協会ニュース 2022年1月号

2022年 年頭所感「専門職にふさわしい処遇の実現へ」日本看護協会 会長 福井トシ子

日本看護協会会長 福井トシ子 年始挨拶の時の画像

2022年、新しい年を迎えました。皆さまにおかれましては健やかに新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。

今年もまた、新型コロナウイルス感染症との闘いの中での年明けとなりました。まずは、ウイルス感染への不安と戦いつつ、医療現場の最前線で尽力されている全ての医療従事者に、また地域のあらゆる場所において国民に直接向き合ってケアを行ってきた看護職員の皆さまに、改めまして心より感謝と敬意を表します。

このコロナ禍を機に、医療提供体制の脆弱な部分が社会的にも認知されるようになりましたが、大本となる原因を是正しなくては、今後また同じ危機を繰り返すことは明らかです。日本看護協会といたしましては、平時からの十分な体制・配置があってこそ、有事でも的確に対応できる体制が確保できると考えています。

そもそも、安心・安全な医療提供体制は、病院等に勤務する各領域の医療従事者の専門的知識および技術に支えられており、看護職員もその一翼を担っています。

昨年、岸田総理大臣は、看護職員等は仕事内容に比して賃金の水準が長く抑えられてきたとし、収入増を図る方針を示しました。本会としても、この機会を捉え、専門職にふさわしい処遇の実現を目指して、さまざまな要望や働き掛けを行ってきました。当初、限定的であった看護職員の対象を拡大させ、公的価格評価検討委員会「中間整理」において、「今般の経済対策を踏まえ、まずは、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員について、収入を3%程度引き上げていくべきである」と記載されるところまでこぎ着けました。既に2021年度補正予算において2022年2〜9月の1%程度の引き上げは国からの補助金として措置されていますが、10月以降は2022年度の当初予算案において、診療報酬による3%程度の引き上げを行うことになっています。しかし、これはまだ全ての看護職員が対象とはなっていません。本会は、日本看護連盟などと連携して看護職員の賃金水準、賃金体系を改善し、段階的であっても、全ての看護職員を対象に十分な収入増を実現する恒久的な措置の導入を関係各所に引き続き強く求めていきます。

さらに、「中間整理」においては、本会が主張してきた「管理的立場にある看護師の賃金が相対的に低いこと」にも触れ、看護職員のキャリアアップに伴う処遇改善の在り方について検討すべきであることにも言及しています。今回、キャリアアップに伴う処遇改善にまで言及されたことは、私たち看護職員が長年にわたり、疑問視していた新入職時には他産業、他職種よりも高い賃金が30代以降には、夜勤手当を含めても逆転され、その後、ほとんど賃金が上がっていかないという「頭打ちの賃金カーブ」の改善の可能性が示されたと言えます。この賃金カーブの改善には、一律何%というベースアップだけでは対応できません。現在、多くの医療機関で導入されている年功型の賃金体系だけでは、職員の能力や役割、成果と必ずしも連動していないからです。そのため、キャリアアップに伴って賃金が上がる体系になっていないのです。ご自身の職場の賃金体系や賃金カーブがどうなっているか確認してください。

専門職にふさわしい処遇の実現を合言葉に、全国の看護職員が連携し、私たちの賃金改善に向けて動き出しましょう。

また、「中間整理」では、キャリアアップの観点から、ライフステージに対応した働き方により継続的に就労できることの重要性に触れ、そのためには、勤務環境の改善に積極的に取り組むべきとしています。

本会は、看護職員がやりがいを持ってキャリアを継続できるよう、本会の目的の一つでもある「看護職員が安心して働き続けられる環境づくり」を引き続き推進していきます。

今年2月に開催される日本看護サミット2021で、将来を見据えた看護職員の働き方についてぜひ一緒に考えましょう。2022年の干支「壬寅」には「厳しい冬を越えて芽吹き始める」という意味があります。私たちも一丸となってまた新しい第一歩を踏み出しましょう。