曽我 智子さん

曽我 智子さん  地域看護専門看護師 

活動風景
活動風景

所属施設

社会福祉法人泉大津市社会福祉協議会 地域包括支援センター
所属施設の概要 :2006年から泉大津市より地域包括支援センターを受託
保健師2名、看護師1名、社会福祉士2名、主任ケアマネジャー2名、他ケアマネジャーが在籍

資格取得までの道

保健センターで4年間保健師業務に従事した後退職し、青年海外協力隊に参加。帰国後、大学院修士課程(専門看護師養成課程)に進学。卒業後2006年に現在の所属施設に就職した。実践を積み重ねるうち、大学院の後輩の受験に感化され、2010年資格取得、2015年に資格更新。

活動紹介

地域包括支援センター(以下、支援センター)は、保健師・看護師、社会福祉士、主任ケアマネジャーの3職種が互いの専門性を生かしながら、住み慣れた地域で誰もが自分らしく生活・療養し、最期を迎えることができる地域包括ケアシステムの構築を目指し、個別の医療、介護、生活課題、ひいては地域課題の解決に向けて活動している。本市においても高齢化、世帯の縮小、家族や近隣とのつながりの希薄化が進んでおり、以前は家族や地域で解決できていた課題も解決が難しく、多様な世代が複雑化した課題を抱えている現状がある。また今後は、高齢者自身のセルフケア能力を高め介護予防に努めることだけでなく、家族、近隣住民、医療・介護専門職等の支え手の減少も見据えて支えあえる地域づくりを目指す必要がある。

支援センターの主な事業は総合相談支援、介護予防ケアマネジメント、ケアマネジャー支援、権利擁護、地域ケア会議の充実、認知症総合支援事業、在宅医療介護連携推進事業、生活支援体制整備事業他、多岐にわたるが、限られた専門職でそれぞれが協力し、また多機関多職種との連携を図りながら、効率的に展開できるように努める必要があり、それには「連携」が不可欠である。
そのため地域看護専門看護師として、相談対応やケアプラン作成、ケアマネジャー支援を通して個別事例における医療と介護の連携を図るとともに、地域全体のケア提供体制を構築するために、専門看護師の役割の1つである調整(コーディネーション)を駆使しながら多職種連携をすすめている。

本市では介護保険制度が始まった2000年から医師会の在宅医が医療・介護従事者を対象に在宅医療をテーマにした研修会を定期的に開催していた。2011年には医師会の在宅医に加えてケアマネ連絡会と訪問看護師の代表、そして支援センターが中心となり「イカロスネット(医療介護地域推進ネット)」を立ち上げた。私は支援センターの保健師・地域看護専門看護師として参画し、研修会の調整だけでなく、多機関多職種が協働で行うイベントや事業を企画・調整することで参加機関・職種を広げ、専門職同士の交流も深めてきた。またイカロスネットを推進するために定期的な世話人会(イカロスネット世話人会)も続けており、「地域連携を促進するためには, 顔がわかるだけではなく, 考え方や価値観, 人となりが分かるような多職種小グループでの話し合う機会を継続的に地域の中に構築することが有用であると考えられる※」とあるように、本市の多職種連携を進める原動力になっている。

イカロスネット世話人会
イカロスネット世話人会

このように在宅領域での医療と介護の連携は進んできているが、一方で病院医療と介護はまだまだ個別事例での連携にとどまっていることや、地域全体の看護職が顔の見える関係になっていないことを課題だと考えていた。そこで、2017年に本市の入退院連携の現状と課題を明らかにするためのアンケート調査をイカロスネット世話人会で企画・実施し、その結果に基づいて研修会を開催した。また課題について継続的に検討する場として、病院の医療ソーシャルワーカーと医師会、行政担当課、支援センターとの連携会議を立ち上げた。また2019年には地域の病院看護職と訪問看護ステーションから連携に関する現状と課題の聞き取りを行い、それを踏まえて地域の看護職の連携会を企画・実施した。このように、これまで様々な取り組みをしてきたが、その1つ1つが人と人、機関と機関をつなぎ、「重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい生活を人生の最後まで続けることができる」医療・看護・介護体制につながっていくよう今後も活動していきたい。

※Palliative Care Research 2012; 7(1): 323-33 森田他,地域緩和ケアにおける「顔の見える関係」とは何か?

行政担当課の保健師からのサポート

支援センターは泉大津市高齢介護課が主管課であり、担当課の保健師とは介護予防事業で協働している。事業を通して地域の現状・課題を明らかにし施策提言することが求められているが、支援センターだけでは難しく、担当課保健師との定期的な会議とともに、日々連携の中で随時意見交換できる環境を作っていただけていることが活動の大きなサポートになっている。

行政担当課の保健師からのメッセージ
山村 典弘さん  高齢介護課(地域包括支援センター委託元行政機関)保健師

多様な価値基準が散在する地域看護分野において、専門看護師の果たす役割を理解する人的環境が未整備である。そのような中、彼女は専門看護師が基軸にしている6つの役割を忠実に追求し、その具現化に余念がない。この姿勢が、地域包括支援センターの内外に限らず、さまざまな関係を構築し、ネットワークのキーマンとして活躍、的確な意見交換を助長し、円滑な業務遂行へとつながっている。特に、看護職のみではなく、多職種とのコンサルテーションは、倫理観の多角的視野で持ってなされるものであり、単なるスーパーバイズや相談とは異なる卓越した視準に基づいたとものとだと気付かされた。これらの恩恵を自然体で享受していたことを知る今だから言えることは、多職種連携の原動力の要として、一体的な関係性を構築できることを常に意識していることであり、関わる私たちの仲間意識への発展や意識向上につながっている。

(2020年6月18日掲載)

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