看護実践情報

看護者の倫理綱領

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【問合先】看護開発部  看護業務・医療安全課 電話03-5778-8548

前文

人々は、人間としての尊厳を維持し、健康で幸福であることを願っている。看護は、このような人間の普遍的なニーズに応え、 人々の健康な生活の実現に貢献することを使命としている。

看護は、あらゆる年代の個人、家族、集団、地域社会を対象とし、健康の保持増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和を行い、 生涯を通してその最期まで、その人らしく生を全うできるように援助を行うことを目的としている。

看護者は、看護職の免許によって看護を実践する権限を与えられた者であり、その社会的な責務を果たすため、 看護の実践にあたっては、人々の生きる権利、尊厳を保つ権利、敬意のこもった看護を受ける権利、平等な看護を 受ける権利などの人権を尊重することが求められる。

日本看護協会の『看護者の倫理綱領』は、病院、地域、学校、教育・研究機関、行政機関など、あらゆる場で 実践を行う看護者を対象とした行動指針であり、自己の実践を振り返る際の基盤を提供するものである。 また、看護の実践について専門職として引き受ける責任の範囲を、社会に対して明示するものである。

条文

解説

1.看護者は、人間の生命、人間としての尊厳及び権利を尊重する。

看護者の行動の基本は、人間の生命と尊厳の尊重である。看護者は、病院をはじめさまざまな施設や場において、 人々の健康と生活を支える援助専門職であり、人間の生と死という生命の根元にかかわる問題に直面することが多く、 その判断及び行動には高い倫理性が求められる。さらに、今日の科学技術の進歩はこれまで不可能であった医学的挑戦を可能にし、他方で医療費の抑制の問題は国家的課題になっており、 複雑かつ困難な生命倫理的問題や資源の平等な配分のあり方という問題を提起している。
看護者は、いかなる場面においても生命、人格、尊厳が守られることを判断及び行動の基本とし、自己決定を尊重し、 そのための情報提供と決定の機会の保障に努めるとともに、常に温かな人間的配慮をもって対応する。

2.看護者は、国籍、人種・民族、宗教、信条、年齢、性別及び性的指向、社会的地位、経済的状態、ライフスタイル、 健康問題の性質にかかわらず、対象となる人々に平等に看護を提供する。

すべての人々は、平等に医療や看護を受ける権利を有している。 看護における平等とは、単に等しく同じ看護を提供することではなく、その人の個別的特性やニーズに応じた看護を提供することである。 看護者は、人々をその国籍、人種・民族、宗教、信条、年齢、性別及び性的指向(同性愛・異性愛などの指向の別をいう)、 社会的地位、経済的状態、ライフスタイル、健康問題の性質によって差別しない。また、看護者は、個人の習慣、態度、文化的背景、 思想についてもこれを尊重し、受けとめる姿勢をもって対応する。

3.看護者は、対象となる人々との間に信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する。

看護は、対象となる人々との間に築かれる信頼関係を基盤として成立する。高度な知識や技術による看護行為は、 信頼関係のもとで初めて効果的な看護援助となりうる。看護者には、信頼関係を築き発展させるよう努める責任がある。 看護の援助過程においては、対象となる人々の考えや意向が反映されるように、積極的な参加を促すように努める。 看護者は、自らの実践について理解と同意を得るために十分な説明を行い、実施結果に責任をもつことを通して、 信頼を得るように努める。また、人々の顕在的潜在的能力に着目し、その能力を信頼し、忍耐をもって見守る。
さらに、看護者は、対象となる人々に対する忠実義務を有し、築かれた関係によって生まれる看護者への信頼感や依存心に 誠実に応えるように努める。

4.看護者は、人々の知る権利及び自己決定の権利を尊重し、その権利を擁護する。

人々は、自己の健康状態や治療などについて知る権利、十分な情報を得た上で医療や看護を選択する権利を有している。 看護者は、対象となる人々の知る権利及び自己決定の権利を擁護するために、十分な情報を得る機会や決定する機会を保障するように 努める。診療録や看護記録などの開示の求めに対しては、施設内の指針等に則り誠意をもって応じる。
自己の判断に基づき決定するためには、十分な情報を得るとともに、その内容を理解したり受け入れたりすることへの支援が 不可欠である。看護者は対象となる人々の理解度や意向を確認しながらわかりやすく説明し、意思表示をしやすい場づくりや調整、 他の保健医療福祉関係者への働きかけを行う。さらに、必要に応じて代弁者として機能するなど、これらの権利の擁護者として行動する。
自己決定においては、十分な情報に基づいて自分自身で選択する場合だけでなく、知らないでいるという選択をする場合や、 決定を他者に委ねるという選択をする場合もある。看護者は、人々のこのような意思と選択を尊重するとともに、 できるかぎり事実を知ることに向き合い、自分自身で選択することができるように励ましたり、支えたりする働きかけも行う。 個人の判断や選択が、そのとき、その人にとって最良のものとなるように支援する。

