仁宮 真紀さん

仁宮 真紀さん  小児看護専門看護師 

所属施設

心身障害児総合医療療育センター(看護指導部 研修研究担当看護主任)
東京都板橋区小茂根1丁目1番地10
医療型障害児入所施設:整肢療護園
療養介護施設:むらさき愛育園
病床数:240床(整肢療護園・むらさき愛育園)
標榜診療科:整形外科、小児科、リハビリテーション科、精神科、歯科
患者数:外来200人/日、入院220人/日
看護師数:170名 (小児看護専門看護師:2名)

資格取得までの道

前職を退職して大学院に進学。
2012年資格取得

短期入所を利用されているRくんとお母さまと一緒に
短期入所を利用されているRくんとお母さまと一緒に

活動事例の紹介

超低出生体重児や出産時のトラブルで脳障害となった子どもや、不慮の事故などで深刻な臓器損傷を受けた子どもは、新生児医療や救命医療の進歩によって人工呼吸器などのさまざまな医療デバイスを使用して生きていくことができるようになりました。気管切開や胃ろうなどいった医療的ケアを必要とする子どもたちも年々増加しています。しかし、このような子どもたちがその子なりに健やかに成長・発達していくためには、救命後の継続した手厚いケアやリハビリテーションが何よりも重要です。

当センターの整肢療護園は、小児整形病棟、長期生活病棟、在宅支援病棟、外来、手術室の5部門で構成されており、障害がある子どもの身体状態の安定化や身体機能向上へのケアはもちろんのこと、子どもと家族の将来を見据えた長期的な支援を行っています。障害がある子どもに対するこのような支援は療育とも呼ばれています。当センターには、整形外科的な手術を受けて歩行訓練を日々行っている子ども、親元を離れて長期入所する子ども、人工呼吸器を装着して意思表出が難しい子どもなど、さまざまな状態の子どもが入所したり、外来通院しています。障害がある子どもたちは身体的・心理的・社会的な個別性が高いため、看護師には、一人ひとりにあったケアを提供していくための高い実践能力が求められています。

しかし、障害があるが故に子どもの意思の判断は難しく、意思決定支援を含めた看護の方向性を考えていくうえで常に困難が伴います。具体的には、長期入所している子どもに対しては、家族と離れて過ごすことによる愛着障害をどのようにケアしていくべきか、親子入園や短期入所している子どもに対しては、将来的に気管切開や胃ろう造設を視野に入れる可能性があることをどのように伝えていくべきか、また在宅ケアの方法をどのように親と考えていくべきか、地域に戻った子どもと家族の暮らしをどのように支え続けていくかなどが、療育に携わる看護師が悩んだり葛藤したりする特徴的な事柄です。

当センターの看護師たちの悩みや葛藤を聞く中で、看護師が抱えている問題はそれぞれ内容は違いますが、その根本には「障害がある子どもの療育に携わるからこその悩み」という共通部分があるのではないかと分析しました。そして、看護師が自分たちの思いや考えを自由に語ることができる機会を作ることが必要だと考え、「つぶやき会」という会の開催を始めました。

専門部会の様子
専門部会の様子

この「つぶやき会」を数回続けていくなかで、施設で療育に携わる看護師の悩みや不安に対して、より専門的に対応していくための研修や勉強会の企画、そして研究活動をサポートすることを目的として専門部会を立ち上げました。専門部会は、小児看護専門看護師2名の他、障害児看護に関連した資格を取得している看護師の計7名で構成しています。活動内容としては、教育委員会と協働し、看護師の教育ニードが高いフィジカルアセスメント研修や、倫理研修、危険予知トレーニング、そして研究のサポートを行っています。看護師をはじめ施設職員が誰でも気軽に専門部会のメンバーと関わることができ、施設職員の不安や悩みを少しでも解決していけるように活動しています。

院内の看護研究発表会にて
院内の看護研究発表会にて

所属施設の管理者から受けた支援

私はCNSを取得してから約4年間病棟に所属し、2016年からセンター長より、CNSとして外部活動や院内の研修および研究に専従するという研修研究担当という役割を与えて頂き、看護指導部所属として勤務しています。

在宅支援病棟配属当時の病棟師長には、外部のCNS活動の時間調整に関して大変配慮して頂きました。濃厚な医療を必要とする子どもを対象とした短期入所や長期入所、親子入園が入る多機能な病棟であったので、各勤務帯の看護師配置のバランスなどが難しく、勤務調整が大変だったと思います。そのような中、私の時間調整の他にも病棟における活動も積極的にサポートして頂き、あたたかいお言葉をかけて頂いたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

看護科長には、整肢療護園での専門部会の立ち上げ時に全面的にバックアップをして頂きました。組織の中で新しい部門を設立できたのは、療育に携わる看護師教育に対する看護科長の熱き想いとご尽力のお陰であると考えています。また、常日頃よりCNSに対するご理解とご支援を頂いていることに大変感謝しております。

 

看護管理者からのメッセージ
川口 香織さん(心身障害児総合医療療育センター 整肢療護園 看護科長)

仁宮さんは、現在CNSとして組織横断的に看護師や他職種と連携をとりながら、専門部会で教育や研修・研究指導に携わっております。その成果として、楽しんで研究に取り組む看護師が増え、今年度は様々な学術集会や研究会で発表することができました。

仁宮さんの活動は、障害をもつお子さんやそのご家族への支援のみならず、“つぶやき会”を開催する等、看護師や療育職員と共に“障害児看護・療育の魅力を分かち合い、そして伝承したい”という想いで溢れています。これからも、お子さんやご家族に楽しい生活を送って頂けるような支援を模索しながら、その過程が職員の喜びにつながる看護療育を共に目指し続けたいと思っています。

(2019年5月8日掲載)

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