライン」公表
「看護職の生涯学習ガイドライン」(以下、ガイドライン)を、令和5年度日本看護協会通常総会(6月7日開催)の会場で公表した。
今後は、ガイドラインに示す考え方に基づき生涯学習の取り組みが進むよう、引き続き生涯学習支援体制の構築を進めていく。
ガイドラインの位置づけ~全ての看護職を対象に~
ガイドラインは、看護職個人、看護職を雇用している組織、看護職の生涯学習支援などを行う機関を対象としている。そのうち、看護職個人については、看護職(保健師・助産師・看護師・准看護師)の免許を持つ全ての者(休職中・離職中も含む)が対象である。
ガイドラインは、看護職の倫理綱領や看護職に関わる法令を踏まえ、看護職の生涯学習の考え方を示すものであり、また「継続教育の基準ver.2」に代わる、生涯学習支援の指針である。
ガイドライン作成の背景
少子高齢化、人々の価値観の変化などにより人々の健康問題は複雑化・多様化し、看護職はこれらのニーズに応えるための能力を身に付ける必要がある。また、看護職の働き方や働く組織・領域が多様化し、就業年数が長くなるとともに、個人のキャリア形成に関する考え方や組織の人材育成に関する考え方が変化している。さらに「職業能力開発促進法」の改正では、働く個人と働く人を雇用する組織における職業能力の開発・向上の義務が明記された。このように変化する時代において、看護職自身が活躍し続けるためには、自身のキャリアデザイン(職業生活設計)を行い、学びについては自分の責任で取り組むという自律性や主体性がより一層求められる。
このことは、看護職の倫理綱領において「看護職は、常に、個人の責任として継続学習による能力の開発・維持・向上に努める」と示していることと合致する。
また、看護職を雇用している組織によるキャリア形成支援や人材戦略の考え方では「組織は、組織の目指す方向性と働く個人の方向性をすり合わせつつ、互いに自立し、ともに成長していくことを目指す」と変化している。そのため、看護職の生涯学習の推進では、看護職を雇用している組織はもとより、関係するさまざまな機関も生涯学習支援について理解する必要がある。
このような背景から、看護職の生涯学習および生涯学習支援に関する考え方を示すため、新たにガイドラインを作成した。
ガイドラインで示す考え方
ガイドラインの構成は下記※1の通り。ガイドラインの公表を契機に、従来使用していた「継続教育」という用語から、看護職の主体的な活動を意味する「生涯学習」および「生涯学習支援」を主な用語として用いることとした。そして、ガイドラインにおいて「生涯学習」を「人々の健康に寄与することを目的に、看護職個人が主体となって、看護職としての行動や知識・技術等の能力の開発・維持・向上を図るために行う多様な学習活動」とし、その生涯学習を支える「生涯学習支援」を「看護職を雇用している組織や多様な機関等が、看護職個人の主体性を尊重して生涯学習を支援するために行う活動」と定義した。ガイドラインでは、看護職自身や支援する関係者など、全員が共通認識すべき点を、基本的な考え方として下記※2を提示した。
※1 ガイドラインの構成
- 本ガイドラインの目的
- 本ガイドラインの対象
- 本ガイドラインの用語の定義
- 本ガイドラインの基本的考え方
- 看護職個人の生涯学習への取り組み
- 看護職を雇用している組織の取り組み
- 生涯学習支援やキャリア形成支援等を行う機関の取り組み
※2 基本的考え方
- 生涯学習は、看護職個人が主体となって行う
- 生涯学習は、生涯にわたり行う
- 生涯学習は、学んだことを実践に活かし、実践から学ぶという循環によって行う
- 生涯学習は、看護職個人の責務として行う
- 生涯学習支援は、個人の主体性を尊重し行う
- 生涯学習支援は、看護職を雇用している組織等の責務として行う
- 生涯学習支援やキャリア形成支援等を行う機関は、看護職個人と雇用している組織の双方を支援する
「看護師の学びサポートブック」と「生涯学習支援ガイドブック」
本会では、ガイドラインに示した考え方に基づく生涯学習を支援するため、看護師向けの「看護師のまなびサポートブック」(以下サポートブック)と看護職を雇用している組織向けの「生涯学習支援ガイドブック」(以下、支援ガイドブック)を合わせて公表した。
また、ガイドラインの考え方の普及とサポートブック、支援ガイドブックの活用促進のため、本紙8・9月合併号の特集のほか、機関誌「看護」(8月、9月号)での特集、日本看護学会学術集会でのセミナー、本会HPでの動画配信などを予定している。
さらに、2024年2月に開催予定の「日本看護サミット2023」は、生涯学習支援をテーマに開催する予定である。
ぜひ全ての看護職の生涯学習の羅針盤となる「看護職の生涯学習支援ガイドライン」をご活用いただきたい。