協会ニュース2023年8・9月号

外来看護機能の強化に向けて

日本看護協会では、外来看護の実態調査や療養支援に関する研究の実施を通して、外来看護職員が活躍できる体制整備と診療報酬上の評価に向けた取り組みを行っている。
さらに、質の高い外来看護の提供に向けては人材育成が要となることから、「外来における在宅療養支援能力向上のための研修」を10月から開始する。

研修プログラムの開発経緯

入院医療と在宅医療の間に位置する外来医療が担う役割や機能は高度化・多様化しており、医療と生活の両面から支援を行える外来看護職員への期待はますます高まっている。

本会が2021年に行った「外来看護実態調査」では、外来看護職員は診療の補助はもとより、地域で暮らす人々の健康増進や重症化予防に向けた療養支援や相談対応、地域の専門職や行政、施設間との連絡調整など、さまざまな役割を担っていることが明らかとなった。

中でも在宅療養支援は、病気を持ちながら地域で暮らす人々への重症化予防として非常に重要であり、今後一層の強化が求められる。

しかし、多様な働き方の看護職員も多く、在宅療養支援を実践できる外来看護職員の育成が、看護管理者の大きな課題であることも明らかとなった。

そこで厚生労働省からの委託を受けて、2022年度に3病院・11診療所での試行実施を経て、「外来看護職員の在宅療養支援能力向上のための研修プログラム」を策定した。

研修プログラムの目的

本研修は病院と診療所の全ての外来看護職員を対象とし、在宅療養支援を行う上で基本的な能力を身に付ける研修として位置付けた。

特徴として、外来医療を巡る現状と課題、そして国の政策動向を踏まえて、自施設の外来看護の在り方を考えることを重視している点が挙げられる。

在宅療養支援の重要性はあらゆる場で普遍的なものだが、地域によって患者像や医療資源の整備状況、訪問看護や介護施設などとの連携状況も異なるため、地域で期待される機能と役割を十分に理解することが何よりも重要になる。

その上で、地域で暮らす人々を支え、重症化予防に向けた質の高い看護を提供していくための学びを積み重ねていくことが求められる。

そこで本研修の目的を、①外来看護を取り巻く現状と課題のもと、地域における自施設の外来が果たすべき役割と、自らが外来で担うべき役割を認識するとともに、外来患者を支えるために必要な在宅療養支援に関する知識を習得する②習得した知識を、在宅療養支援の強化に向けた取り組みに役立てることができるとした。

研修プログラムの内容

図1※1で示す通り、多忙な中でも受講しやすいよう200分のeラーニング講義と150分の演習を組み合わせた構成となっている。

講義は5章構成となっており、外来看護の現状や外来看護職員の役割、在宅療養支援の重要性、在宅療養を支える地域連携と意思決定支援、社会資源などについて学んだ後、演習(グループディスカッション)で、事例を基に意見交換や情報共有を行う。

また、講義での学びを深め、自身の外来看護を振り返るためにも、演習の事前課題として、外来看護に関する実践事例や課題に感じていることを簡潔にまとめることを求めている。

プログラム開発当初は、事前課題と演習に対する負担を懸念していたが、試行実施の結果、事前課題に要する時間も短く、療養支援の重要性を考えながら、自身の外来看護を振り返る貴重な機会として、非常に満足度の高い結果を得られた。特に演習での事例検討では、地域の医療提供体制における自施設の役割、患者・家族の置かれた状況の捉え方や提案する看護ケアの内容について、受講者よりさまざまな意見が出され、生き生きとした議論が行われた。

豊富な経験を持つ外来看護職員から新人看護職員までが、共にこれからの外来看護を語り合う姿に深い感銘を受けたとの声が、試行実施機関の看護管理者などから多く上がった。

※1 図1 外来における在宅療養支援能力向上のための研修プログラム協会ニュース20230809

「 外来における在宅療養支援能力向上のための研修」の提供開始

本会では外来看護機能、とりわけ在宅療養支援の強化に向け、効果的・効率的な学習を促進するための教育体制の整備が必須と考えており、その方策の一つとして、本研修プログラムの展開を二つの形で進めている。

一つ目は院内研修として行えるように、講義部分を本会オンデマンドで配信し、併せて各施設での演習を支援する手引きを提供する(10月2日より配信開始)。

二つ目は、施設での実施が難しい場合や個人での受講などに対応するため、いくつかの都道府県看護協会において実施予定。研修参加や問い合わせについては、都道府県看護協会で受け付けている。

ぜひ、外来看護への高まる期待に応えるべく「外来における在宅療養支援能力向上のための研修」をご活用いただきたい。