5.看護者は、守秘義務を遵守し、個人情報の保護に努めるとともに、これを他者と共有する場合は適切な判断のもとに行う。

看護者は、個別性のある適切な看護を実践するために、対象となる人々の身体面、精神面、社会面にわたる個人的な情報を得る機会が 多い。 看護者は、個人的な情報を得る際には、その情報の利用目的について説明し、職務上知り得た情報について守秘義務を遵守する。 診療録や看護記録など、個人情報の取り扱いには細心の注意を払い、情報の漏出を防止するための対策を講じる。
質の高い医療や看護を提供するために保健医療福祉関係者間において情報を共有する場合は、適切な判断に基づいて行う。 また、予め、対象となる人々に通常共有する情報の内容と必要性等を説明し、同意を得るよう努める。家族等との情報共有に際しても、 本人の承諾を得るよう最大限の努力を払う。

6.看護者は、対象となる人々への看護が阻害されているときや危険にさらされているときは、人々を保護し安全を確保する。

看護者は、常に、対象となる人々が適切な看護を受けられるよう配慮する。 しかし、保健医療福祉関係者によって、治療及び看護が阻害されているときや、不適切な判断や行為に気づいたときは、 人々を保護するために働きかけたり、あるいは他の適切な手段によって問題を解決したりするように行動する。対象となる人々の生命、 人権が脅かされると判断した場合には、害を為さないために、疑義の申し立てや実施の拒否を行う。
また、看護者の行為が対象となる人々を傷つける可能性があることも含めて、看護の状況におけるいかなる害の可能性にも注意を払い、 予防するように働きかける。

7.看護者は、自己の責任と能力を的確に認識し、実施した看護について個人としての責任をもつ。

看護者は、自己の責任と能力を常に的確に認識し、それらに応じた看護実践を行う。 看護者は、自己の実施する看護について、説明を行う責任と判断及び実施した行為とその結果についての責任を負う。
看護者の責任範囲は保健師助産師看護師法に規定されており、看護者は法的責任を超える業務については行わない。 自己の能力を超えた看護が求められる場合には、支援や指導を自ら得たり、業務の変更を求めたりして、提供する看護の質を保つ よう努める。また、他の看護者に委譲する場合は自己及び相手の能力を正しく判断する。

8.看護者は、常に、個人の責任として継続学習による能力の維持・開発に努める。

看護者には、科学や医療の進歩ならびに社会的価値の変化にともない多様化する人々の健康上のニーズに対応していくために、 高い教養とともに高度な専門的能力が要求される。このような要求に応えるべく、計画的にたゆみなく専門職業人としての研鑽に励み、 能力の維持・開発に努めることは、看護者自らの責任ならびに責務である。
日本看護協会は継続教育の基準を提示するとともに、様々な継続教育のプログラムを実施している。看護者は、自施設の現任教育の プログラムの他に、都道府県看護協会が開催する研修、専門分野の学会・研究会、及び各種研修などの継続学習の機会を積極的に活用し、 専門職業人としての自己研鑽に努める。

9.看護者は、他の看護者及び保健医療福祉関係者とともに協働して看護を提供する。

看護者は、看護及び医療の受け手である人々に対して最善を尽くすことを共通の価値として協働する。 看護者は、この共通の価値のもと、他の看護者及び保健医療福祉関係者と協力関係を維持し、相互の創意、工夫、努力によって、 より質の高い看護及び医療を提供するように努める。
また、看護者は、協働する他の看護者及び保健医療福祉関係者との間に、自立した専門職として対等な関係を構築するよう努める。 すなわち、お互いの専門性を理解し合い、各々の能力を最大限に発揮しながら、より質の高い看護及び医療の提供をめざす。

