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協会ニュース 2022年3月号
看護の専門性に見合った処遇改善を
3月2日、第15回病院看護管理者懇談会を開催した。日本看護協会の2022年度の重点政策・重点事業のほか、看護の専門性発揮に資するタスク・シフト/シェア、看護職員の処遇改善などについて看護管理者団体の関係者らと情報共有した。日本私立医科大学協会病院部会看護部長会議の立場で出席し、処遇改善について、今回いち早く取り組んだ学校法人北里研究所北里大学病院の別府千恵副院長・看護部長に、あらためて話を聞いた。
「補助金は社会の評価」積極的な申請を
学校法人北里研究所北里大学病院
別府千恵副院長・看護部長

岸田内閣の下で看護職員の処遇改善が表明され、2月から看護職員等処遇改善事業補助金の交付申請手続きが始まっている。この補助金は「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関」を対象に、看護職員等の賃金を2〜9月の間は1%程度(月平均約4,000円)上げる仕組みで、10月からは診療報酬での措置として3%程度(同12,000円)上げる予定だ。
北里大学病院では、看護職員に対し、1%に相当する約4,000円を支給する。補助金の対象には他職種を含めることもできるが、別府副院長・看護部長は「補助金は看護職員1人当たりの人数で交付されるもの。今回、新型コロナウイルス感染症の対応で役割を担ったことに対する補助金であるため、最もフロントラインに立った看護職員に手当てされることは当然」と、強い自負を持って事務部門と調整した。その上で、自院の看護職員と他職種との賃金の比較データを作成し、経営会議で説明した。また、他の私立大学病院の申請状況を情報収集し、その中では7〜8割が看護職員のみを対象としていることなども共有した。
看護補助者については、看護職員と共に最前線でコロナ対応を行ったことから、金額は少額であっても配分の対象とした。派遣の看護補助者は補助金の対象外だったが、同院の予算で拠出してもらうことになった。
別府副院長・看護部長は、診療報酬は2年に1度改定があるため、申請に慎重な医療機関があることに理解を示しながらも「今回、看護が社会的基盤を支える職業だという社会的な理解や後押しがあって補助金事業に結び付いている」と指摘。コロナ禍において国民の生命や健康を守ってきた看護職員の活躍が、こうした評価につながったと考えている。長年、処遇改善には看護界として取り組んできた経緯もあり「岸田総理の強い意向で政府が看護職員の処遇改善に乗り出した。このようなチャンスは二度とないかもしれない」とし、「ここで看護管理者が動かず、補助金が使われなければ、そうした手当はいらないと判断され、今後の賃金の改善の動きも止まってしまう」と危惧する。将来の抜本的な処遇改善のためにも、まず補助金を申請することの意義を語った。
その上で「他職種と比較した給与の高低ではなく、看護職員として、そもそもこの給与でよいのかという議論も看護界として声を上げないといけない」と強調。看護職員は多くの患者やスタッフをマネジメントしており、その責任や専門性に見合った賃金を求めていく必要がある。今回の補助金事業をきっかけに、全国の看護職員が一丸となり、処遇改善に向けて動き出すことが必要だ。
学校法人北里研究所北里大学病院
(神奈川県相模原市)
- 病床数 1,185床(一般 1,143床、精神 42床)
- 看護職員数 1,497人 (2022年3月 現在)
- 看護職員平均年齢 31.7歳