協会ニュース2025年10月号

地域医療構想及び医療計画等に関する検討会の検討経過について

2024年12月に取りまとめられた「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」を踏まえて、「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」が本年7月に設置された。
2040年頃を見据えた新たな地域医療構想の具体的内容や、地域医療構想及び医療計画の推進などについて検討することが目的であり、橋本美穂常任理事が構成員として参画している。

医療機関機能の考え方

地域医療構想とは、中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目指すものであり、その実現に向けては診療報酬・介護報酬改定なども連動していく。
新たな地域医療構想では、病床機能に加えて、医療機関機能も報告することになる。医療機関機能とは、二次医療圏などを基礎とした地域ごとに求められる医療提供機能を示すものであり「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」に分けられる。地域において、いずれの機能を担っていくかを各医療機関は検討していくことになるが、検討会では、区域の人口規模や医療資源、医療提供状況などのデータを踏まえた整理の必要性が指摘されている。例えば、人口が多い地域では、多くの医療機関がある中での連携・再編・集約化を進め、効率的な医療提供体制を構築していくことや、「急性期拠点機能」を担う医療機関は、人口20~30万人ごとに1拠点確保することを目安とする案が議論されている。一方、人口の少ない地域では、持続可能な医療従事者の働き方や医療の質確保に資するような「急性期拠点機能」の確保が可能か否かを確認し、医療資源に応じた区域を設定することや、医療アクセスに課題がある区域はオンライン診療(D to P with N)の活用が提案されている。さらに、広域な観点の医療機関機能として、大学病院本院が担う「医育及び広域診療機能」が整理されることに関連し、本年9月に「特定機能病院のあり方に関するとりまとめ(特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会)」が公表された。
大学病院本院である特定機能病院については、医師派遣機能や地域の医療機関への学習機会の提供、看護師の実習受け入れ、特定行為研修の指定研修機関であることなどが求められる方向性が示された。

医療・介護の連携推進に向けて

また、85歳以上高齢者が増加する中で、医療と介護の連携推進も新たな地域医療構想の重要なポイントである。日本看護協会では、地域の介護施設などに対して、医療ケアなどに関する支援を行う病院が多数存在しており、病院規模に関わらず、専門性の高い看護師が訪問による支援などを実施している実態について調査結果を基に示している。さらに今後、このような取り組みを推進していくためには医療機関独自の取り組みだけでなく、都道府県単位での調整など、効率的な実施に係る体制整備が必要なことを強く主張している。検討会資料でも、病院に所属する専門性の高い看護師による介護施設などへの支援や調整機能について、その重要性が取り上げられたところである。
新たな地域医療構想は令和8年度診療報酬改定にも大きな影響を及ぼすものであり、これからの看護職を巡る状況の変化に直結していく。検討会での議論などについて、ぜひ関心を寄せていただきたい。

厚生労働省に緊急要望
地域の医療・看護を守り抜くために医療機関等への財政支援を

 

日本看護協会は10月7日、福岡資麿厚生労働大臣、森光敬子医政局長、間隆一郎保険局長に令和7年度補正予算および令和8年度診療報酬改定に関する緊急要望を提出した。

物価高騰に伴うコストの上昇が経営を著しく圧迫しているのに対し、診療報酬改定が物価や賃金の上昇に追い付いておらず、全産業と看護職員の給与の格差もより一層拡大している。このような課題に対応するために、財政支援に関する事項を緊急で要望した。秋山智弥会長は「月額給与が上がっても、賞与の据え置きや引き下げなどにより実質的な処遇改善になっておらず、他産業との給与差も広がっている。処遇改善がなされないと将来的な人材の確保も難しくなる」と訴えた。また夜勤手当について「夜勤従事者を確保するためにも処遇改善が必要だ。来年度の診療報酬を上げることはもちろんだが、現状を鑑みるとそこまで待てない状況にある。今年の補正予算に組み込むなど急ぎ対応をお願いしたい」と強く求めた。
森光医政局長は「このような状況をなんとかしないといけないと考えている。診療報酬改定、補正予算ともに上げていく基調にもっていく必要がある。賃上げができる体力をつけてもらえるようにしていきたい」との方向性を示した。間保険局長は「医療機関、とりわけ病院は厳しい状況にあり、明日というよりも今日の課題だ。看護職が医療を大きく支えている状況も把握している」とした上で「緊張感をもって状況の解決に取り組んでいきたい。人材流出につながらないよう、志のある人が働き続けられるようにしていく」と応じた。

 

日本看護サミット2025 参加募集中
ウェルビーイング時代における看護職の働き方革命

看護労働政策に関する課題と解決に向けた戦略を議論・提言・検証する場として「日本看護サミット2025」を開催します。前日には同じ横浜で、国際看護師協会(ICN)のインターナショナル・ワークフォースフォーラム(IWFF)が開催されることから、この機会をいかし、IWFF参加者が登壇するセッションも設けます。多くの皆さまのご参加をお待ちしています。
【日程】  2026年2月5日(木) 10:00~17:00
【会場】パシフィコ横浜 国立大ホール
※参加申し込みは特設サイトから