吉森 容子さん

吉森 容子さん  母性看護専門看護師 

所属施設

新潟県済生会三条病院 看護部 看護部長室
地域に根ざした医療の提供を目指す地域の中核病院
新潟県三条市大野畑6-18
病床数:199床
年間分娩件数:約300件 
看護師数:193名 専門看護師1名 認定看護師5名

資格取得までの道

医療短大助産学専攻科修了後、現在の所属施設へ入職、産婦人科病棟に勤務し、幅広い年代を対象とした看護実践から、女性の生涯を通した支援に関する知識を深めたいと考え大学院へ入学、2014年資格取得。

活動紹介

近年、周産期領域では、少子、晩婚化を背景に、身体的、社会的側面におけるハイリスクケースが増加し、複雑で解決困難な対象に対する高度実践の必要性が高まっている。母性看護専門看護師として、周産期を中心に、水準の高い看護を効率よく提供できるよう活動している。主な役割は、周産期の母子援助、女性の健康への援助があげられ、生涯を通した女性と家族に対する支援が求められている。現在は、専従ポジションとして、産婦人科領域のコンサルテーションや実践、周産期のハイリスク事例に対する地域連携の調整を中心に、教育委員やDV・虐待防止委員、倫理コンサルテーションチームリーダー(2020年4月より活動開始)を担い組織を横断的に活動している。
また、大学院ではウィメンズヘルスを学び、資格取得後は、周産期領域及びリプロダクティブヘルスの視点での実践を積み重ねてきた。今回、ウィメンズヘルスにおける実践事例を中心として以下に述べる。
1.専門看護外来・ウィメンズヘルス外来の立ち上げと実践
ハイリスク事例として、受け持ち助産師と協働し関わっていた精神疾患合併と精神発達遅滞のある妊婦と夫に対し、産後の継続した家族計画支援が急務となった。女性の健康問題への専門的支援の場のないことを課題と捉え、2017年3月にCNSによる専門看護外来・ウィメンズヘルス外来を立ち上げた。対象は、周産期のハイリスク事例をはじめとし、思春期の予期しない妊娠と性感染症の予防に向けた性行動の選択や意思決定支援、月経に関連したPMS、更年期症状、子宮脱、セクシャリティーに関する悩みなど多岐に渡る。Women’s Centered Care(女性を中心にしたケア)に基づき、女性のセルフケア能力と健康アウトカムの向上、リプロダクティブヘルス支援を目的とし、健康問題に対する支援を行っている。これまでにウィメンズヘルスに関連した相談や、専門家に支援を受ける機会や知識がなく、パートナーとの関係性や月経痛に悩む精神発達遅滞のあるケースなどにおいて、地域やMSWからのコンサルテーションがきっかけで受診につながるケースもあった。本人の同意を得て医師、MSW、地域と多職種連携をはかり、調整機能を駆使し役割を発揮している。年間約60件の外来を実施し、実践の積み重ねと看護介入の効果を可視化し成果を示していくことが今後の課題である。
2.スタッフと協働し実践する性教育・一般市民への教育活動の取り組み
正しい性知識の習得と、命について考えることを目的とし、国際セクシャリティー教育ガイダンスに基づいた包括的な内容で、発達段階に沿った性教育を年間約30件を実践している。また思春期・更年期・老年期にある一般市民の女性に向けた健康教室を女性のセルフモニタリングとセルフケア能力の向上を目標に年間3件の教室を開催している。婦人科やウィメンズヘルス外来の受診に繋がるケースもあり、セルフモニタリングの向上になっている。これらの取り組みは地域、学校との連携をはかると同時に、組織のシステム構築及び助産師ラダーの評価項目に掲げ、実践後は振り返りを行いフィードバックすることで、チームの助産師のウィメンズヘルスケア能力向上に向けた教育にもつなげている。今後は、ニーズを捉えた教育を継続しながら、セルフケアへの影響などライフステージの課題や教育効果を可視化し、組織や地域へ示していくことが課題である。

護部長らと

所属施設上司から受けた支援

資格取得までは病棟勤務を継続しながら、夜勤や休日など勤務調整のサポートを受け大学院で学んだ。CNS資格取得前から、現状分析に基づく課題や、それらを踏まえたCNS活動の具体を管理者に伝え、ディスカッションの場を得ていた事は、資格取得後の専門外来や委員会の立上げや一般市民への教育支援など、組織に向けた取り組みに繋がっている。さらに、活動時間の確保や専従ポジションを得たことで、組織、地域における調整が円滑となると同時に、倫理調整や教育などCNSとしての役割発揮の機会が以前より増加した。現在も、常にディスカッションできる環境であることへ感謝し、今後もチームで対象となる人々へ最善となるケアの提供を目指し、組織と地域に向けた実践の成果を示していくことが役割であると考える。

上司からのメッセージ
金安 弘子さん  (新潟県済生会三条病院 看護部長)

当院が地域に果たすべき役割から考えても、母性看護専門看護師の存在はとても大きな意義があると考えている。管理者として専門看護師が活動しやすい環境を作ることを一番に考え、所属場所の変更や活動日の調整などを行い、最終的に専従業務とした。活動においては「現場スタッフの目線でともに考える姿勢」の重要性を伝え、本人の意向を尊重し様々な取り組みを支援している。ウィメンズヘルス外来、DV・虐待防止委員会の活動などにより、地域連携機関との連携が深まっている。また院内全体の倫理的問題への関わりは、院内多職種を巻き込んだ活動に発展している。スタッフの虐待や倫理的問題に関するスタッフの感性が確実に高まっていることを実感する。今後は地域への視点をさらに広げ、持ち前の創造性を発揮し、チャレンジしてほしい。そして、院内においても高い専門性を持つ身近な先輩として、スタッフのキャリア開発に大いに刺激を与える存在となってほしい。

(2020年7月3日掲載)

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