窪田 直美さん

窪田 直美さん  災害看護専門看護師

活動風景
活動風景

所属施設

地域医療振興協会 公立丹南病院 看護部 病棟師長
福井県鯖江市三六町1-2-31
病床数:179床(一般175、感染4)
災害拠点病院、14診療科

資格取得までの道

所属病院での常勤勤務を継続しながら、教育課程にて3年間就学
1年間の実践活動を経て2017年資格取得

取得動機と現在の活動

平成23年(2011)東日本大震災の被災地病院における支援活動での失敗経験が、災害看護を学び続けるきっかけである。私は第3陣の外部支援チームとして参加し、リーダーを任された。チームは全国の関連病院から召集されたメンバーで構成され、経験年数、災害支援経験の有無、性格等も多様だった。活動していく中で、津波粉塵での喘息で体調が悪くなる者、一人で行動してしまう者、チームメンバー同士でトラブルになる者など、リーダーシップを問われることが発生したが上手く対応できず、支援先の看護師に負担をかけてしまった。その後、自施設の災害対策チーム会が立ち上がり、副委員長として任命された。引き受けはしたものの、多部署の多職種の人々を集めて物事を伝えることに困難を感じ、災害の知識はもとよりパフォーマンス、プレゼンテーション力、説得力など力不足を痛感した。これらの経験が原動力となり災害看護専門看護師を取得しようと考えた。

災害訓練の様子①
災害訓練の様子①

資格取得後は、自施設の災害対策チーム会の年間計画を立案し、総合防災訓練・部署別訓練、看護部や在宅事業所での敎育研修、新卒者入職時研修を企画・実施・評価を行い、次の訓練や敎育研修に生かすように活動した。特に、透析室では全患者参加型の地震発生時における避難訓練を継続しており、部署担当者が主導して訓練を行なっている。患者は年に1度の訓練に参加することにより、安心にも繋がっていると評価している。有事には最良な行動ができないかもしれないが、在宅での避難行動指標になっているようである。また、BCP(事業継続計画)マニュアルやアクションカード整備でも、トップダウンでなく自分達が発災時に動けるようにイメージしてもらいながら、看護部だけでなく事務職や医療技術部も含めた全部署のメンバーが主体となって整備できることを目標に活動した。自分達の平時の業務や行動を考えて作成することで、少しでも実行可能なマニュアルやアクションカードになったのではないかと考える。特に、自施設も被災した平成30年(2018)2月の豪雪では、凍結による断水対応をしたり、職員が登院できないことで通常診療を中止し救急診療体制に変更したり、透析患者をタクシーで送迎したりと対応した。私は災害対策本部の立ち上げを促し、情報を集約し対応を検討した。その後経験を活かして雪害マニュアルを作成した。地域活動では、地区の子供達の要望で消防署の職場体験を企画・実施し、防災への興味を持つきっかけとなったようである。

災害訓練の様子②
災害訓練の様子②

さらに、平成30年7月豪雨災害においては、日本災害看護学会先遣隊の記録係として同行し、被災県の被災状況や情報を集約した。高齢化により在宅医療が推進される状況の中で、地域のコミュニティ力に課題があること、福祉との連携が不可欠であることを感じた。そして、今回消防団との繋がりで発災時の避難所支援を目的に市に「減災ナース」として委嘱された。これを機会に、子供や高齢者など地域住民に対する災害教育活動など、コミュニティ力の向上のためにも地域活動を推進していきたいと考えている。同時に、他地域の災害体験を活かせるように、災害看護専門看護師同士のネットワーク活動を推進し、連携を密にしていきたいと考えている。あらゆる「現場」での活動を大切に、目的と覚悟を持ち活動したいと思っている。

所属施設上司からの支援

病院長・看護部長をはじめ所属施設をあげて専門看護師としての活動に対する理解があり、活動時間の確保や勤務扱いでの被災地活動の参加、専門看護師としての職務手当等の支援を受けている。

 

看護管理者からのメッセージ
馬場 みゆきさん(看護部長)

当院は災害拠点病院の役割を担い、関連施設や地域における災害現場への人的・物的支援を行ってきた。その活動を通じて災害看護専門看護師教育課程に進むことを決断した窪田師長は、資格認定を経て、院内はもちろん地域、県外で幅広い活動を実践している。災害現場での体験や専門的知識を活かし、院内の災害対策チーム会を中心に主導し、院内防災訓練やマニュアル整備等について多職種連携を進めている。職員はこれらの活動を通じて、各職位での役割を考えて連携し、各職場の特性に応じて患者も巻き込んだ訓練を実施している。限られた資源の中で支援を提供する側と受ける側のメンタルヘルスを含む看護の提供とマネジメントに期待する。災害看護専門看護師には平時から多職種や行政等と連携・協働し、減災・防災体制の構築と災害看護の発展に貢献する役割が求められる。その活動を支えるために今後、看護管理者による活動環境の整備が必要と考える。

(2019年6月18日掲載)

 

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