二宮 園美さん

二宮 園美さん  在宅看護専門看護師 

所属施設

兵庫県看護協会 尼崎訪問看護ステーション

県内に3か所ある兵庫県看護協会立の訪問看護ステーションの1つ。居宅介護支援事業所、訪問介護事業所を併設し、訪問看護、緩和ケア、皮膚排泄ケアの認定看護師6名を含む常勤換算18.3名の機能強化型機能をもつ大規模訪問看護ステーションである。

資格取得までの道

訪問看護認定看護師教育課程修了後、当ステーションの4人目の認定看護師として復帰した。しかし、複数の認定看護師がいる当ステーションであっても多問題や倫理的課題を抱えたケースへの支援に苦慮することが多く、更に在宅看護の質を向上させるためには、それら全体を牽引する役割を果たせる看護師が必要ではないかと考えた。それが専門看護師であろうと考え、進学することを決意した。
しかし、ステーション在職中に大学院へ進学した前例や規定がなかったため、進学のために一旦退職した。2017年大学院卒業後、改めて同ステーションへ再就職し、同年資格を取得した。

活動紹介

1.卒業後、復職する際に与えられた役割
私が大学院卒業後の復職について上司に連絡をした頃、施設所在地である尼崎市では地域包括ケアシステムを段階的に構築するため、必要な施策を推進し始めたところであった。その一つが認知症に対する「認知症初期集中支援チームによる支援」であり、これは看護師が中心となって取組むことが決定されていた。
私は再就職すると同時に、主業務と兼務してこの取組みに関わることを上司から命じられた私はこの業務に携わることにより、尼崎市の認知症に関する連携の仕組みづくりにおいて、専門看護師の役割機能を発揮できるのではないかと考えた。

2.チーム活動の概要
先ず訪問を主業務とする傍ら、この事業について参考文献や他のチームの情報を収集し、法人や自治体への説明資料を作成した。事業受託後は、事業所内の看護師、社会福祉士、介護福祉士ら6名の他、市内の病院医師・看護師、行政担当者でチームを構成し、認知症の疑いがあるが医療や介護サービスとはつながっていない等の基準に該当する支援対象者を市内の全地域包括支援センターからチームへ依頼する流れをつくった。
支援対象者は対象者本人やその家族からの相談よりも、地域住民や関係機関からの通報などで警察が関与することがきっかけとなりチームへつながることも多く、介入時は認知機能の低下により多くの生活障害を抱えている状況だと容易に推測できる、いわゆる支援困難ケースが多数であった。
チームは本人への連絡手段もままならない中、自宅訪問を重ね、本人と顔なじみとなり信頼関係を構築することを重視して関わった。そして対象者のフィジカルアセスメントを行い、認知機能評価を適切な医療機関に情報提供し支援へつなげた。同時に、離れている家族や地域住民に対して情報収集を行い、認知症理解が促進できるようにアプローチし、関係機関やサービスへ引き継いだ。

全体チーム会議の様子
全体チーム会議の様子

3.役割機能の発揮 
対象者への支援の特徴は、医療機関の受診や支援を拒否している状況、セルフネグレクトや虐待が疑われる状況、認知症の知識が乏しい家族や離れている家族への介入が必要なことであった。チームは医療面からの支援に強みがあったが、家族や多機関との関わりの中で認識のズレや優先順位の違いが生じた時には、チームの支援が医療面に偏らないように家族や多機関の意見の違いによる倫理的課題を把握し、その課題を解決できるように調整した。また、対象者毎に、関わる家族や地域住民、支援者の相談に対し電話や面談で対応した他、月1回開催する全体チーム会議では、関係者が認知症理解を深める有意義な会議となるように準備をした。
更に認知症サポート医の会議や行政会議で活動報告をおこない、チームが地域の資源となるように広報した結果、地域の医師との協力体制を構築できた。これらの報告内容は、会議参加者の医師や学識経験者に注目され、更に広域な会議や学会での発表依頼につながり、年次データをまとめて発表した。また、近隣自治体のチームとの情報交換を契機に新たな会議体を立ち上げ、現在は4市合同チーム会議の定期開催を行っている。

所属施設の管理者から受けたサポート

上司は訪問看護認定看護師であり、専門看護師の6つの役割機能を認識しているため、復職直後から大学院での学びを活かせる役割を与えられた。また、上司が代表者として出席している会議を傍聴する機会の提供や関係者への橋渡しをしてもらい、ネットワークを広げてもらった。上司から常に励まされ見守られている中で、役割発揮の場と裁量権を与えてもらったことが、専門看護師としての自信を生み、自分自身の成長となったことに心から感謝している。

上司からのメッセージ
並河 直子さん(兵庫県看護協会 尼崎訪問看護ステーション 所長/地域ケア事業部 部長)

全国の訪問看護ステーション数は1万か所以上に増加しましたが小規模事業所が多く、民間営利法人の比率が約50%と高い現状があり、訪問看護師の質の担保が大きな課題となっています。この状況の中、専門知識や技術に基づいた教育や地域の看護の質向上に努め、地域包括ケアシステムの構築の推進のためにCNSの役割は大きいと感じています。自ステーションには6名の認定看護師がいますが、CNSは訪問看護ステーション専属とせず、兼務の勤務形態で法人内を横断的に動けるように配置しました。コンサルテーションを中心に関わり、看護師の質向上はもとより、認定看護師のロールモデルとなっています。また、法人の枠を超えて、地域の訪問看護師の質向上の取組みである、兵庫県訪問看護ステーション教育支援強化事業の教育ステーションの総括的(事務局)な役割を担ってもらっています。今後もCNSとしての役割を効果的に果たせるよう支援していきたいと思います。

(2020年4月1日掲載)

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