看護職の倫理綱領

看護職の倫理綱領の表紙

日本看護協会は、1988年に我が国初の看護職の行動指針として「看護師の倫理規定」を作成しました。その後、2003年には、それまでの時代の変化に応じた内容に改訂し、「看護者の倫理綱領」として公表しました。

公表から17年が経過し、看護を取り巻く環境や社会情勢が大きく変化していることから見直しを行い、2021年3月に「看護職の倫理綱領」として公表するに至りました。
ご一読いただき、あらゆる場で活用していただけることを期待しています。

看護職の倫理綱領

英語訳の「看護職の倫理綱領」はこちらからPDF形式でダウンロードできます。
JNA CODE OF ETHICS FOR NURSES

  • 『携帯版 看護職の倫理綱領』の購入申し込みについては、下記をご覧ください。

 『携帯版 看護職の倫理綱領』販売のご案内

以下に主な改訂点を述べます。

1.名称について

タイトルを含め「看護者」を「看護職」の言葉に変更しました。これは、「看護に関わる主要な用語の解説 概念的定義・歴史的変遷・社会的文脈」(日本看護協会 2007年)(以下、「看護に関わる主要な用語の解説」)に記載の内容に照らして検討した結果です。「看護に関わる主要な用語の解説」において、「看護者」を「看護職の免許の有無を問わず、看護をする人を広く指す場合が多い」とし、「看護職」を「保健師・助産師・看護師・准看護師のいずれかもしくは複数の資格を持ち、看護の職務を担当する個人(者)をいう」としています。そこで、「看護職」の言葉がより適していると考え、「看護者」を「看護職」という言葉に変更しました。

2.構成について

  • 1)「前文」と「本文」の2つで構成

    「看護者の倫理綱領」は「前文」「条文」「解説」の3つで構成していましたが、看護職が本文のひとつひとつに対する意図まで十分な理解を深め、行動につなげることを目的に「看護職の倫理綱領」では「前文」と「本文」の2つで構成し、一体的な活用を勧めることとしました。

  • 2)本文中の用語に注釈を付記

    「看護職の倫理綱領」が読み手にとってわかりやすいものとなるよう「用語の注釈」を新たに追加しました。注釈を付ける用語の条件を、概念が抽象的あるいは本邦に浸透していないものとして、以下の3つの用語を選定しました。

    • 最高水準の健康を享受するという権利
    • パートナーシップ
    • ウェルビーイング
  • 3)本文16の追加

    近年、わが国では、自然災害が頻発し、平常時から災害発生直後、そして復興までの過程において生命と健康を守る活動が必要とされます。そのため、相次ぐ自然災害における看護職の行動指針について、本文16として新たに本文を追加しました。

3.本文について

  • 1)あらゆる場で活躍する看護職の行動指針となるような表現へ変更

    病院完結型医療から地域完結型医療への転換が進むにあたり、看護職の活躍の場は拡がっていますが、どのような場においても、看護職は適切な保健・医療・福祉を提供し、人々の生活の質が高まるように機能しなければなりません。そこで、看護職それぞれが、どのような場で活躍していたとしても、自身の行動指針として「看護職の倫理綱領」を読み解くことができるよう、全体の表現を見直し変更しました。

  • 2)看護職が人々の尊厳をまもり尊重することを強調

    医療の高度化や、治療・療養の場が病院から人々の住み慣れた地域に移行する中で、今後ますます看護職の活躍する場が拡大し、これまで以上に高い能力を発揮することが求められています。看護職はいつの時代においても、自身の役割や立場にかかわらず、対象となる人々のために最善を尽くすことが原則です。「看護職の倫理綱領」においては、本文で看護職は対象となる人々に対して責任があることを強調し、全体を通して看護のあらゆる場面で人々の尊厳をまもり尊重することをよりわかりやすく示しました。

  • 3)人々の権利に対する意識の変化を反映

    2003年の改訂からこれまでの間、医療の高度化や、人々の健康や人生に対する価値観の変容等に伴い、人々の権利に対する考えも多様化し、近年では最期までその人らしくよりよく生きることも権利と考えられています。
    「看護者の倫理綱領」では、看護職が人々の生命、尊厳、権利を尊重し行動することの重要性を述べていましたが、それに加えて今回の改訂では、人々の権利に対するこれらの変化を反映した表現としました。

  • 4)専門職として対象となる人々と適切な関係を構築することを追加

    「看護者の倫理綱領」では対象となる人々との間に築いた信頼関係に基づき看護を提供することを述べてきました。このことに加え、「看護職の倫理綱領」では、看護職と対象となる人々という支援上の関係を越えた個人的な関係に発展するような行動はしないと敢えて禁止の文章を用いて、専門職として適切な関係を築くという視点を追加しました。

  • 5)十分な話し合いを通じた合意形成である意思決定の視点へと変更

    「看護者の倫理綱領」では条文4および解説で、対象となる人々が自己の判断に基づき決定するために必要な支援について述べてきました。「看護職の倫理綱領」では、看護職が対象となる人の意向を尊重し、その家族や多職種等と十分な話し合いを通じて合意形成した上で、最善の選択ができるよう支援するという視点をもって改訂し内容を整理しました。

  • 6)人々に対する不利益や危害への対応についての視点を追加

    看護職は、多職種の中でも対象となる人々に近い存在であることから、不利益や危害にいち早く気づく立場にあります。また、人々の生命と健康をまもる専門職として、対象となる人々の尊厳を尊重し、権利を擁護する立場にいます。
    そこで、本文6において、看護職が人々の不利益等に気づいた際には、目を背けたりすることなく、専門職として適切に関与すべきであるという視点を加えた内容としました。

  • 7)多職種との有機的な連携と協働を強調

    地域で暮らす人々の健康を支えるためには、看護職は保健・医療・福祉関係者と連携・協働することが必要となります。「看護者の倫理綱領」条文9および解説では、より質の高い医療と看護のために看護職は自立した専門職として能力を最大限に発揮すると述べていました。「看護職の倫理綱領」では、多職種が効果的に連携するためには、相互理解を深めることを基盤に各々が能力を最大限に発揮することが大切であるという視点を加え表現を整理しました。

よりよいウェブサイトにするために
みなさまのご意見をお聞かせください