10.看護者は、より質の高い看護を行うために、看護実践、看護管理、看護教育、看護研究の望ましい基準を設定し、実施する。

自らの職務に関する行動基準を設定し、これを遵守することを通して自主規制を行うことは、専門職として必須の要件である。 看護実践の基準は、看護実践の内容や方法などを規定し、 看護管理の基準は、要求される看護実践を可能にするための組織化、資源管理、環境整備、質保証プログラム、継続教育などについて 規定する。また、看護教育の基準は、教育内容や教育環境などについて規定し、看護研究の基準は、研究の内容及びその優先性の検討、 研究方法や研究成果の提示に関する手続きなどについて規定する。
このような基準の作成は組織的に行い、個人としてあるいは組織としてその基準を満たすよう努め、評価基準としても活用する。 また、社会の変化や人々のニーズの変化に対応させて、適宜改訂する。
日本看護協会は看護業務基準や各種の指針を作成し、会員施設に配布している。これらを活かして、各施設では、施設や看護の特徴に 応じたより具体的・実践的な基準等を作成することにより、より質の高い看護を行うように努める。

11.看護者は、研究や実践を通して、専門的知識・技術の創造と開発に努め、看護学の発展に寄与する。

看護者は、常に、研究や実践等により得られた最新の知見を活用して看護を実践するとともに、 より質の高い看護が提供できるよう、新たな専門的知識・技術の開発に最善を尽くす。開発された専門的知識・技術は蓄積され、 将来の看護の発展に貢献する。すなわち、看護者は、研究や実践に基づき、看護の中核となる専門的知識・技術の創造と開発を行い 看護学の発展に寄与する責任を担っている。
また、看護者は、看護学の研究のみならず、あらゆる研究の対象となる人々の不利益を受けない権利、完全な情報公開を得る権利、 自分で判断する権利、プライバシー・匿名性・機密性を守る権利を保障するよう努める。

12.看護者は、より質の高い看護を行うために、看護者自身の心身の健康の保持増進に努める。

人々の健康を支援することを業とする看護者は、自らの心身の健やかさを基盤として看護を提供する。 看護者は、看護を提供する能力を維持し、より質の高い看護を行うために、自らの健康の保持増進に努める。
心身の健康を保持増進するために、職業生活と私生活のバランス、活動と休息のバランスを保つように努める。 特に、援助専門職が陥りやすい心身のストレス状態や燃えつきを予防・緩和するために、個人及び職場内のストレスマネジメントを うまく機能させる。 また、看護者がその職責にふさわしい処遇を得て看護を行うことができるように、労働条件や職場環境を整える。 さらに、被曝防止、感染防止、暴力からの保護など、健康的な職業生活を実現するための安全の確保や、リスクマネジメントに組織的に 取り組む。

13.看護者は、社会の人々の信頼を得るように、個人としての品行を常に高く維持する。

看護は、看護を必要とする人々からの信頼なくしては存在しない。 看護に対する信頼は、専門的な知識や技術のみならず、誠実さ、礼節、品性、清潔さ、謙虚さなどに支えられた行動によるところ が大きい。また、社会からの信頼が不可欠であり、専門領域以外の教養を深めるにとどまらず、社会的常識などをも充分に培う 必要がある。常に、看護者は、この職業の社会的使命・社会的責任を自覚し、専門職としての誇りを持ち、個人としての品行を高く 維持するように努める。

14.看護者は、人々がよりよい健康を獲得していくために、環境の問題について社会と責任を共有する。

看護者は、人々の健康を保持増進し、疾病を予防する責任を担っており、健康で文化的な生活を享受する権利を擁護することも 求められる。それゆえに、健康を促進する環境を整備し、自然環境の破壊や社会環境の悪化に関連する問題についても社会と責任を 共有し、解決に努める。
看護者は、医療廃棄物の適切な処理及び処理過程の監視などを通して、保健医療福祉活動による環境破壊を防止する責務を果たす とともに、清浄な空気と水・安全な食物の確保、騒音対策など、人々の健康を保持増進するための環境保護に積極的に取り組む。 また、地域の自然環境及び社会環境に関する問題を解決し健康増進を図るために、人々と協力し、保健医療福祉に関連する施策の 提言や政策決定に参画する。
さらに、人々の生命の安全と健康が守られ、安心して生活できるための環境づくりの基盤である平和な社会を実現し維持するために 人々とともに活動する。

15.看護者は、専門職組織を通じて、看護の質を高めるための制度の確立に参画し、よりよい社会づくりに貢献する。

看護者は、いつの時代にあっても質の高い看護を維持し発展させるよう、看護専門職の資質の向上という使命を担っている。 この使命を果たすためには、保健医療福祉及び看護にかかわる制度に関心を持ち、社会の変化と人々のニーズに対応できる制度への 変革の推進に努める。
また、看護専門職の質及び社会経済福祉条件を向上させるために、専門職能団体などの組織を通じて行動する。 看護者は、このような活動を通してよりよい社会づくりに貢献する。

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