協会ニュース 2022年8・9月号

  • 看護補助者の確保・定着に向けて

    日本看護協会は、看護補助者との協働の推進を2022年度重点事業の一つとして掲げている。看護補助者の確保・定着が課題となる中、本年度は、看護管理者への情報発信、研修提供、標準研修を活用した確保・定着に向けたモデル事業などを進める。

    医療ニーズが多様化・複雑化する中、看護職員が専門性を発揮するために看護補助者との協働はこれまで以上に重要である。2024年4月の医師の時間外労働上限規制適用に向け、国を挙げて「タスク・シフト/シェア」が進められている。その中でも多職種それぞれの専門性を軸にした役割発揮が求められており、看護職員と看護補助者との適切な役割分担が不可欠となる。また、診療報酬においても、1994年に「看護補助加算」、2010年には急性期看護補助体制加算が新設され、それ以降、看護補助者の配置に対する評価は急速に進められてきた。

    本会は「看護補助者の活用推進のための看護管理者研修」の実施、「看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」の公表などを通して、看護補助者の活用を推進してきた。一方、現場ではその確保が困難な状況が続いており、本会はその確保・定着に取り組む。

    昨年度実施した病院やハローワーク等へのヒアリングなどにより、看護補助者の確保における現状と課題が見えてきた。まず、看護補助者という仕事が求職者に知られていないことがある。求人活動では、求職者が活用するハローワーク等に医療機関がアプローチしていないことや求職者にとって魅力的な情報が求人票に記載されていないことも課題に挙がった。また、就職しても「思っていた業務内容と異なる」ことを理由に定着しない場合も少なくない。これらより、医療機関が看護補助者や求職者の現状、希望する労働環境を把握すること、就業前に具体的な仕事内容を示した上で確保・定着に取り組むことが重要となる。さらに、就業後の課題として、看護補助者の教育は現場に任されており、各病院の負担となっている。安全で質の高い看護提供体制に向け、医療機関の負担を軽減しつつ、質を担保することが必要である。

    そこで本年度は、次の方策に取り組む。①都道府県看護協会と協働した看護管理者への看護補助者の確保・定着に向けた情報発信として、昨年度明らかになった現状や課題に対応するための資料やツールを提供する(下記参照)。また②看護補助者との協働推進に向け、看護職員を対象とした研修と看護補助者を対象とした標準研修をインターネット配信研修として実施。協働の在り方に関する看護職員への教育と、多様な背景を持つ看護補助者への標準的な教育により、医療機関の負担軽減と共に質の担保を図る。両研修は2022年の診療報酬改定で新設された「看護補助体制充実加算」の施設要件を満たす内容である。さらに③「看護補助者を対象とした標準研修」を活用した看護補助者の確保・定着に向けたモデル事業を実施する。都道府県看護協会とハローワークが連携し、求職者に看護補助者の職業内容の紹介と就業前の研修受講を支援し、就業につなげていくものである。モデル事業の効果検証を行い、今後の展開方法を検討する予定。

    看護職員の専門性の発揮には、看護補助者との協働は欠かせない。看護補助者の確保・定着に向け、本会が提供する情報や研修などをご活用いただきたい。