永渕 美樹さん

永渕 美樹さん  慢性疾患看護専門看護師 

看護外来での支援
看護外来での支援

所属施設

佐賀大学医学部附属病院
佐賀市鍋島5丁目1番1号
看護職員数:710名
専門看護師数:4名
認定看護師数:22名

資格取得までの道

所属施設の自己啓発等休業制度を活用し、2年間の休職を取得し大学院へ進学。
2013年資格取得

活動事例及び所属施設上司からの支援について

慢性疾患看護専門看護師は、生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生きる人々へ慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する水準の高い看護を提供し、慢性疾患を持ちながらもQOLを高め、その人らしく生きることを支援します。慢性疾患看護は対象とする疾患が多岐にわたりますが、長期に続く療養、慢性性を理解した上での支援は異なる疾患でも共通する部分です。

疾病構造の変化から、急性期病院へ入院する患者の大半は慢性疾患の急性増悪が発端となることも少なくありません。そのような我が国の現状において私たち慢性疾患看護専門看護師は、慢性疾患とともに生きる患者が自身の生活の中でうまく疾患を自己コントロールし、急性増悪や合併症等の発症を可能な限り予防し、病状が進行した場合においても、患者自身の新たな生活を築くための支援を切れ目なく実施します。

私は、資格取得後より管理者の活動への支援により、部署所属ではなく看護管理室のスタッフとして看護部長の直属のラインのもとで日々活動しています。主に看護外来での個々の患者への療養支援や、病棟スタッフとともに入院中の慢性病患者の支援についてともに考えるコンサルテーション、また、教育委員として看護倫理や看護研究を中心に院内研修の企画や講師としてスタッフ教育へ参画しています。看護外来の実践では、常に、目の前の患者が、自己の疾患をどのようにとらえ、疾患とともにどのように自分の人生を歩まれてきたのか、またこれからどう歩んで行きたいと思っているのかを知ることを大切にしています。患者の思いを聴き、そこから必要な支援は何かをアセスメントし、実践しています。

多様な状況の患者の支援においては、私一人の力では解決困難なことも多いため、院内外の多職種と協働して患者への看護を提供しています。

院外活動としては、私が大学院へ進学した頃、佐賀県は糖尿病からの透析導入が非常に多い県でした。この現状を改善するために、県では糖尿病重症化予防対策への取り組みが開始されました。それが「佐賀県糖尿病コーディネート看護師育成・支援事業」です。

地域の開業医や保健師との事例検討会
地域の開業医や保健師との事例検討会

この事業は県内の糖尿病の基幹病院に所属し糖尿病に関する専門知識を有する看護師を、地域医療連携の橋渡し役である「糖尿病コーディネート看護師」として育成し、その活動を支援することで県内のどこでも質の高い糖尿病医療や療養支援を受けることができる体制を整備するものです。私は大学院在籍中から、本事業の企画や運営、コーディネート看護師の活動支援を行いました。復職時には看護部長へこの事業に継続して参画していきたいと相談したところ、「専門看護師は地域へ貢献することも重要な役割なので頑張りなさい」と継続することを快諾していただきました。現在ではこの事業は、連携対象医療機関の7割近い医療機関との連携が図れるようになり、県内の糖尿病医療連携が発展し、糖尿病からの透析導入患者も減少するなど、コーディネート看護師活動の成果が表れつつあります。

また、新たな対策として行政、医療機関、保険者が一体となり県内の糖尿病重症化予防に取り組む「ストップ糖尿病対策事業」も開始されました。この中でも糖尿病コーディネート看護師は重要な存在として位置づけられており、各地域で地域の保健師らと事例検討会等を開催するなど県内の様々な職種が連携し糖尿病患者のサポートが行える体制が整いつつあります。私はこれからも、看護外来での「個」の患者への支援も大切にしつつ、個々の患者の状況が患者を取り巻く医療体制の課題が影響しているのではないかと現状を俯瞰してみる姿勢を大切にしながら、慢性疾患患者の支援体制の構築へ寄与していきたいと思います。

上司からのメッセージ
藤満 幸子さん(副病院長 兼 看護部長)

看護部長と
看護部長と

永渕専門看護師は、慢性疾患看護専門看護師の資格を得てから、看護管理室の所属とし看護部長の直属としてのポジションでの役割を担っています。このポジションとした理由は、①慢性疾患看護は、外来・入院問わず病院全体の患者を対象とすること、②復帰前より佐賀県の事業として「佐賀県糖尿病コーディネート看護師育成・支援事業」に関わっていたこと、③今後、佐賀県肝疾患医療コーディネーターの役割等が期待されていたためです。現在では、主に、外来患者への対応および倫理的に難渋する院内の患者・家族や看護師への関わりや地域貢献に関すること、院内研修に関すること(主に看護研究)等とてもエネルギッシュに活動しています。

また、当院では、月1回専門看護師会を開催していますが、その中で自分たちの役割や情報共有をしながら、後輩専門看護師の育成にも積極的に関わってもらっています。
今後、永渕さんを含め専門看護師には、「看護の質」にこだわりを持ち、特に意思決定支援や倫理調整を中心に関わり、看護全体の貢献につながるような活動を今後も期待しています。

(2019年2月26日掲載)

前へ戻る