岡﨑 敦子さん

岡﨑 敦子さん  災害看護専門看護師 

短期入所を利用されているRくんとお母さまと一緒に
災害支援ナースへのオリエンテーション

所属施設

久留米大学病院 看護部
福岡県久留米市旭町67番地
病院病床数:23病棟、許可病床数1,025(一般972、精神53)床
看護師数:1,102名(専門看護師数:11名、認定看護師数:28名)

 

資格取得までの道

所属施設を一旦退職し、大学院へ進学
2017年資格取得

活動事例の紹介

災害看護専門看護師は、“人の命と暮らしを守る”ために、災害サイクルに合わせて限られた人的・物的資源の中でメンタルヘルスを含む適切な看護を提供できるよう、平時から多職種や行政等と連携・協働し、減災・防災体制の構築と災害看護の発展に貢献します。

私は、2005年福岡県西方沖地震をきっかけに “自分が住む地域を災害に強いまちにしたい”と思い、災害看護を学び始めました。様々な過去の災害から教訓を学び、災害時にどのような看護が必要なのか、災害看護の成果をどのように社会に発信できるかという課題を持って活動しています。

専門部会の様子
災害支援ナース派遣調整訓練の様子

今では、災害看護学は基礎看護教育の中に位置づけられていますが、臨床の看護師には知られていない分野でした。そこで私は2014年度から臨床の看護師を対象に災害看護教育を行い、同時に教育体制の研究を始めました。2016年「久留米大学病院災害看護ラダーVer.1」(4段階)を作成し、翌年には日本看護協会のクリニカルラダーに合わせた5段階へ修正し、新人看護師から看護管理者まで院内外で災害看護教育が“日常的な看護の質”を高めることを伝えています。また、教育と看護部防災対策委員会の活動を連携させたことで、今では、災害時を想定した普段からの環境整備「5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)活動」や「初期消火訓練」が組織の中に浸透してきています。

災害時には“災害支援ナース”として、被災地の病院や避難所・福祉避難所で活動することもあります。被災地の看護職の負担を軽減し、被災者の健康を維持することが目的です。行政や被災地内で活動する各支援団体等と調整を行い、被災者の自立に向けて支援します。特に地域の保健師や住民との連携を大切にし、時間軸を考慮して要支援者の把握や、深部静脈血栓症(DVT)や感染症、慢性疾患の悪化など2次的な合併症を予防できるよう、中・長期的な視点で支援活動に携わるよう心掛けています。

短期入所を利用されているRくんとお母さまと一緒に
被災地への出発式

災害看護は“個”を対象とする病院の看護とは異なり、“集団”を対象とするため、普段からの多職種との繋がりや地域のネットワークがとても大切です。例えば、人工透析、糖尿病、高血圧で治療が必要な方、オストメイトの方、妊産婦や乳幼児など、災害の影響を受け健康を損ないやすい方々を災害時要援護者と呼びます。災害時要援護者のニーズを把握し、困難な状況の中でも倫理的な配慮をしながら健康を維持するためには、外部支援者だけではうまくいきません。災害に見舞われた地域がどのような地域か、地域をよく知る看護職と相談し、時には住民同士や住民と行政、住民と支援者をつなぐ役割も必要です。調整役を担う際に気を付けていることは、被災地の方を誰も傷つけないことです。それぞれの立場の善意が、その後の被災地でシコリとならないよう、キーパーソンを見つけ、黒子になることも大切だと思っています。

活動開始時からいつも収束の時期を見据え、中・長期目標を立てて活動します。過去の活動では、災害支援ナースが派遣されている地域の状況を活動記録から横断的に把握し、支援活動の方向性を確認・調整し、支援の継続や収束の見極めができる情報を共有しました。日本中の災害支援ナースが、被災地で同じ目標に向かって活動し、成果を明確にできるシステム構築が今後の課題です。

所属施設の管理者から受けたサポートの事例

災害発生時には要請に応じて、迅速に勤務調整をし、支援活動に大変協力的です。また、被災地から戻ると、じっくりと話を聞き「看護って素晴らしい」と共感してもらうため、疲れが和らぎます。平時からの災害看護教育の重要性を理解し、活動の場を与えていただくだけでなく、組織に浸透させていく仕組みづくりを看護管理者から支えていただいています。

看護管理者からのメッセージ
上野 知昭さん(久留米大学病院 副院長兼看護部長)

岡﨑さんは、高度救命救急センターで8年間勤務し、平成29年より中央手術部で勤務しています。手術部の看護管理者およびスタッフは、九州で唯一の災害看護専門看護師としての使命を果たすことができるよう、派遣要請時は速やかに勤務を調整して協力しています。災害に対する平常時の備えの必要性を熱く語り、災害看護ラダー教育や手術室災害マニュアル改訂を行うなど、「災害に強いまちにしたい」「災害看護教育が“日常的な看護の質”を高める」という岡﨑さんの思いと行動力が周囲に良い影響を与えています。災害支援から帰院後の報告により、限られた期間で看護の視点でアセスメントを行い、計画・実践・評価を行い、行政や支援団体等と調整し、被災者の自立に向けてチーム活動できていることがわかります。今後も最大限の支援をしていきたいと考えます。

(2018年11月12日掲載)