労働環境の整備の推進

看護職の労働安全衛生

看護職の健康おびやかすリスク

看護職の就業環境には、下記のようなさまざまなリスクがあります。これらの健康リスクへの対処がうまくいかない場合には、体調不良や病欠、離職につながることもあります。しかし、適切に対応すればリスクを減らすことができます。下記に看護職の心身の健康に影響を及ぼすリスクを紹介します。

労働形態・作業に伴うもの 夜勤・交代制勤務 看護職の夜勤・交代制勤務は、シフトが不規則で深夜労働を伴うため、心身や社会生活に大きな負担が掛かります。勤務時間の設定やシフトの組み方、休憩や仮眠の確保などで負担を軽減します。
腰痛 看護職は、半数以上が腰痛を経験しているといわれています。例えば、看護ケアに伴う無理な姿勢などは身体への負担が大きく、腰痛発症の原因になっています。腰痛予防対策としては、スライディングシートやリフトなどの機器の導入が有効です。
感染の危険を伴う
病原体へのばく露
感染症の患者さんに対する看護業務には、その病原体に感染するリスクが伴います。これらへの対策は、「労働安全衛生法」「医療法」などに基づいて講じられています。また、このほかにも最新のエビデンスに基づいたガイドラインを参考に院内感染マニュアルが整備されています。
施設内の化学的・物理的な危険要因によるもの 医薬品等へのばく露 抗がん剤、消毒薬、滅菌用ガスなどは、身体への付着や吸引によって健康障害が起きるリスクを伴います。対策としては、抗がん剤取り扱いマニュアル、ばく露時の対処マニュアルなどの整備、安全キャビネットの設置、保護具の使用などが有効です。
医療機器・材料の使用に関わるもの 電離放射線や殺菌用紫外線による被ばくのほか、手袋やカテーテルなどラテックス製品へのアレルギーなどにより、健康障害が引き起こされるリスクがあります。
メンタルヘルスへの影響 看護職は精神的な負担が大きく、ストレスによってメンタルヘルスに不調を来すリスクが高いとされています。不調時の対応はもちろん、職員のために相談窓口を設置するなど、予防的な取り組みが必要です。また、職員自身がストレスに気付き、ストレスに対処するための知識・方法を身に付けるなどセルフケアも重要です。
患者や第三者からの暴力 社会的に暴力の問題が増えており、看護職が働く職場も例外ではありません。患者さんやその家族などが職員に対して行う暴言・脅迫、暴力、セクシャルハラスメントなどの院内暴力には、組織的に対策に取り組む必要があります。相談窓口の設置、保安体制の整備、暴力発生時の対応マニュアルの整備などについても確認しましょう。
職場でのハラスメント ハラスメントとは、加害者の意図にかかわらず、言動により相手を不快な思いにさせたり、尊厳を傷つけたりすることです。医療の現場は、生命を左右するような緊張を伴う場面も多く、ハラスメントが起こりやすい職場であるといわれています。組織内でハラスメントを未然に防ぎ、起こってからもすぐに対応できる体制づくりが必要です。

出典:日本看護協会『はたさぽ ナースのはたらくサポートブック』を参考に作成

労働安全衛生の対策について

ここでは、看護職の労働安全衛生に関わる情報や対応策などをご紹介しています。

【参考】

日本看護協会では、2004年(平成16年)に看護職の社会経済福祉に関する指針を発行しました。労働安全衛生法の解説、看護職員の労働安全衛生管理として感染症、ラテックスアレルギー、シフトワーク、VDT作業等への対策およびメンタルヘルスケア、暴力対策・セクシュアルハラスメント防止などについて掲載しています。

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労働安全衛生法とは

安全な医療の提供は医療機関の責務です。個人の注意や努力はもちろん必要ですが、わずかなミスが大きな事故につながらないような体制づくりが重要です。看護職が健康で安全に働くことができて初めて、患者さんの安全が守られ、質の高い医療・看護を提供することができるのです。職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成、すなわち労働災害を防止するための法律が「労働安全衛生法」です。

労働安全衛生法に基づいた事業主の役割

事業主は、労働安全衛生法に基づいて、以下の措置を講じる必要があります。

  • 安全衛生管理体制を確立するため、事業場の規模等に応じ、安全管理者、衛生管理者及び産業医等の選任や安全衛生委員会等の設置が必要です。
  • 事業主は、労働者の危険または健康障害を防止するための措置を講じる必要があります。
  • 機械、危険物や有害物等の製造や取扱いに当たっては、危険防止のための基準を守る必要があります。
  • 労働者の就業に当たっては、安全衛生教育の実施や必要な資格の取得が必要です。
  • 事業主は、作業環境測定、健康診断等を行い、労働者の健康の保持増進を行う必要があります。
  • 事業主は、快適な職場環境の形成に努めなければなりません。

あなたの安全と健康を守る「労働安全衛生法」

労働安全衛生法の目的

この法律は、労働基準法とともに、労働災害防止基準の確立、
責任体制の明確化および自主的活動の促進の措置を講ずるなどにより、労働者の安全と健康を確保し、
快適な職場環境の形成を促進させることを目的としています。

労働安全衛生法 第1条

事業者に求められる責務

この法律では、あなたが働く施設(事業者)は、労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境をつくることと労働条件を改善することを通して、労働者の安全と健康を確保しなくてはならないと定めています。

労働安全衛生法 第3条

労働者にも求められる義務

この法律では、労働者も労働災害の防止に努め、施設(事業者)側が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するよう定めています。

労働安全衛生法 第4条

職場のリスクアセスメントについて

職場のリスクアセスメントとは、労働安全衛生に関する用語で、職場の潜在的な危険性または有害性を評価し、これを除去・軽減するための手法です。看護職が働く病院などの医療や介護の現場には、転倒や針刺し、腰痛などさまざまな労働災害の危険が潜んでいます。 リスクアセスメントの実施は、医療現場に潜む労働災害のリスクを知り、事前に事故・災害を防止するために有効です。

厚生労働省が発行している「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(1999年発行、2006年改正)」には、「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置」として、リスクアセスメントなどの実施が明記されており、2006年(平成18年)に、その実施が労働安全衛生法により努力義務化されました。また、その具体的な進め方については、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が公表されています。

【講習会のご案内】

中央労働災害防止協会が実施する「医療機関のためのリスクアセスメント研修」は、医療機関、医療業界、病院などの管理者、職場リーダーなどを対象にしており、医療機関等の労働災害や医療事故の事例紹介、演習などを通じて、リスクアセスメントの必要性や実際の対応方法について学ぶことができます。職場環境改善の一環として、この機会に取り組んでみてはいかがでしょうか。