松本 佐知子さん

松本 佐知子さん  老人看護専門看護師 

同僚の課長(介護職)と打ち合わせ
同僚の課長(介護職)と打ち合わせ

所属施設

社会福祉法人聖隷福祉事業団 聖隷藤沢ウェルフェアタウン
藤沢エデンの園一番館 副園長
神奈川県藤沢市大庭5526-2
居室数209室(定員418名)
看護師数1名(専門看護師1名)

資格取得までの道

急性期病院および看護系大学で勤務ののち、大学院修士課程に進学。
大学院修了後は、療養病床を有する総合病院に就職。
2008年資格取得

活動事例

当ホームは、高齢者複合施設内にある住宅型有料老人ホームで、高齢者が自立しているうちに入居し、亡くなるまで暮らしていく“終の住処”です。

私はケア部門担当の副園長で、ホーム内で唯一の看護職です。主に入居者の健康管理に従事していますが、60歳代の元気な方から90歳を超えて老衰が進行した方まで入居しているので、ヘルスケアニーズは多岐にわたります。前者では健康寿命を延ばすための栄養・運動や社会活動等のニーズが高くなりますが、後者では老年症候群、治療による認知機能やIADL/ADLの低下などの有害事象の低減、よりよい死を迎えるための準備をしていくことが重要になります。

こうした幅広いニーズに対応するために、ホーム内の多職種、近隣の医療機関や介護事業所、さらには市民センターや小売店などとの連携を図るとともに、家族や友人のような入居者の心理・社会的支えとなる人々との協働もすすめています。加えて、高齢者の健康に関するエビデンスは、近年大きく変化しているので、最新の知見にキャッチアップし、ケアに生かすよう心がけています。

ケア方法の開発に向けたヒアリング
ケア方法の開発に向けたヒアリング

また、ホームでの生活は、長い人生の最後の段階における暮らしの場となることから、入居時からその人らしい生き方や価値観を探り、ケアに生かしていく取り組みにも力を入れています。その一つに、“End of Life ケアの質向上ツール”の開発があります。かねてより、新たなケア方法の開発には研究者との協働が必要と考えていたので、看護職・介護職と研究者でチームを作り、①高齢者の意思の尊重、②高齢者―家族―スタッフ間での情報の共有・連携の促進、③エビデンスを踏まえ標準化したケア、から構成されるツールを開発・導入しています。今後は、改変と評価を重ねながら、系列ホームへの展開を目指しています。

所属施設の上司から受けた支援

大学院修了後に療養病床で勤務するなかで、高齢者のEnd of Life ケアの実践をさらに深めたいと考えるようになり、現在の組織に転職しました。いずれの組織においても、初めての専門看護師の導入だったため、就職・転職の際には多くの方々に尽力いただいたと聞いています。

超高齢社会と言われて久しく、また医療機関でも高齢患者の占める割合が高いことから、高齢者のケアは特別なことではないのかもしれません。しかし、高齢者に特有なヘルスケアニーズは確実に存在し、これまでの職場の上司は、看護職以外であってもそのことを十分理解されていたと感じています。ですので、すぐに成果がでないような取り組みや研究であっても、患者・入居者の有益につながることが目標であれば、しっかりとサポートしてくれるので、大変ありがたいです。

現在の上司である総園長(事務職)も、そのような一人であり、私の意見にいつでも耳を傾け、看護職の私では気づかない視点や的確なアドバイスを与えてくれますし、迷っていると「やったらいいよ!」と後押ししてもらっています。同僚や部下も、現場に即した意見を出しつつ(ダメ出し含む!)、ともに進んでくれます。

また、今は実践家として現場で技術・能力を高めつつ、学術的な知識を修得するために博士課程(DNP;Doctor of Nursing Practiceコース)にも在籍しています。
この働き方と学び方の成果が、将来のよいケア方法の開発に繋がることを、総園長以下みんなが賛同してくれており、勤務シフトの調整や研究プロジェクトの実施等でも協力と支援をいただいています。
こうした様々なバックアップが、困難に直面しても仕事を続けていける支えになっていると感じています。

専門看護師としての経験を重ねるにつれ、これまで出会った患者・入居者と組織への感謝の気持ちが深くなりました。何らかの形で恩返しできるよう、これからもがんばっていきたいと思います。

上司からのメッセージ
山田 敬一さん(聖隷藤沢ウェルフェアタウン総園長・藤沢エデンの園一番館園長)

松本さんには、当ホームの副施設長としての運営マネジメントに加え、老人看護専門看護師として入居者に直接接する専門職、という二刀流での活動をお願いしています。

一般的に高齢者施設は、介護が中心で医療的ケアは医療機関や医師任せというのが現実かもしれません。当ホームでは、老人看護を専門的に学び、それらの深い知識と技術の裏付けにより的確な判断ができる松本さんの存在によって、入居者の医療的ケアにおける安心・安全が、高いレベルでの維持・確保に繋がっていると確信しています。

また、今後は松本さんをはじめとした老人看護専門看護師の活躍は、当ホームの中だけにとどまらず、地域における多職種連携の推進や地域包括ケアシステムの確立に大きく寄与するのではないかと期待しています。

(2019年2月26日掲載)

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