小塩 史子さん

小塩 史子さん  母性看護専門看護師 

所属施設

姫路赤十字病院・MFICU(母体・胎児集中治療室・看護師長)

兵庫県姫路市下手野1丁目12-1
病床数:560床
専門看護師数:3名 認定看護師数:25名

資格取得までの道

15年以上、助産師として母性看護に関わってきたが、自身のキャリアに物足りなさを感じ、今後のキャリアについて方向性を模索していた。また部署の教育担当者の役割を担う中で、研究や教育、倫理についてスタッフに指導するときに自身の能力の限界を感じていた。今後高度な実践を行う上で、さらなる向学が必要だと感じていた。
2013年に専門看護師(以下、CNS)を目指し、兵庫県立大学大学院に進学し、2015年に資格取得した。

活動紹介
週1日の活動日を中心に周産期領域を横断的に活動し、虐待やDV、精神疾患合併など複雑で解決困難な看護問題をもつ個人及びその家族を主たる対象として支援を行っている。またより水準の高い看護ケアを効率的に提供するために、これまで様々なチームを設立して新たなケアシステムの構築や調整を行い、チーム活動を通しスタッフの教育支援も行ってきた。具体的にはチーム設立、活動について管理者に説明し合意を得たり、チーム内外の多職種の役割を調整したり、メンバーの相談に応じたり、互いにエンパワーする機会を設けるなどを行っている。現在は直接的ケアも行うが、チーム活動を後方から支援し、自律的なチームづくりを行うことで、看護実践の活性化を推進する活動が主になっている。具体的な活動事例を以下に述べる。

1)産後うつ病スクリーニングシステムの構築
産後うつ病はおよそ10%の罹患率があり、妊産婦メンタルヘルス支援施策も強化されている。当院には精神科併設がなく、メンタルヘルスに対する看護職の高いアセスメント能力が求められていた。当初、当院では、産後うつに対し産後に対応することが多く、助産師の経験値に頼ったアセスメントで、経験の少ない助産師は対応に苦慮するなど、様々な問題を抱えていた。産後うつに早期から介入するためには妊娠期からスクリーニングする必要があり、また適切な能力を有した者が対応するなど、スクリーニングを適切に行うシステムの構築が必要だと考えた。そのためのチームを設立し、看護職のアセスメント能力向上に向けた研修会の開催や、様々な客観的なスクリーニング評価指標を加え、適切な時期、人、方法でスクリーニングを行うシステムの構築を行った。システム導入後は、妊娠期からリスクのある対象者をキャッチして院内外で継続して支援し、地域保健師との連携も導入前は5-7件/年であったが、導入後は20-30件/年に増えた。また、院内の臨床心理士と連携した対応もはじめた。現在は、地域の心療内科、精神科医師と連携できるシステムの構築に向けて新たに取り組んでいる。

2)超低出生体重児を出産した母親の母乳分泌増加・維持に向けたケアパッケージの提供
活動の契機は、周産期関連部署の看護職数名から、部署間で搾乳の指導が異なり、母親を混乱させている状況について相談を受けたことだった。周産期関連部署の看護職で話し合う機会をもち、ケア内容が異なるだけでなく、母乳分泌が低下するケースが多く、母親からも不安の声が上がっている現状が明らかになった。超低出生体重児にとって母乳は、成長・発達の面で最適な栄養であるため、母親の乳汁分泌増加・維持に向けたケアについて見直し、エビデンスに基づくケア提供を目標としたチームを設立して活動した。看護職に対し母乳分泌のメカニズムに関する知識の普及を図るとともに、最新のエビデンスに基づくケアパッケージを作成し、運用した。ケアパッケージの導入により、超低出生体重児の栄養における母乳率は80%から95%と上昇し、母親の乳汁分泌維持や児への最適な栄養を提供する点で成果を示せている。
現在は、チームメンバーに産科医師や小児科医師、薬剤師が加わり、多職種協働による母乳や授乳に対する水準の高いケア提供を目的とした活動に発展させ、チーム活動を継続している。

所属施設上司から受けた支援

CNSを目指したいと看護師長に相談した際に、上司が「頑張りなさい。組織としても母性看護専門看護師の役割は必要だと思う」とCNS挑戦に対する後押しがあった。また、大学院在学中に奨学金が受給される仕組みがつくられ、組織としてCNS育成への理解や支援があった。復職後も活動日の確保や、倫理に関連する委員会への参加、院外活動など上司の理解や支援、後押しがあったからこそCNSとしての役割発揮の機会を持つことができたと考える。CNSとしての活動に理解や支援をいただいていることに感謝し、今後も看護ケアの質向上に貢献し、実践の成果を示していきたい。

看護部長、看護副部長と
看護部長、看護副部長と

上司からのメッセージ
駒田 香苗さん(姫路赤十字病院 看護部長)

小塩さんには母性看護専門看護師の他、看護師長の職位にも就いてもらっている。それは、地域や組織の中で活動するには職位が必要であり、小塩さんは適任だと感じたからである。その期待通り、専門性を発揮しながら切れ目のない母子のための地域包括ケアの連携や虐待予防など精力的に取り組まれている。今後も役割を発揮し、母子を継続的に支える仕組みを整え、看護ケアの質向上につなげるよう期待している。

(2021年6月8日掲載)

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