鴨川 七重さん

鴨川 七重さん  遺伝看護専門看護師

遺伝カウンセリング
遺伝カウンセリング

所属施設

東海大学医学部付属病院 消化器外科内科病棟 主任 遺伝子診療科外来兼務
神奈川県伊勢原市下糟屋143
病床数:804床
看護師数1,100名(専門看護師16名 認定看護師54名)

資格取得までの道

医療短期大学卒業後、東海大学医学部付属病院に就職。
看護師9年目の時に東海大学健康科学部に編入し、そこで「遺伝看護」という領域に出会う。自身のキャリアデザインを考えていた13年目の時、遺伝看護の専門看護師(CNS)教育課程が認定されたことを知り、就業しながら大学院に進学。
2017年資格取得

活動事例

現在、病棟の主任として交代勤務を行いながら月に2回、家族性腫瘍外来を担当させていただいています。以下、活動を紹介します。
1)コンサルテーション・実践・調整
他病棟(小児科・成人内科混合病棟)の看護師から、遺伝性腫瘍の患者A氏と家族への支援の方法についての相談がありました。A氏の病態は終末期で、子どもが2人いました。私は、家族との別れがそう遠くないこの時期に、子どもたちに遺伝について伝えることのメリット・デメリットを考え、臨床遺伝専門医にも相談しながらA氏に関わりました。その結果、A氏から直接子どもたちに遺伝性腫瘍について伝えることができ、夫にも協力を得て、今後子どもたちを医療につなげる体制を整えることができました。

遺伝子診療科メンバー
遺伝子診療科メンバー

2)調整
当院は「地域がん診療連携拠点病院」であり、2018年に「がんゲノム医療連携病院」に指定されました。しかし、遺伝性腫瘍のリスクがある人を拾い上げる体制(遺伝性腫瘍の拾い上げ体制)は整っておらず、遺伝性腫瘍の人々のほとんどは、がんを発症してから医療機関を訪れ通常のがん医療を受けている現状があります。さらに今まで遺伝性のスクリーニングを目的に行われてきた遺伝学的検査ですが、今後は治療薬の効果予測のために広く利用されるようになり(コンパニオン診断)、遺伝性腫瘍の拾い上げを一気に進展させることに成り得る状況からも、体制整備は当院において早急に取りかかるべき課題と考えました。遺伝子診療科の医師と協働し、乳腺外科、消化器外科、婦人科の医師、看護師などへ説明会を実施し、意見を取り入れながら「遺伝性腫瘍の拾い上げフロー」や「乳癌のコンパニオン診断(BRCA Analysis)のフロー」を作成し運用を開始しました。

病棟責任者 佐藤さんと
病棟責任者 佐藤さんと

3)教育
本学の看護師キャリア支援センター主催のオープンセミナー「遺伝看護~遺伝医療にあなたの力を~」の講師や院外講師、学会シンポジストにお声をかけていただく機会が増えました。遺伝性疾患は多くの診療科が関連しています。そして何より現場の看護師の力がとても重要となってきます。遺伝看護とは特別な看護ではなく、日々臨床で実践している看護が遺伝看護につながっていることを、院内外の多くの看護師に知っていただき、興味・関心を持ってもらえるよう教育活動を行っています。

所属施設の管理者から受けたサポート

交代勤務要員の一人で、主任という立場にある私を、月に2回病棟外に出すことは容易なことではないと思いますが、上司は遺伝看護CNSの役割を理解し、勤務を組んでくださっています。
「遺伝看護」という領域は、新しい分野であり、上司もどのような領域で、私がどのような役割を担っているのか分からないところから始まりました。上司は、「遺伝カウンセリングというものがどのようなものなのか、遺伝看護CNSはどのような役割を担っているのか理解したい」と言い、セミナーに参加したり、実際に外来へ見学に来て理解しようと心がけてくださいました。さらに上司が理解したことを看護部の上司へ報告するなど、私の役割拡大、CNSとしての活動の時間確保にとても協力的、積極的に働きかけてくださっています。 
2018年度の本学の看護研究会学術集会のテーマは「未来につなぐ、社会とつながる、人をつなげる看護~遺伝看護の先駆けとしての役割~」でした。「遺伝医療における看護の役割」というテーマでシンポジウムも企画していただきました。所属部署の管理者はもちろん、看護部の方々の理解しようとしてくださる姿勢、ご協力に心より感謝しています。日々の病棟での役割、そして遺伝看護CNSとしてしっかり成果を出すことで、応えていきたいと思います。

 

看護管理者からのメッセージ
佐藤 政代さん(主任・病棟責任者)

所属する病棟は消化器外科内科病棟でがん患者さんが約7割を占めています。現在、月に2回遺伝看護専門看護師として家族性腫瘍外来を担当し、それ以外は病棟主任として活動しています。
がんゲノム医療は今後益々の発展が期待されており、当院の特徴をふまえた上で国の施策実現や地域へ貢献できるよう多職種と連携しゲノム医療体制の構築に取り組んでもらいたいと思います。同時に「個別化医療」を受ける患者や家族が抱える倫理的葛藤と向き合える看護師であってほしいと思います。また、それが病棟主任として活動する意味でもあると考えています。病棟において、主任として魅せる看護実践やスタッフ教育により、考える機会を提供し、看護のやりがいや楽しさの伝承と質向上につながっていると思います。
今後益々、遺伝看護専門看護師の需要は大きくなると予測され、両方の役割を担うことは容易なことではありませんが、それに応える力を持っていると思いますし、実現していけるよう支援していきたいと思います。

(2019年6月18日掲載)

 

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